「アニメ業界どうなってんの?」『とんかつDJアゲ太郎』監督・大地丙太郎と『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ演出・山本寛が語る“ダメなプロデューサー”が増えた理由とは
背中を見てくれたら、自分も真似してみようと思ってほしい
大地:
たぶん、スピリッツが欠けているのよ。いまの業界は。で、このスピリッツが欠けていること自体に誰も気がついていないわけだな。事故、事件が起こっているところは。で、やっぱりこう……。
山本:
落としたりとか、監督が暴露したりとか。
大地:
このスピリッツは、熱とかそういうものにもつながっていくんだけど。俺たちが、伝えていかないといけないし。ちょっとでも、いいなと思ってくれたら、背中を見てくれたら、自分もちょっと真似してみようと思ってほしいよね。そのスピリッツがない。熱量がない。それとあとね、プロフェッショナルじゃない。落とすなんて言語道断。
山本:
おお(笑)。それってアレですね? 去年の年末に流れた某アーティストさんの作品が……。
大地:
ったく、もう。ふざけんじゃねえよ、まったく!
一同:
(笑)
山本:
でも、色はついていましたよ? ご本人的にはダメだったって話でしょ?
大地:
俺ねえ。よく知らないんだ、実はアレ(笑)なんか、できませんでしたで謝るテレビがあるって言うから、なんじゃそれ? と思って。ちょっと呑んでいたのね。「ふざけんなよ、コレ」と、書いちゃおうか? って。で、書いちゃったら、バーっと、なんかRTされたんで。
山本:
大地監督、怒る! みたいな(笑)。
大地:
「お怒りだ!」なんて言われたけど、ちょっと、取り下げられなくなっちゃって(笑)。でも、やっぱりいかんよ、それは。プロじゃないと思う。
山本:
うーん。
足りないのは「現場を管理できるプロデューサー」
大地:
そのアニメーターさんの今日の記事にも書いてあって。「昔から間に合わないことがあって、総集編とかやっていた」と言うんだけど。総集編というのは、悔しいけどさ。でも、ちゃんと総集編というものを作って、それも上手く編集をして。それはそれで力を入れて。その間になんとか現場を立て直そうということでやっていたわけよね。でも、いまはそういうのじゃなくて。いい加減だもんね。その一回は……。
山本:
総集編を組むか組まないかを判断するのは、やっぱりプロデューサーなんですよ。プロデューサーが監督に相談して最終的には決めるんですけど。今、カットの流れを見ないんですよ。そもそも。
大地:
そうだ。見てないねえ。
山本:
カットの流れを管理しない。プロデューサーとか、制作デスクも見ないので、いつどのタイミングで落ちるのかわからないんですよ。昔はそれをちゃんと見張っていたじゃないですか? で、これはたぶん落ちるなとなったときに、じゃあ、総集編入れましょうか? とか、2週飛ばしましょうか? とか。
大地:
それ、何週間も、何ヶ月も前にわかるんだよね。
山本:
わかります。普通わかるんですけど……。
大地:
で、行けるか行けないか? というのを探りながらやるわけじゃない。いざ「行けなかったら、ここの時点で判断を下そうとか。そんな、急にはならないよね。
山本:
それを考える人間がいなくなっていますね(笑)。
大地:
いなくなっているね。
山本:
カットを追いかけないもん、みんな。で、監督が追っかけんのかよ、みたいな話になっていて。「いやいや」と。じゃあ俺がプロデューサーやるよ。という時代になっていますよ。だから、そういった意味でも「落ちる・落ちない」という話は、やっぱりプロデューサーに帰結するんじゃないのかな。いや、なんとなく僕はプロデューサーのせいにしたがっていますけどね。いや、本当のプロデューサーがいなければ。今一番プロデューサーが不在だと思うんですよ。
大地:
ですね。
山本:
うん。一番必要とされているのはプロデューサー。だから逆ですよ。プロデューサーは不要だとは思わないですよ。必要だから、ちゃんとした人が出てよという。
大地:
出てよというところだよね。だから、今の、スピリッツを持って、しかも能力のあるプロデューサーも沢山いるので。その人たちが、今の仕事量の中で、今度は忙しさの波というか。掛け持ちの波に飲まれてしまって、判断ができなくなるという現象も起こっているわけ。
だから、それは、いまこういう時期なので、このプロデューサーは、ここで見放しちゃいかんよということを現場でも判断して、助けていかなきゃいけない時期かもしれない。
出てこいよ、ちゃんと! プロデューサー!と言っていられれば一番いいんだけどさ。