「創作をやめないで」コミックマーケット準備会共同代表市川氏によるクリエイターへのメッセージ。C98中止の経緯とネット開催の“エアコミケ”構想について語る【全文書き起こし】
新型コロナウイルス感染症の影響によりコミックマーケット98(C98)をはじめとする同人誌即売会、各種リアルイベントが中止・延期となる中、同人文化の火を絶やさない考えのもと「がんばろう同人」プロジェクトが開始されました。
プロジェクトの一環として、今回のC98はリアルからネットに開催場所を移し各社通販サイトと協力して“エアコミケ”として実施されます。
nicocnicoでは、コミックマーケット準備会共同代表市川孝一氏に生放送内でネット超会議エアコミケ企画統括プロデューサー伴龍一郎氏がインタビューを実施。エアコミケで実施予定の企画や、コミケ中止の経緯についてお話を伺いました。
■コミケ中止の経緯について市川共同代表が語る
伴:
コミケ中止の経緯について、じっくりお聞きしたいと思います。市川さんいかがでしょうか?
市川:
皆さんも知っている通り2月上旬から、中国がひどい状況になっていることがわかったり、クルーズ船の騒動が起きたりしていましたよね。それが我々に関わってくる認識は正直言って、その時はあまりありませんでした。
しかし2月中旬から、徐々に様々なイベントが中止になっていくなかで「おや? これはいつもと違うんじゃない?」と我々も考えるようになりました。
伴:
なんとなく、不穏な空気を感じた状態ですよね。
市川:
2月の下旬頃に準備会で会議があり、そこで「もしかしたら中止ってことあるの?」という声があがってくるわけです。その時に「中止になったら何をしなきゃいけないんだろうね」という話が出てきていました。
そして2月26日に安倍首相から「2週間程度のイベント開催自粛要請」というのが出ました。これのショックは大きかったと思います。
伴:
そうですね。実際にこの後、世の中にも大きな動きがありましたよね。
市川:
2週間で終わるのかと思ったら、さらに10日間伸びる。伸ばし伸ばしになっていく様子を見て「あ、これは厳しいかな」と思いました。でも、準備会としてはやはり、「やらなければいけない、出来るんじゃないか?」という希望はまだ持っていたので、カタログの入稿なども含めて開催に向けて作業をしていました。
そして3月14日に当落発表いたしまして、3月15日に公式サイトにて「コミックマーケット98の開催見通しについて」と題して発表させて頂きました。
伴:
この時点ではまだ、「開催なのか、中止なのかどうなるかな?」みたいなニュアンスの発表でしたよね。
市川:
開催が5月ですからね。中国の様子を見ていても「2~3ヶ月で治っているかもしれない」と思ったりしていたんですよね……。「5月までにはもしかしたら収まるんじゃないか」ってことは考えてました。
伴:
そうですね。この告知内容で「中止または延期を含め」みたいに可能性を出した感じですよね。
市川:
我々としては、まだどっちに転ぶかわからなかったので、一旦このような発表をおこなったんです。
そのあと、専門家会議から出た、「多くの人が参加する場での感染対策のあり方の例」がかなりハードルが高かった。それを受けて「これを守りながら開催するのは、我々には無理だよね」と……。
全員がマスクを着用して、アルコール消毒をおこなわなければならいのですが、この頃には消毒液もマスクも手に入りづらい状態になっていました。しかも人の間隔を1mずつ開けるとなってくると……もし、一般参加者を1mずつ開けたらものすごい列になってしまいます。
コミケでは、会場外に最大で10万人くらい並ぶことになるので、その列はどこに並んでいただくことになるのか……。それはちょっと厳しいよねってなった時に、3月20日に安倍首相が「イベント主催者の判断で自粛を」って会見で言われたわけですよ。
3月20日からの三連休で準備会も他のイベントの開催状況をつぶさに見ていました。同時に、もし開催するとどのような反響があるのか、開催するとしたらどのような方法があるのかを検討もしました。その間にも同人誌即売会が次々と中止や延期になったりしていく。やはり即売会では対面で頒布することに意味があるので、みんな厳しい判断を強いられたのだと思います。
伴:
対面での頒布が即売会の醍醐味ですからね! サークルさんと会ってお話するような、同人誌を介してのコミュニケーションが大事ですから。
市川:
我々としても一気に「これ、どうなんだろうね?」って方向に話が傾いていきました。3月下旬には、並行して東京ビッグサイトと色々お話をました。まだその頃は緊急事態宣言も出ていないので、それを前提に話を詰めていきました。
伴:
これ以前にも、たぶん東京ビッグサイトさんとのやりとりって継続的にされているんですよね?
市川:
そうです。ものすごくたくさんのお話をしていて。やはり3月下旬の頃に一度しっかりとした話をしなきゃいけないよねということで、共同代表の僕と安田と数人で東京ビッグサイトへ行って、向こうも部長級の方々が出てきてくださって、色々と話をして。それで「これはもう難しいよね」というオーラが出ちゃいまして。ダメだなって話になったんですね。
そして、3月27日に「コミックマーケット98の開催中止について」の発表をさせていただきました。
そこに至るまでに水面下では、24日過ぎから色々と動いていたわけですね。そして発表に至るまでの一週間は大変に濃密でした。
忙しかったという言葉では済ませないほどでした。今も頭が痛いですし、胃が痛いです……もう大変でした。
伴:
コミケ中止が関係各所に与える影響は大きいのではないでしょうか?
市川:
色んな方々とずっと調整をしまくっています。その中でも調整しきれないこともありました。中でもカタログはもう印刷が済んで製本段階まで進んでいましたし、リストバンド型参加証も作ってしまった。
今何を作っていて、何に着手していなかったのか? 腕章は? IDカードは? 製造は止められるのか? 費用はすでに発生しているのか? 色んな事柄のすべてを確認し直してリスト化する作業です。
伴:
製造に関して、動いてしまっていたものについてはお金を払わないといけないですからね……。
市川:
どうやって進めていくか……関係する色々な会社さんにも勿論ですが、コミケスタッフにも伝えなければいけないですから。27日の発表に向けてウワーっと進めていた感じです。
この放送を聞いている皆さんにお願いがあります。皆さん、カタログを買っていただけないでしょうか? 【※】本当にこのカタログの売れ行き次第では次のコミックマーケット99も……。
※カタログ購入情報
コミケットカタログ取扱店の御案内(クリックでコミケ公式ページへ)
伴:
このままだと、開催が難しくなってしまう?
市川:
そう……ですね。もちろん準備会側も開催に向けて努力していきます。その一環として、返金の現状も含めて4月末までには色々なことを整理したうえでご報告したいと思っています。
伴:
niconicoではネット超会議が終わる4月19日までコミケ関連のことは扱い続けますよ。4月末日に間に合わない場合にはエアコミケ当日までに何かしらアナウンスを出していただけるのでしょうか?
市川:
そうですね。そのアナウンスに対しても意見をもらえたらと思っていますね。