「トランプ氏は不祥事を起こしても支持率が低下するとは限らない」ジャーナリスト・神保哲生氏がトランプ政権の持つ特異性を解説
ロシア疑惑を受けて、トランプの支持は揺らぐのか
神保:
ロシアは大統領選挙に色々な形で介入しようとしていた件で非常に重要なリークがあって、そのリークをした女性が今週逮捕されました。ロシアが本当に選挙区のコンピュータに大規模なハッキングを行っていたことを示す資料がリークされたんです。
しかし、これまでのアメリカの常識では大問題となるような、国がひっくり返るようなことが起きても、ものともせずにトランプは全然違う次元で大統領の地位に上り詰めた人間なのです。つまり例えば今回のロシアとの共謀のような、普通誰が考えてもありえないことが、本当にトランプの支持の低下に繋がるかどうかは分からないのです。
神保:
CNNやニューヨーク・タイムズなどはトランプ現象に対しては一貫して批判の立場、それはアメリカの知的階級、エリート階級の一般的な立場なのですが、その支配が揺らいでいるというのがトランプ現象の一番重要な部分です。むしろ高学歴ではないマジョリティ(多数派)の白人がエリートの支配に対して反逆しているというのが本質なので、その層がこの問題をどう受け止めるかはまだ分からない。今までの常識では成り立たない論理が成り立つ可能性も残っている。
トランプ大統領の支持者はロシア疑惑を陰謀論として捉えている?
神保:
もともと(コミー氏がトランプ大統領に)言われていた「あなたに忠誠心を求めます」(というトランプ大統領の発言)も含めて、トランプ大統領がFBIの長官に捜査を辞めてほしい、あるいは辞めるように要請していたということが、宣誓の下で前FBI長官の証言として出たというところがニュースとしては大きいのだろうと思います。 もし彼が嘘で言っているのなら偽証罪ということになりますから、「トランプ政権に大きな打撃」みたいな見出しになるのかな、とは思います。
でもトランプのコアサポーターは、これは安倍政権のコアサポータとも似てるかもしれないんですけど、この話を陰謀論のような文脈で捉えているところがあるんです。
神保:
このニュースをCNNやニューヨーク・タイムズで見ていると「もうトランプ終わりだな」と思うかもしれないんですけど、アメリカの新しいトランプ支持の媒体を見ていると、全然違う文脈で報じられているんです。現時点では犯罪を構成する要素は出て来てないんですよ。だからこそ調査するべきなのですが、例えば調査のプロセスを信じていない人達は「調査をすれば嘘の結果が出てきて、また嵌められる」と思っている。
この先どうなっていくかは、常識的な見通しを持つと同時に、アメリカだけでなく日本やイギリスも含めて、色々な国の民主主義が変な穴に落っこちたような現実を見極める必要があるのかなと思います。
神保:
既存のメディアは「このまま弾劾に行くんじゃないか」という言い方をしますけど、思った通りにならないのがこのトランプ政権、トランプ時代の1つの特徴のような気がします。僕はトランプさんが弾劾の前に辞めてしまう可能性も十分にあると思います。早い話がこのトランプ政権はどうなるか全く分からないんです。トランプさんが2015年大統領選挙予備選に出馬してから、政治はずっと混乱の極みなんですね。