日本のゲーム原作映画がなかなかヒットしない理由「『バイオハザード』と『サイレントヒル』だけは健闘しているが……」
7月11日に放送された『WOWOWぷらすと』では、7月23日に『逆転裁判』など、パソコンやゲーム機などの人気作を映画化した作品が放送されることに合わせ、ゲームと映画の相互関係というテーマを取り上げました。
ゲストでライターの堺三保さん、アニメ評論家の藤津亮太さんが、MCを務める映画解説者の中井圭さん、タレントの梨衣名さんに、ゲームの映画化の難しさや、将来の展望を語ります。
近年ゲーム界で注目されるVRやAR技術も話題に登場しますが、果たしてこれらの技術は不評続きのゲーム原作映画の未来を切り開くのでしょうか。
日本原作の実写化映画がしょぼい理由
堺:
映画史的には、ゲーム原作の映画が出来る前に、「ゲームを扱った映画」というものが80年代に生まれるんです。82年の『トロン』があり、83年の『ウォーゲーム』、84年の『スターファイター』。これらの映画は、実際にはゲームはないんだけど、世間でコンピューターゲームが有名になってきて、「そういうのが出来るんじゃないか」というところから映画が作られた。
番組スタッフ:
アプローチとしては、今と変わらないということですね。
堺:
ゲーム原作映画としては90年代頭に連続して『スーパーマリオ』、『ストリートファイター』、『モータルコンバット』があります。
藤津:
大事なのは、ゲームと映画の力のバランスというか、ユーザー数ですよね。要は、「ゲームと違うじゃないか」と文句を言う人が、どこで分母を越えるかですよ。
堺:
ゲーム原作は、常にそこが難しいんですよね。
藤津:
ある時から、映画を見ている人より、ゲームユーザーの方が増えたんです。そうすると、「これ、ちゃうやん!」って言う人の方が増えたんです。
中井:
日本国内において、映画ファンとゲームユーザーだと、どちらの方が多いんですか。
藤津:
ゲームユーザーの方が多いですよ。
中井:
なるほど。パワーバランス的に映画ファンの方が多ければ、そこは問題がなかったんだけど、ゲームユーザーの母数が増えちゃった結果、「なんでこんな映画になってるんだ」っていうツッコミが入ってくるんですね。
堺:
ゲームの母体になるゲーム機を作るメーカーは、相変わらず任天堂、ソニーなど、基本的には日本が強い。やっぱり、ゲーム原作映画は日本の物が圧倒的に多いんです。そうすると、『ドラゴンボール EVOLUTION』どころの話じゃない難しい問題がいろいろあります(笑)。
まず、予算の問題がありますね。日本に原作者がいて、制作も日本主導のところが多かったりするので、実はハリウッドメディアといわれている会社が、完全にお金を出して作っている作品はないんです。そうすると、予算も低~中予算になるので、派手な映画にならないし。酷い言い方をすると、しょぼい。
中井:
確かに日本のゲーム原作で映画化されている作品って、そんなに派手じゃないし、微妙にポシャるみたいな。
堺:
それがここ5、6年、海外での状況が変わりつつある。なぜかと言うと、日本はアプリゲームとか、可愛い女の子のゲームが流行っている。その間にアメリカや欧米では、アクションRPGが進化して、それが大ブームになっているんです。
それを元にして、メジャースタジオが映画を作ろうとしている。その試金石になるはずだったのが『アサシン クリード』だった。日本ではそこそこくらいだと思ったんだけど……。
藤津:
僕、あの映画の予告を見たんですけど、「これは落とし穴に入っちゃったな」っていうのが、予告を見ただけでね……。
堺:
ぶっちゃけた話をすると、なかなか大きくは当たらなかった。でも、あれで当たっていたら状況は変わっていたと思うよ。あとはずっと映画化の話が出たり消えたりしている『HALO』とか。そういうゲームが山ほどあって、メジャー会社は映画化を虎視眈々と狙っています。
藤津:
『HALO』は日本ではアニメ化した短編集がありますよね。
堺:
あれは良く出来ていて、これがなかなかアメリカでも受けているらしいですね。
不評作が続く中、なぜバイオハザードは健闘できたのか
堺:
有名なゲーム原作の映画化の結果というのは、見るに堪えないものです。例えば『モータルコンバット』、99年の『ウィングコマンダー』、05年の『DOOM』、07年『ヒットマン』、16年『アサシン クリード』。大ヒットした映画が1本もない中で、『バイオハザード』、『サイレントヒル』だけが健闘しているんです。
堺:
そもそも小説や漫画の映画化よりも、ゲームの映画化は期待されている部分が全然違うから、かなり難しい。ゲームの何が楽しいかって、自分が主人公になれるから楽しい。それを映画やアニメにする場合、そこをどう処理するかを決めないといけない。
すると、プレイヤーキャラクターはどう置くのかという問題が出てくる。アイドルマスターに例えると、プロデューサー。でもプロデューサーは主人公じゃないですよね。そうなると、映像化する時は、そのキャラを一旦後ろに下げなきゃいけない。それをプレイしているファンが肯定できるかどうかですよね。
番組スタッフ:
実写化ってかなり難しいんですね。
藤津:
このようなプレイヤーキャラクター問題は一貫してありますね。
堺:
『バイオハザード』は1作目から、そういうのをやめたんです。ゲームに出てこない『アリス』っていうキャラクターを置いて、「はい、この人がヒロインです」って決めた。
番組スタッフ:
それは賢いやり方。
堺:
そして皆がそれを受け入れたから続編が作れた。
藤津:
やっぱり『アリス』っていうキャラクターを作れたのは、ある意味発明ですよね。そこでちゃんとゲームとの線引きができたんですよね。
番組スタッフ:
コンバートがうまくいったということですね。