「VALUの主張より日本の憲法が優先される」『VALU』リードエンジニア・小飼弾氏にシステムについて色々聞いてみた
VALUは『24時間勤務』!?
山路:
弾さん、肩書きはリードエンジニアということになってます。
小飼:
リードエンジニアですけれども、どんなエンジニアリングもVALUのバリューを高めるためにしていいし、してくださいということになってます。この番組の出演も実はその一環とみなすこともできます。
山路:
それは、またフリーな会社ですね。
小飼:
ものすごくフリーなんですよね、その意味では。
山路:
「24時間勤務」。確かに24時間考えなければいけないっていうことでもあると。
小飼:
24時間勤務なんですけども、拘束時間はゼロアワーでもあるんですよね。
山路:
しかも自分がやった仕事というのは、自分でこんなことをやりましたということを自分で決めなきゃいけないわけだから、よほど大変なわけですね。
小飼:
何を公開して何を秘匿してと、そういったことというのも、本当に全面的に信頼と信任を受けています。ちょっと怖いぐらいです、僕も。だからむしろそうなったほうが、ここまでやってしまうとまずいんじゃないのとかいうふうにお互いに、そのほうが聞くようになるんですよ。「こうしました」と言うときに単にこうしましただけではなくて、わからないときには、ちゃんとわかんないよと聞くようになるんですよ。なんで「こうしました」と言うときにちゃんと簡潔にロジカルに理由を説明するようになるんです。業務連絡というのはslackという業務用のSNSがあるんですけども。
山路:
チャットみたいなものですよね。
小飼:
はい。あれで、ほとんどのやり取りが済んでます。
山路:
それって今仕事とかが、すごく溜まってる普通のサラリーマンの方とか会社に務めてる方からしたら、かなり理想的な職場環境のような気もしますよね? 話を聞くと。
小飼:
なんですけど、裏を返すとなんかまずいことしそうな時に、こらー! て言ってくれる上司はどこにもいないんですよ。
山路:
何か、しくじったりしたら「VALUの小飼弾がしくじりました」みたいなことがバーンと。
小飼:
まあ、そういうことですね。
山路:
これは、怖いっちゃ怖いですね。しかし、弾さん、山田真哉さんと話したときなんかどっちかというと批判的、興味はあるけどというスタンスだったじゃないですか?
小飼:
ですから現行のいろいろな、ここでは敢えて一般論として、証券という言葉を使っておきましょう。をやり取りするサービスというのは法で守られてるとも言えますし、法に縛られているとも言えますよね? だから、なにかまずいことしたら必ず一段偉い人がいて、こら! て、言ってくれるシステムなんです。そうでないと悪いことしちゃうんでしょうがね。人は。
山路:
東芝みたいな話はありますけど。
小飼:
逆に、そういった、ここでは権威という言い方をしますが、権威というのは、こら! と言える人ですね。という担保がなくても結構、人は人にいろいろなことをしたがるものなんですよ。そういったことがなくても、人は人の評価を下げるものなんですよね。だから別に教師に怒られなくても、もし、そいつが悪いことをしてるというのがわかってれば自然と遠ざかるんですよね。そういった、なるべく権威に頼らないで価値を交換し価値を担保するシステムというのが、できたらうれしいなっていうのは、ずっと考えていたの。どれぐらいずっと考えてたかっていうと。山路さんと僕は昔、ここにもありますけど弾言という本を書きました。もうそのころから書いてたんですよ。
山路:
だけど、これって結構、本来的なインターネットの価値観に割と近いものもあるような気もしますよね。中央集権的に決められるんじゃなくて、それぞれが仕様を決めていくみたいなあり方っていうのは。
小飼:
だから、クソなら遠ざかる、それだけというね。
山路:
クソにしないように参加者は頑張る、それがインセンティブにもなるし。
GM(ゲームマスター)の下で行われる各個人のボランタリーが『VALU』である
山路:
そもそもVALUは、個人を上場するとはいうけれども、何に使っていいのかよくわからないという、どういう人が何に使っていいかわからないというそもそもの疑問を。
小飼:
はい。だから、なるべく法に触れない限りで、これ重要なことです。大事なことなので、もう一度繰り返します。法に触れない範囲でなるべくクリエイティブに使って欲しい。僕がこれVALUイケるんじゃね? と思ったのが、もうひとつのところがそこなんですよ。VALUを使って何をしようというので、ホントに百花繚乱なんですよね。
まだ1万人ちょっと超えた程度しかいないのに、これだけいろんな種類の価値交換というのがあるのかと、だから我々の想像を超えるくらいの勢いでやって行きたいんですよね。そこで当然いろんな軋轢は起こると思います。実際に起きてます。
それは本当にその場その場で、解決しては自動化できる部分は自動化しという部分で進めて行きたいと思います。
これすごい適当な例えかどうかわからないですし、例えが通じる人は、『ハンター×ハンター』の読者に限定されちゃうんですけども、『ハンター×ハンター』をお読みの方であれば、今のVALUというのはグリードアイランドみたいなものではないかと。
山路:
グリードアイランド? グリードアイランド編はどんな話でしたっけ? 読んだんですけど(笑)
小飼:
はい。その中の僕らの立場というのはGMです。ゲームマスターです。だから、なるべくゲームには介入しません。ですがこれをやられるとゲームそのものが終わっちゃう、壊れちゃうという時には、バッチリ介入します。
今のところは、まだそういった介入というのが必要な場面も出てくるかもしれないです。それに介入するという権利もありますし、やると判断したときには、即やるよというの言っていきます。ただしなるべくやらないというのも申し上げておきます。
なるべく中の人の取引の在り様そのものが、みんながやりたいようにやっていると、それが良い方向に向かっていくという風にしたいわけです。だから法律で頭ごなしに、これはダメ、あれはダメというのではなくて。
山路:
メルカリなんかでは、現金を売るみたいな荒業も出てきたりしましたよね。
小飼:
あれはあれで、本当にクリエイティブで、端から見ていて面白いですし、運営の人には同情もするのですけれども。
山路:
同じような人もやってくるかもしれないですよね。似たような……。
小飼:
ですが、今のところは、しつこく繰り返しますけども、いくら誰かのVAを持っていても、俺はお前のVAをこんなに持っているんだから、これだけのことはして当然だろう! ということは、一切言えないです。お願いしかできないんですよ。
山路:
じゃあ、もう本当に個人の魅力というか、期待させる演出だったり。
小飼:
そうなんです。あくまでもボランタリーで、持ってるVALUというのはそれ自体では生産を強制することはできない。こういう言い方をすればいいのかな?
山路:
生産というのは、プロダクションの?
小飼:
要するに何かをするという確約をして、何かをしたということで取引が完了したという。あくまでも、VAが減ってVAが増えるという、VALUでできるのはそれと、もしあなたが私のVAを持っていたら、こういうことをするつもりです。実際にそれをするかしないか、したものが本当にお値段通りだったのか、お値段以上だったのかっていうのは、そのVAを持っている人が決めることです。
山路:
その人のVAを買った人が、ああ。
小飼:
今のところは、法的な縛りから来たものでもあるんですけど、本当にこれ一番大事なことなので繰り返しますけれども、なるべく権威に寄りたくない。いちいちユーザーが喧嘩してったところにGMが飛んで行ってというのは、こういうのは避けたいわけです。
山路:
なるほどね。ちなみに、活動みたいなものを報告しなければいけない義務というのもないんですね?
小飼:
ないです。あくまでも努力目標です。