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結局、ビットコインって大丈夫なの? 基本的な仕組みから分裂報道まで、ブロックチェーン専門家と公認会計士に聞いたみた

マイニングすることでブロックチェーンの安全性は担保される

森川:
 ブロックチェーンというのは誰か一人が持っているのではなくて、世界中の人がブロックチェーンを共有した上でビットコインを持っている状況なんですね。そして、このブロックチェーンの情報を更新・記録する、言うなれば技術の安全性を担保するための行為をマイニング(発掘)と呼び、それを行う人たちをマイナーと呼称しています。ノードとも呼びますがマイナーの方が分かりやすいでしょう。

山田:
 マイニング?

森川:
 ブロックチェーンの更新・記録をする際に「マイニング」と呼ばれる処理を行うのですが、これによって膨大な数学的計算を繰り返すことで導かれるナンス値が弾き出されます。これを見つけるためには、大きな(コンピューター)ハードウェアと電気代が必要となるため、ナンス値を見つけた人(マイナー)へ成功報酬が与えられる仕組みになっています。ビットコインの場合で言えば、マイナーに新たなビットコインが与えられる(現在は12.5ビットコインが与えられる)仕組みになっています。その様子がまるで金を発掘するように難しいことから、「マイニング」と呼ばれているわけです。

山田:
 やっぱりゴールドなんですね~。

森川:
 マイナーたちはビットコインネットワークを同期しているので、一つが遮断しても他のマイナーによって新たなブロックが作られるようになっています。報酬は早い者勝ちなので、大きな(コンピューター)ハードウェアと電気代がかけられる人たちが有利と言われています。複数者によって管理されているため、中央銀行のような主体を持たずに通貨としての価値を誇ることが可能になっているというわけです。

山田:
 ブロックチェーンという技術と安全性の信頼を担保するために、マイナーの技術力が必要になる、と。中央政府や中央銀行が存在しなくても、通貨としての信頼を確立させる方法があるんですね。しかも、その報酬として新たなビットコインをゲットさせるシステムになっているとは。

森川:
 ですが、その発掘量は無限にあるわけではありません。未だ正体不明のビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトによれば、ビットコインの発行量は上限が約2100万枚と記されています。現在のマイニングのペースで行けば、2140年に掘りつくされると計算されていて、発掘量が増えれば、当然ビットコインの価格も下がっていくと考えられています。それでも必要になったら刷ることができる法定通貨と比べれば、ビットコインの希少性は高いということです。

山田:
 たしかに、日本がミサイルを受ければ法定通貨の価値がどうなるか分からないし、発行・管理主体が機能を失えば、僕らの貨幣は急激に価値がなくなるかもしれない。その点、ビットコインは主体がないゆえに、ネットワークを持つすべてのマイナーを攻撃でもしない限り、その価値が揺らぐ可能性は低い……。そういった点も仮想通貨が支持されている一つの理由なんだろうなぁ。

森川:
 マイニングによってブロックチェーンの安全性が担保されているため、(マイニングをしない)ビットコインを保有しているだけの人であっても、所有しているビットコインの情報は常に彼らによって新しく刷新されています。ブロックチェーンの構造をもう少し説明しておきますと……。

森川:
 マイナーはこのような膨大な数学的計算を行って、次のブロックを作り出していきます。先述した膨大な数学的計算によって導き出したナンス値などの情報を、さらに数字列からなるハッシュ関数にかけて、新たなハッシュ値が作り出します。この新しいハッシュ値が次のブロックの情報として記録されることで、安全性が確立されるわけです。

山田:
 それって改ざんすることができないほどの数値なんですか?

森川:
 できないと言っていいレベルですね。例えばですが、このブロックの中にリンゴやミカン、メロン、パイナップルなどの果物があったとして、それをミキサー(ハッシュ関数)にかけるとします。すると、数種類の果物や野菜が混じったミックスジュースが出来上がりますよね。このジュースが新たに作られたハッシュ値だと思ってください。

山田:
 ふむふむ。

森川:
 リンゴやミカン、メロン、パイナップルをミキサーにかけると、人間の味覚としてそれぞれの味を感じることはできるけど、正確なリンゴ、ミカン、メロン、パイナップルのミックスされた割合までは分からないですよね? 飲んでみて、リンゴ35%、ミカン25%、メロン18%、パイナップル22%というように判別することは無理難題でしょう。あくまで例え話ですが、その割合を生み出しているミキサーとしてのハッシュ関数を割り出すことは極めて困難で、それゆえ新しいハッシュ値から前のハッシュ値にさかのぼることはできない(一方向性関数)。つまり、「同じハッシュ値のブロックが生まれることがない」ということを技術的に約束することにつながっているわけです。

ビットコイン分裂騒動はどうして起こったのか?

山田:
 なんとなくビットコインのことを理解していただけたと思うので、ここからは「ではなぜそんなビットコインが分裂の危機に面したのか?」についてお話していければと思うのですが、改めて説明お願いできますでしょうか?

森川:
 先ほどちらっとお話に出てきましたが、1ブロックが1MBしかないということが論点になりました。ブロック自体を大きくしようという人たちと、小さいままで取引の情報を圧縮しようという人たちに分かれたわけです。

山田:
 どっちでもいいような感じがするんですけど……(笑)。

森川:
 マイナーたちにとってはそういうわけにもいかないんです(笑)。みながネットワーク上で同期していると先ほど説明しましたが、ブロックチェーンの情報を更新している彼らからすると、刷新する、変更するということは、すべてその新システムに移行しなければいけなくなるということです。

山田:
 Windows7のままでいいという派閥とWindows10に変えたい派閥みたいな感じですかね?

森川:
 同じソフトウェアならまだしも、今回はWindowsからMacに変えようみたいな話ですね(笑)。

山田:
 それは面倒臭い!(笑)

森川:
 ブロックチェーンのシステムを変えるためには、多数決で勝たなければいけません。と言っても、95%の支持を得なければならないような多数決です。なぜ過半数ではダメなのかというと、ハッキングなどで数字が改ざんされる可能性があるため、95%という圧倒的な数字によって決められることになっています。

山田:
 95%の同意を得るって結構な話ですよね?

森川:
 ですね。ただ、そのマイナーの多くが中国企業なんですよね。「大きな(コンピューター)ハードウェアと電気代がかけられる人たち」となると中国が有利になってくるわけです……現状、ビットコイン所有者の7割が中国人と言われているほどで、中国にはマイニングセンターのような存在がたくさんあるほどです。

山田:
 ひぇぇ~。中国人、恐るべしですね(笑)。取引停止の噂もあったビットコインですが、先日、分裂騒動は収まったわけですが、結局、どちらの言い分が勝ったんですか?

森川:
 勝ったのは、小さいままで取引の情報を圧縮しようという人たち。ブロックの大きさを変えようという人たちと、(勝利した)大きさは変えないままやろうという人たちがいたわけですが、ブロックを大きくすると情報量が膨大になりすぎることとセキュリティが脆弱になるのではないかということが懸念され、見送られました。ソフトフォークと呼ばれているのですが、結果として既存のシステムから大きく逸脱しないシステムが踏襲されることが決まったので、システム上ではさほど影響がないということで取引は続行になった次第です。

山田:
 ハードフォークと言われている人たちは、大きな変更を求めていた人たちですよね?

森川:
 そうです。そうなると既存のシステムの延長線上にないため、いったん取引を停止するほうがいいだろうということで、「取引中止」というニュースが報道されていたわけです。ただ、8月1日に先に話したような大きな変更ではないのですが、小さめのハードフォークが行われることが決まっています。

山田:
 え!? そうなんですか?

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