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Vtuber・歌衣メイカがカラオケで歌っていたボカロ曲。「ナンセンス文学」「エンヴィキャットウォーク」など“漢”の熱い思いの原点を語る

 今や日本の音楽シーンでも、人気ジャンルとして一大勢力を築くVOCALOID。今では幅広い分野やジャンルで活躍する著名人の中にも、ボカロ曲リスナーを公言する人々も大勢存在する。
 ボーカロイド好きの著名人にマイベスト楽曲プレイリストを制作してもらい、それについてインタビューにて語ってもらう本企画。今回は長年個人勢Vtuberとして活動を続け、今もなおシーンの第一線で活躍する歌衣メイカさんが登場。
厳選したお気に入りのボカロ曲10曲を軸に、これまでの自身とボカロとの歩みやジャンルの魅力、そこからVtuber・歌衣メイカとしての活動の原動力についてなど。様々なここだけの話を、深掘りエピソードとして語ってもらった。


歌い手によって色が変わる、それもボカロ曲の魅力

──まず、メイカさんとVOCALOIDとの出会いを教えてください。

歌衣メイカ:
 最初の出会いは、YouTubeで見つけた初音ミクカバーの「魂のルフラン」でした。当時の僕はマセたガキというか、「誰も俺の心の痛みなんかわかってくれない」みたいな尖ってた時期で。楽曲を聴いた時「なんて綺麗な声なんだ」って涙が出てきたんですね。…だいぶ自分に酔ってたんですけど(笑)。そこからVOCALOIDとはなんぞや、と気になって調べたのが始まりです。当然調べるうちに自然とニコニコ動画に行き着いて、そこでオリジナル曲を作る人たちのことを知ったり、僕好みの曲も見つけるようになって。このプロデューサーさんいいな、とかって思ってるうちにどっぷり沼に浸かった感じでした。

──最初はボカロの声に違和感を持つ人も多いですが、そこはあまり気にならなかったんですか。

歌衣メイカ:
 僕は全然気にならなかったです。一発目からすっと入ってきたというか。ただボカロを好きになるにつれて、今度は歌い手さんを好きになっていったんですよ。「初音ミクで曲作りたい!」というよりは「俺も歌いたい!」って思って。特に男性歌い手さんが好きで、歌ってみたで曲を知って、その原曲を聴きにいく…という流れを繰り返していました。

──個人的にはクリエイティブなイメージがメイカさんにはあったので、作曲方面に興味が向かなかった点は少し意外です。

歌衣メイカ:
 ボカロを知った当時はまだなにも作ってなかったんですよ。ゲームするぐらいで。でも初音ミクは好きだったから、その辺から絵の模写とかはしてました。「作曲はオリジナリティが必要だけど、真似て描くだけならできるかも」っつって、鉛筆持ってノートに描き始めて。その初音ミクを友達に褒めてもらったりするうちに絵を描くのが楽しくなって、絵の仕事したいなーとかも思い始めて。最終的に運よくゲーム制作会社に勤められた…んですけどイラストは1枚も描けなかったですね、残念ながら(笑)

──なるほど。メイカさんの創作の源泉のひとつがVOCALOIDだった、というわけですね。具体的にお好きな曲やボカロPさんなどの傾向はありますか?

歌衣メイカ:
 ギターが印象的な激しいものとか、歌ってて声が張れる曲が好きですね。僕の好きな曲というか、僕が歌ってて楽しい曲というか。なので今回のリストも、僕の声域に合う曲が多いかな。ボカロPさんだとトーマさん、Neruさんなんかの曲はどれも好きで聴いてました。あとはピノキオピーさん。歌詞の響きに中毒性がある曲が多いですよね、「腐れ外道とチョコレゐト」の“らりぱっぱら ぱっぱっぱら”とか。個人的には歌詞の内容より、音感の良いものやフレーズの響きとか、歌った時気持ちいいかどうかが好きになるポイントかもしれません。

──歌い手さんに関してはどんな方の動画を見られていたんでしょう。

歌衣メイカ:
 りぶさんや灯油さん、un:cさんやGeroさんみたいな、高音の歌声がカッコイイ男性歌い手さんが特に好きでした。今回のリストもその方々がカバーしてた曲がわりと多いんですけど。

──楽曲も歌い手さんも “熱い”方々ばかりですね。なんだかメイカさんらしさを感じます。

歌衣メイカ:
 僕、ガキの頃からカラオケが好きだったんですが、歌手の歌い方を真似してよく歌ってたんです。歌い方も含めその曲が好きだから。僕的なボカロの好きな所って、原曲に機械の声ならではの余白があるというか、そのおかげで同じ曲でも歌う人によってちょっとずつ違った個性が出る部分だと思ってて。回答がたくさんある、的な。なので僕の好きなボカロ曲は歌い手さんの歌い方含めて好きな曲も多いし、僕自身の歌い方にもそういった方々をリスペクトしてる部分が滲み出てるのかなと思います(笑)。

ボカロ曲を歌う上で“初めて”を体験した曲たち

──お話を聞いていると、メイカさんにとってボカロ曲は“歌うもの”という印象を強く受けます。今回のリストも実際にカラオケでよく歌っていた曲だそうですが、この中でナンバーワンを決めるとしたらどの曲になりますか。

歌衣メイカ:
 うわ!エゲつない質問しますねえ(笑)理由が一応あるとするならば…「ナンセンス文学」かな。僕の活動で一番最初に歌ってみた動画をあげた曲でもあります。今回選んだ曲って、大体が僕の中で「この曲ならこの歌い手さん」っていう正解みたいなものがあって、自分が歌ってもその人の歌い方に引っ張られちゃうんスよね。ただこの「ナンセンス文学」を知った時期は多忙で歌ってみた動画を追えてなくて、唯一初音ミクの本家がストレートにブッ刺さったというか。聴いていてサビのメロにまず惹かれて、実際歌った時も音階の階段みたいな部分とか、すごく気持ちよく歌えて満足感があって。自分一人でかなり歌い込んだ曲だったので、歌ってみたをあげるなら絶対最初に歌う曲にしよう、とも思っていたんです。そういった意味では好きになり方が他の曲とも違うし、僕にとっては思い入れの深い曲ですね。

──少し意外なナンバーワンでしたが、お話を聞くと納得です。

歌衣メイカ:
 さっき話したトーマさんの「エンヴィキャットウォーク」やNeruさんの「東京テディベア」ももちろん好きですが、他とは違う曲ならこれかな。あとそれで言えばKEIさんの「Hello, Worker」も、1個だけ他とは違ったベクトルで選んだ曲です。

──なるほど。詳しく聞かせてもらえますか。

歌衣メイカ:
 僕がこの曲に出会ったのが、ちょうど就活で摩耗してる頃で。就職が決まらず卒業の時期を迎えたんですけど、この曲を聴いた時しんどかったこともあってぼろぼろ涙が出てきちゃって。歌詞の中に共感できるフレーズがたくさんあって、俺の気持ちを言語化してくれた曲だと感じたんですけど、そういう経験は初めてでした。

──先ほども、歌詞は意味より響きを重視すると仰っていましたもんね。

歌衣メイカ:
 本来音楽を好きな人って、こういう心情的な表現を「わかるわかる」って思いながら聴く人が多いんでしょうけど、自分は今までそういう楽しみ方をしてこなかったので。歌詞を音としてこれまで捉えてた中で、その内容とちゃんと向き合う経験をした初めての曲でした。そういう意味では、今までボカロを聴いたことがない人にもおすすめできる1曲ではありますね。大人が共感できるフレーズもたくさんあるじゃないかな、と思います。

好きな曲の一部になりたい、憧れの存在になりたい、という思い

──今までも何度かこのシリーズインタビューを担当しましたが、ここまでボカロ曲を“歌う事”にフォーカスしたのは初めてかもしれません。ボカロは元々人が歌うには難しい曲も多いので、「聴くのが好きな曲と歌うのが好きな曲は別」という方も多いと思うのですが。

歌衣メイカ:
 すごい極論ではあるんですけど、僕が歌えない曲はあんまり興味ないんですよ、僕の場合は。曲を好きになる基準として、自分が歌えるかどうかっていうのが根元におっきくありますね。僕は歌う事でその曲の一部になりたいというか、歌って「あぁー気持ちいい!」みたいなのを感じたい。野球見るよりする方が好き、みたいな感じです。

──昔からカラオケがお好きという話があったんですが、ボカロ以外の音楽に関してもそれは同じですか?

歌衣メイカ:
 そうですね。J-POPとかに関しても、やっぱりそのアーティストの歌い方が本物の歌い方だと思ってるから。歌い方も含めて真似して、「その人っぽく歌えたなー楽しー」みたいな。歌い方で自分を出そうとはしてなかった。でもその中でボカロや歌ってみたで、歌手じゃなくても歌っていいんだ、カラオケ以外でも自分の歌を聞いてもらえる場があるんだ、って知って。じゃあどこかで俺の歌も聞いて欲しいな、っていう思いがずっと燻ってた時にVtuberっていうものが流行り始めて、「さすがにそろそろ挑戦するか」ってなったのが歌ってみたを始めたきっかけでした。

──Vtuberの中でもメイカさんはかなり個性が強い方のイメージですが、そんなメイカさんのルーツが“誰かの真似”という点は大変興味深いです。

歌衣メイカ:
 言われてみれば僕、今もマンガやアニメの好きなキャラがいっぱいいるんですけど、そのキャラたちに恥じない活動をしたいと思ってて。それと近いかもしれないですね。俺、“漢”でありたいと思ったきっかけが「天元突破グレンラガン」のカミナなんです。脆い一面がありながらも自分の信念を貫いてる所にすごく憧れていて。歌だけじゃなくいろんなところでカミナの兄貴みたいになりたい、漢らしく生きたいっていう気持ちが常にあるんですよ。

──先ほど話題にあった歌い手さん含め、いろんな憧れの人の要素が集まって、今のメイカさんを形作っているんですね。

歌衣メイカ:
 女性にもそういう方って結構多いですよね。「推しの女として恥じない人でありたい」とか、ライブの時に気合い入れてオシャレして「推しのファンに可愛い人が多いと思われたい」とか。自分じゃなくて推しのために綺麗になりたいっていう気持ちというか、ああいうのすごい尊敬しますね。

──ふふふ。そんなメイカさんに恥じない存在でありたいと思っているファンの方も、きっと大勢いるんじゃないかと思います。最後に、メイカさんにとってVOCALOIDの魅力とはなんでしょう。

歌衣メイカ:
 素人が作る良さ、かな。Vtuberも近い所があるんですけど、僕にとってのVOCALOIDってすごく自由な場所で、いろんな人の「俺はこれが好きなんだ!」が溢れた世界だと思ってて。それを聴いて「あー○○好きなんだ、わかるわかる!」って共感したり、そこからさらに歌ってみたで「その解釈面白いやん!」って思ったり。いろんな形でいろんな人の“好き“を耳で浴びられる場所なので、普段歌ってみただけを主に聴いてる人もぜひ、この機会に本家ボカロ曲も聴いて欲しいです。ハマったらまたひとつ幸せになれますよ(笑)


Information

「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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