「北朝鮮が日本に核を使う余裕はない」核ミサイルを怖れる日本人が把握しておくべき北の情勢
日本にミサイルを撃つ余裕はない? “虎の子”核兵器の本当のターゲット
山路:
北朝鮮の核に絡んで、最近もうひとつよく聞くようになったキーワードに「電磁パルス攻撃(EMP)【※】」というのがあります。
・電磁パルス攻撃(EMP)
高層大気圏における核爆発で発生する強力な電磁パルスを用いた、広範囲での電力インフラストラクチャーや通信、情報機器の機能停止を狙う攻撃手段である。
小飼:
あれですね、ちょっと針小棒大(物事をおおげさに言うこと)というよりも、核兵器というのは貴重な兵器なんですよ。虎の子なんですよ。
山路:
はい。
小飼:
だから、何発も連打できるものではないんですよ。そういうことができるのは、本当にロシアとアメリカだけなんですね。それだけの核をもっているというのは。
山路:
広い範囲のコンピューターネットワークや送電網とかがダウンしたら、一発でもかなり効果的なんじゃないですか?
小飼:
それを言うと、例えば、ソーラーフェアでも同じような現象が起きます。
山路:
太陽風【※】ね。
・太陽風
太陽から吹き出す高温で電離した粒子(プラズマ)のこと。これにより1989年3月、カナダで大規模な停電被害が発生した。
小飼:
はい。太陽風の方が威力としては全然大きいですから。
山路:
EMPに比べて?
小飼:
カナダの送電線とかが、それでやられたりしたじゃないですか? カナダがおじゃんになりました。
山路:
ああ。
小飼:
だからその意味で言えば、あまり効率的でないんですよ。貴重な核兵器は大事に使わなければいけない。
山路:
そうか。
小飼:
だから、大事に使うに当たって、EMPみたいに高度がきちっと測定しにくいものに使うでしょうかね?
山路:
そうか。
小飼:
だから一番の急所を狙うでしょう。まず、米国のセキュリティを狙わなきゃいけないのに、日本に核兵器をまわしている余裕があるのかという、そんな話。
山路:
しかも、まだ効果が完全に実証されておらず、どれくらいの効果になるかもわからないEMPに果たしてリソースを費やすだろうか、みたいな。
小飼:
そういうことですね。ただ、これはあくまでもやっている人が、合理的に振る舞って、合理的に考えて、合理的に作戦をたてて、合理的にそれを実行して、初めてそうなるものであって。
山路:
ちゃんとゲーム理論にのっとったというか。
小飼:
はい。その意味では、金正恩よりも、トランプさんの方が、何をするのかわからないという点ではよっぽど怖いですよ。
でも、その前に貴重な核兵器を日本に対して使うメリットというのが、どれだけあるのか?
小飼:
すごく変な言い方ですが、はっきりいって北朝鮮は悪政を敷いています。
本来であれば、国民を豊かにするためのリソースを核兵器一本につぎ込んでますが、その点だけ見れば、とても合理的に振る舞っていますよね。
山路:
目的への最短距離というか。
小飼:
そういった意味での合理性というのは、期待できるんじゃないかと。
山路:
なるほど。
小飼:
今、核兵器しかないんですよ。
山路:
そうか、もう打つ手が限られているから、逆にその合理的に打ってくるというのは、ある程度見当がつくんじゃないかという期待もできるということかな。
小飼:
そういうことですね。上手くごねては、上手く譲歩を引き出すというのが、もう北朝鮮のドクトリン【※】になったわけです。
※ドクトリン
政治、外交、軍事などにおける基本原則。元々の意味は「教理」、「教え」、原義は「前提とするもの」。
山路:
なるほど。あと、ちょっとコメントでも出ていたんですけれども、「ミサイルを今の技術でちゃんと迎撃できるものなんですか?」と。
小飼:
1発や2発だったら出来ますね。でも、撃ち落とせるという保証というのはそれほどないです。ミサイルを打つ側もある程度撃ち落とされるというのも、計算に入れなきゃいけないんですね?
だから、そのために、ひとつの目標に対して10発くらい、別々のミサイルを撃ったりするわけですけれども、そこまでの核弾道はどう見ても持っていないでしょうね。
使える時間は4分のみ 現実に見えた「Jアラートの実力」
山路:
あと、核ミサイル絡みで、東京の方ではあんまり鳴らなかったみたいですけど、弾さん鳴りました? Jアラート。
小飼:
いや、全然。
山路:
ああいうものは、どの程度役に立つのだろうなと、素朴な疑問が。
小飼:
本当に落ちるのであれば、まったく役に立たないということはないでしょう。建物の影に隠れるだけでも、少なくとも即死は免れるかもしれないですしね。
山路:
ちなみに資産、例えば銀行預金みたいなものだったりとか、この前もミサイル撃ったら円が高騰したとかありしましたけど、個人が何かすべきことってあります? 金を買うべきなんですか?
小飼:
どの程度の危機かということですよね。
山路:
別にあんまり危機じゃなかったら、リスクをとって金融商品を買う必要はないと。
小飼:
そう。だから世界を滅ぼせるほどのミサイルというのは、今の北朝鮮には無いわけですよね。
核兵器があるというのを交渉で有効に使えるというのと、それをきちっと戦力化しているというのは、違うんですよ。
山路:
それに第二次世界大戦の時も、日本の株式市場は開いていたということがあったりするから。意外に。
小飼:
まあ、そうなんですよね。
山路:
意外に世界の経済というのは、普通に動いていくのかもしれないですしね。