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【無色透名祭Ⅱ参加曲】 〈oh oh oh oh〉〈応 応 応 応〉のくり返しが気持ちイイ! 吐息、寂しげなギターが頭に残る『つきましてはマチコさん』

 今回は、いち野さんが11月16日に投稿した「つきましてはマチコさん」を紹介する。

文/小町 碧音(こまち みお)


 存在感のあるギターサウンドに対して、生気のない顔をした少女と今にも消えてしまいそうなアンニュイな歌声が、灰色に沈んだ世界を泳いでいる。〈当たり障りないブラフ〉という言葉から想像するのは、主人公は常に勝負に勝つために相手をいかに欺けるか脳内を巡らせていること。オノマトペの〈ゆらゆら〉〈カラカラ〉が、浮遊感を増幅させる様は、まるで主人公の足が宙に浮いているかのような姿を浮かばせる。特に1番は、どうしたらいいのかがわからず、迷いと不安が伝わる内容になっている。

 〈骨を削って削って君に近づいていくんだ 最低なフローで隙間なんて埋めてしまえよ〉と、自分の骨を削ってでも、相手の隙間を埋めてでも、勝利をつかみ取れという教えが表れたサビの歌詞。ゲームで勝つための術が具体的に歌われている。同音異字の〈oh oh oh oh〉〈応 応 応 応〉の繰り返しで歌詞にバリエーションが生まれていることで闇に支配されたこの曲に一瞬鮮やかな色が生まれているように思う。最初の時点で、ぼやけていた世界観が、少しずつ具体的になっていく行程は、ゲームで最後に勝負の行方が決まる感覚と似ているかもしれない。

 2番では、〈完全防備のセオリー〉〈瞬間接着のストーリー〉と多様な見せ方で相手を翻弄することの大切さを歌い、〈紙食う?〉〈蟹食う?〉といったありえない選択肢を突きつけることで、相手を混乱させ、自分のペースに引きずり込もうとしている。とくに、自分の本心は一切読まれてはいけないことを強調する〈お茶を濁すゲームを繰り返せ〉という歌詞がすべてだ。ゲームは、単なるルールやテクニックの駆け引きだけでなく、心理戦が重要な要素を占めていることを思い知らされる。

 各所から聴こえる吐息、EDM要素が強くなった後、アコースティックなサウンドで静寂に包まれたところでこの曲の一番の寂しさがハイライト形式で浮かび上がる。勝負によって生まれる寂しさを歌っているようでもある。最後まで曖昧な雰囲気を保ったまま終わる同曲。この曖昧さからは、さまざまな解釈が可能だ。個人的には、1番の〈まだまだ続くみたいだ〉の歌詞からは、勝負の勝ち負けよりも、勝負に至るまでの過程や、勝負にかける思いの方が重要であることを示唆しているように感じた。


つきましてはマチコさん 配信リンク

「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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