「話し合いでは進まなくなっている」——北朝鮮への軍事的措置に官房長官が言及
安倍晋三首相を支え、長期政権の立役者でもある菅義偉官房長官が、山本一太議員が司会を務める『山本一太の直滑降ストリーム』にゲスト出演し、山本議員と対談を行いました。
対談の中で「特定秘密保護法」と「平和安全法制」は、北朝鮮の脅威に対しての抑止力として極めて大きな役割があると話した菅官房長官。その理由についても詳しく言及しました。
―関連記事―
「北朝鮮には対話でなく圧力を」「核ミサイルにつぎ込む資金を根絶やしに」河野外務大臣が“北朝鮮の非核化”に向けた計画を語る
アメリカが北朝鮮を攻撃したら、北朝鮮は日本と韓国に攻撃する? 「攻撃するでしょうね」専門家の答えが怖い
アメリカの北朝鮮への軍事的措置はあるのか?
山本:
少し前まで、アメリカの軍事的な行動ってないと思っていました。しかし最近になって1~2割は、あるのではないかと思いはじめてきました。トランプ大統領の言葉も気になっていますが、言える範囲で良いので菅長官はこの状態をどのように思っていますか。
菅:
話し合いでは進まなくなってきています。ですから強力な圧力をかけて、北朝鮮の政策を変えようという形になっていますが、全会一致の安保理決議と言うのは極めて厳しいものです。
山本:
なるほど。
菅:
北朝鮮の外貨獲得の約9割に制裁がかかっている。国連の中には政策監視委員会というのがありまして、そこで「どうだったか」ということを今チェックしています。政府としては働きを強くして制裁を着実に実行していく。
そこも大事だと思います。それがだんだんと北朝鮮の経済全体に影響を及ぼしてくる。そういう中で変えていきたいと思っています。
山本:
今、わざとお答えにならなかったと思いますが、トランプ大統領と安倍総理の会談に菅長官が同席されて、アメリカの緊張感というか、外交的選択肢がなければ軍事的措置しかないといったアメリカの緊迫感というのは感じられますか。
菅:
緊迫感というよりも、これ以上のことを阻止することですね。核実験も広島に投下された原爆の10倍ぐらいにあたる規模です。この前に発射した弾道ミサイルもグアムを越えていくようなものです。ミサイルに小型化された核が搭載されることは絶対に避ける。そういう意志は感じますよね。
山本:
そういう「核を持った北朝鮮の出現は許さない」という意志は強く感じられます。
菅:
私もそうです。絶対にそこをやらせるべきではないと思います。
日米同盟運用の潤滑油となった特定秘密保護法
山本:
今の話が出たのでお聞きしたいことがあります。アメリカの一部から、「どうせ圧力をかけても言うことを聞かない。ある程度交渉に入るために、北朝鮮に核保有国だということをある程度認めたらいいじゃないか」という論調があります。
スーザン・ライスさんという元国連大使がいましたよね。僕はもう大臣じゃないから言いますけど、性格があまり綺麗な方ではなくて好きではないですけれども(笑)、彼女が「北朝鮮はこのまま放っておいても、仕方がないのだから」と言っていましたが、これについてはどう思いますか。
菅:
絶対にありえない。放っておいたらどんどんエスカレートしていきますよね。
山本:
それを「許さない」と言う立場だと思いますが、万が一北朝鮮が核保有し、アメリカまで届くようなICBMが開発されるとなれば、1970年代ぐらいにあった冷戦時代のSS-20【※】のような議論になってしまう。
※SS-20
ロシア(旧ソ連)が1977年に配備を開始した中距離弾道ミサイル。
「日本や韓国も核の傘にあるのか」みたいなことになって、非核三原則を見直して「核を持てないから持ち込むくらいは……」みたいな議論が起きてくる。そういうことを言う人も最近多いと感じられますが、それについてどう思いますか。
菅:
政府として、そこはありえないという選択肢です。なぜなら日米同盟がきっちり運用されている。その中でも良かったのは、特定秘密保護法【※1】と平和安全法制【※2】。この二つを成立させているというのは本当に良かったと思いますよ。
※1特定秘密保護法
安全保障に関する情報のうち、特に秘匿することが必要であるものの保護に関し必要な事項を定めるもの。特定秘密の漏えいを防止し、国と国民の安全を確保することを目的としている。
※2平和安全法制
日本および国際社会の平和、安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律のこと。
山本:
なるほど。
菅:
特定秘密保護法ですと、最初の段階では安全保障の機密情報を日本で漏えいすると懲役1年ですが、アメリカは死刑でした。この差ではアメリカ側が日本に重要な情報を寄越す訳がないですよね。ですので結果的に懲役10年にしました。
菅:
それとあの時にマスコミが「これは報道の自由がなくなる」とか言っていました。あるいは著名な映画監督がテレビに出て「映画が作れなくなる」とか。あるいは、「オスプレイをスマートフォンで撮って、友達に送ったら逮捕される」とか……。
山本:
居酒屋で悪口を言ったら逮捕されるとか。全然起こっていませんね。
菅:
酷かったでしょう。でもそれから4年です。まったく起こってないですよね。この法律ができてから機微の高い情報が日本に入ってくるようになりました。ですので、いろいろな意味で体制を整えることができました。