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N高校の作家を目指す生徒へ向けた「ラノベ作家授業」は大賞受賞者が質問に答えたりと内容が激アツだった

 カドカワが作るネットの高校、N高等学校では、アドバンスドプログラムの一環として電撃レーベルで活躍しているクリエイターを講師として招聘し、小説やイラスト、ゲーム等のエンタメの授業を行っています。授業の一部が特別にニコニコ公式放送『N高 電撃小説大賞 受賞作家 特別授業』にて配信されました。

 本放送では、編集者の三木一馬さんを司会に『俺を好きなのはお前だけかよ』で第22回電撃小説大賞の金賞を受賞した駱駝(らくだ)先生が、作家を目指す高校生へ向けて授業を行いました。授業の中で駱駝先生は一冊を書き切るための執筆テクニックや電撃小説大賞の攻略方法を解説しました。

左から三木一馬さん、駱駝さん。

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“俺好き”を書いたきっかけは「王道ラブコメは面白くない」

三木:
 まず、『俺を好きなのはお前だけかよ』のあらすじを簡単に説明します。主人公のジョーロ君という男の子がいます。デートに誘われて、待ち合わせ場所に行ったら、とある告白をされるところから話が始まります。その告白が、ジョーロ君の友達と取り持ってくれないかという恋愛相談だった。ジョーロ君は「あれあれ?」って思って、そこからずる賢い生き方をしようと宣言します。

 ストーリーとしては学園ラブコメに近いですね。メガネの女の子がどう関わってくるのかというところが読み応えがあるかなと思います。通常の学園ラブコメとは少し切り口が違いますね。どうしてこの作品を24歳のときに書こうと思ったのですか。

画像は『俺を好きなのはお前だけかよ』Amazonより。

駱駝:
 当時いろいろなラブコメが流行っていたんです。それを読んだりしていたときに、女の子からの好意に鈍感系の主人公が多いけれど敏感系主人公がいないと思ったんです。要は女の子からの好意にすぐ気付いちゃう男の子がいないと。じゃあ、そういうやつを出してみようかと決めたんです。

 最初はヒロイン三人が主人公のことが好きで、主人公もそれに気付いているという話を書いたんです。そうしたら、主人公が超イヤミったらしいだけの奴になったんです(笑)。超ムカつくクソ野郎が生まれてしまって、それはいかんと気付きました。では、気づくんだけど勘違いしていたら面白いんじゃないの? ということで、この作品を書き始めました。

三木:
 そうやってジョーロ君が生まれたんですね。でもひねくれているベースは一緒だね(笑)。

駱駝:
 一緒です(笑)。

三木:
 じゃあ、どストレートな王道ラブコメを書こうとは思っていなかった?

駱駝:
 思っていなかったです。

三木:
 なんで?

駱駝:
 自分が面白いとおもわないからです(笑)。私は基本的に私が面白いと思う作品しか書きたくないです。ですから、自分が面白いと思ったひねくれた作品を書いただけなんです(笑)。

三木:
 それは大事ですね。この作品はみなさんご存知の通り大人気です。

駱駝:
 毎回そんなことないですって言ってます(笑)。実際にそんなことないです。

三木:
 でも重版がガッポガッポ入っているでしょう(笑)?

駱駝:
 入っていますけれど(笑)。私の見ている目標は別のところにあって、それを見るとまだ劣ってしまっているかなと。やっぱり『ハリーポッター』のJ・K・ローリングさんくらいは売れたいと思っていますので、まだまだです。

三木:
 シビアなことを聞きますけれど……ラノベ作家はモテるんですか。

駱駝:
 モテないんじゃないですか。

三木:
 声優と結婚できるじゃないですか。

駱駝:
 している人、いますか(笑)? そもそもモテる、モテないは職業は関係ないと思いますよ。

三木:
 やっぱりお金?

駱駝:
 それもあるでしょうけれど……。あとは波長の合う方とかあるんじゃないですか。でもラノベ作家の第一印象はいいですね。「小説家です」って言えば、ちょっと食いつきますよね(笑)。対応のメーターになりますし。そういう意味で第一印象をよく見せることはできますが、そこから先はあなた次第ということですね。

三木:
 オタコンっていう、オタクの方同士がお見合いをするような、そういうパーティが秋葉原であるんですけれど、あそこで無双できますよ。

駱駝:
 マジですか(笑)。

三木:
 女性の方々は、たとえばコスプレイヤーとか、書店員さんとか、専門学校の学生さんとか。だから「ラノベ作家です」と言うと「え! そうなんですか!」となる(笑)。

駱駝:
 そういう出会い系パーティが苦手なんです(笑)。

三木:
 だったら仕方ないですね(笑)。

駱駝:
 料金が男のほうが高いのが悔しくて(笑)。女の子の二人でデートして自分が出すのは、全然いいんです。でもパーティって100人規模じゃないですか。なんで見ず知らずの99人のために俺が高い金を払わないといけないのかって思っちゃうんです。好きな子のためにお金は使いたいんです。

駱駝先生直伝、電撃大賞攻略法「◯◯に全力を尽くせ」

三木:
 成功している作家さんが、「いかに作品を書いているか」をこれから質問したいと思います。ラノベを一冊書ききるには、ということです。作家志望の方で、大多数の人が言うのは「最後まで書けないんです」ということ。駱駝さんは24歳のときに作家を目指して、書ききったわけじゃないですか。

 ですので、どうやって書ききったのかを教えてください。

駱駝:
 基本は、「点と線」です。まず点を四つ作るんです。要するに、序盤、中盤、中終盤、終盤に自分が絶対に書きたいシーンを四つ頭の中に決めておくんです。そこに向かって、ひたすら書き続ける。そこを線でつないでいく。

三木:
 四コマ漫画みたいな?

駱駝:
 ちょっと違うんですが、この作品も私が書きたい四つのシーンに向かって書いています。

三木:
 たとえば一個目は?

駱駝:
 ジョーロが本性を現すところですね。この作品を書いたときも、まずここを書きました。ここを書いてから前を書きました。

三木:
 そんな書き方ができるんですね。最後の四つめは?

駱駝:
 最後はパンジーのシーンで締めてやろうと決めていました。そこを最後のゴールにして書きました。だから最後まで書ききれないということは、オチがつかなくなっちゃうか、途中で整合性が取れなくなっちゃうんじゃないかなというところですが、その場合は整合性は無視して書いちゃいます。

 いいんですよ、そのときに一番面白いと思ったことを書いたらいいんです。まずはそこを書ききって、整合性が取れなくなっているところを修正すればなんとかなります。

三木:
 なるほど、参考になります。では書ききるためにまい進しているのですが、スランプに陥ったり、なぜか筆が止まってしまうということがあると思うんです。

駱駝:
 ありますね。

三木:
 そういうときはどうしていますか。

駱駝:
 歩く。ひたすら歩く。毎日ウォーキングを欠かさないようにしているんですが、ひたすら妄想をしています。宝くじが当たったらどうしようとか(笑)。

三木:
 まさしく妄想ですね。実際に体を動かすとストレスの発散になるらしいですからね。体が忙しいほど、頭の中がヒマになるんです。ですから自由に考えられるんです。頭の中を整理することができるらしいですよ。

駱駝:
 無心になれる環境っていいかもしれませんね。

三木:
 では、次は電撃小説大賞の攻略法を伺ってみたいと思います。一応、僕は少し前まで選考委員をしていましたが、その立場から言うとやっぱり誤字脱字をなくしてほしいです。人に見せるものに誤字脱字があれば、それは全力で見せられていないということになりますから。

駱駝:
 その言葉は私にすごく刺さります。私は原稿に誤字脱字が多いことで定評がありますので(笑)。

三木:
 あと投稿のルールで、氏名住所あらすじとか書かなきゃいけないんですが、あらすじをオチまで書いてほしいです。あれは最後まで書かなきゃいけないんですが「そして◯◯は……」みたいにあらすじが終わってるんです。そこで煽らなくていいです。

駱駝:
 要項に丁寧に「ちゃんと最後まで書いてくれ」って記載してあるんですよね。800字くらいにまとめて書くんですが、たぶんまとまらない人がいるんでしょうね。少し世知辛いことを言いますと、あなたにまとめる力がないんですよ、ということですよね。だから落ちるんだよバカ、みたいな(笑)。

三木:
 辛辣ですね。

駱駝:
 あとは「!」と「?」のあとは、スペースを一個あけるとか?

三木:
 そこまでではないですね。

駱駝:
 あと、どの賞にも限らず基本的に受かりやすい小説の書き方はあります。最初の5ページに全力をかける。個人的に伝えたいことや、その小説の楽しみ方を伝える。本って書き方によって全然伝わり方が変わってくるんです。
だからこの本はこういうふうに楽しんでくださいというメッセージを最初の5ページくらいにさっさと出しておく。

 そうしないと、それ以降どう楽しんでいいのかわからないので、読んでいてつまらないんです。最初の5ページで、どんな人が出てくるか、どんな活躍をするか、どんな舞台なのか、楽しみ方を伝えることは大事だと思います。

三木:
 今のは正しいです。ラブコメだろうが、シリアス、ファンタジーだろうが、全部それに適用できますからね。みなさんもぜひ最初の5ページに全力を尽くしてください。次のテーマ。漠然としていますが、たとえば「作家を目指す過程でなった後に気をつけること」を、成功の体現者として語っていただけたらと思います。

駱駝:
 大事なのは作家と編集者!

三木:
 編集者は選べないじゃないですか。そこも含めて運ですね……。

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