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「ビットコインが値上がりしているのではなく、国家が発行する通貨の価値が下落している」――『ビットコインバブル』に小飼弾が言及

次々と出現する仮想通貨をサトシ・ナカモトは予見していたのか

山路:
 それがサトシ・ナカモト【※】元々の目論見だったわけじゃないですか。だけど、これだけ分裂して値段が急激に上がっている、あるいは仮想通貨間の価値とかがすごい変動したりとか、していたりするのを見ると、それはサトシ・ナカモトの目論見通りなんですか?

※サトシ・ナカモト
Satoshi Nakamotoは、ビットコインプロトコルと、そのリファレンス実装であるBitcoin Coreを作ったことで知られる人物の称する氏名。本名であるか、そもそも個人であるかどうかを含め、正体は不明。

小飼:
 ご自由にフォーク(分裂)してくださいというのは、サトシ・ナカモトも言っていたことなので。なんだけども、価値は特定の仮想通貨に集中するだろうというのも、言っていたことです。フォークしまくったというふうに言っていますけど、結局のところきちんと値がついているのは、BTCとBCHだけなんですよね。

山路:
 今度セグウィット2xのハードフォークが……。

小飼:
 延期されましたけどね。

山路:
 あるいはライトニングネットワーク【※】でしたっけ? そういう更にまたフォークしそうな通貨というのがあるわけですよね。

※ライトニングネットワーク
少額支払いを可能にし、手数料を削減し、ビットコインの規模を大きくさせるための解決策。

小飼:
 ライトニングネットワークは、フォークとはちょっと違うんですけど、決済方法なんですけどね。

山路:
 そういうふうなものは、これからも続いていくんですか?

小飼:
 続いていくのが、仮想通貨が受け入れられている証でもあるんですけれどもね。

換金性と通貨の価値

山路:
 なんとなくよくわからないところというのが、まだビットコインとビットコインキャッシュに関しては、それで現実のものが買えたりとか、そういう送金したりとか……。

小飼:
 今のところ、ビットコインだけですね。BCHでなにか買えるところというのはまだ僕もお目にかかってない。そろそろ出てきてもおかしくなさそうですけどね。

山路:
 弾さんが参加しているVALUなんかでも、受け入れているのはビットコインだけですよね?

小飼:
 BTCだけです、今のところは。

山路:
 その換金性みたいなもの、物を買うとかそういう流通させるための仕組みが……。

小飼:
 換金性という言葉が出ること自体、まだまだなんですよ。だってお金じゃないですか。もうお金になっているんですよ。

山路:
 換金しなくてもお金は……価値としてみんなが認めているんだから、もうそれは価値なんだよという。

小飼:
 価値として認めているんじゃなくて、仮想通貨とわざわざ呼んでいるわけですよね。お前は通貨だって、日本国政府でさえ認めているわけですよ。税法は認めていないですけどね。税法では物品なんですけどね。

山路:
 所得も資産とは違う扱いになっていますよね。

小飼:
 そうなんですよね。

仮想通貨に対して、国家が発行していた通貨の価値が下落している

山路:
 しかし、この年の初めからすると10倍ですよね、ビットコインなんかの価格は。これはちょっといくらなんでも、それこそ昔にあったオランダのチューリップ球根バブルみたいなことなんじゃないかと。

小飼:
 だけどチューリップはチューリップでしょ? 物ですよ。

山路:
 チューリップになるかもよというコメントもありますね。

小飼:
 その意味では、今までのバブルとは本質的に違うと僕は見ています。むしろビットコインが値上がりしているのではなく、ビットコインに対して日本円やUSドルや人民元が値下がりしているんですよ。

山路:
 では、まだ適正価格になってないかもしれない?

小飼:
 というよりも通貨というのは価値そのものというよりは、価値の写像なんですよね。だから、経済のどの部分をマップしているかというので、通貨の配分というのは決まっているんですけども、要は今までの法定通貨と呼ばれるものですね。業界人はFiatという呼び方をしていますけども、それが仮想通貨に置きかわると考える。

山路:
 今までの国家が発行していた通貨の価値が、どんどん下落していって、仮想通貨に変わりつつある正に最初の段階なんじゃないかということですか。では、そういう仮想通貨の取り扱いというのは……。

小飼:
 あくまでも仮想通貨であって、それがずっと未来永劫ビットコインであるというふうには、僕も思ってないです。

山路:
 もしかしたらそれがビットコインキャッシュに変わるかもしれないし、もっと新しく出てきたものに変わっていくかもしれないし。

小飼:
 でも、なんであの通貨は人気があるんだと言ったら、人気があるからという、すごいトートロジカルな理由で上がるという点からいくと、やっぱりビットコインというのは受け入れられ方が圧倒的です。 

山路:
 1回ちょっとビットコインを買って、少しだけ儲かったところで全部売り払ったんですけど、もう1回ちょっとやってみるかなみたいな気にはなってきますね。

小飼:
 いやだから、そこで儲かったっていうふうに考えているうちは、仮想通貨はまだまだなんですよね。

山路:
 そりゃそうか(笑)。

小飼:
 だから日本円が腐りつつあるというふうに……。

山路:
 そう考えると、ちょっと今の値動きの激しいところではあんまりそこに移すのは、さすがに怖いですけどもね。どうなるかわからないところがあるから。

小飼:
 まだまだですね、本当に。

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