アニメ評論家さん達『ボールルームへようこそ』をべた褒めする。「テレビでこんなものを見られるなんて感動!」
社交ダンス界で奮闘する高校生たちを描いたアニメ『ボールルームへようこそ』。サンキュータツオさん、国井咲也さん、アニメ評論家の藤津亮太さんが『WOWOWぷらすと』で本作の魅力を語り尽くします。
また後半ではアニメ業界の売上が2兆円を超えたことを取り上げ、それがアニメ業界に及ぼす影響にも言及しました。
※本記事には『ボールルームへようこそ』のネタバレを一部、含みます。ご了承の上で御覧ください。
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『ボールルームへようこそ』は何がすごいのか
サンキュータツオ:
10月のクールのアニメはいかがでしょうか。国井さん的には何が中心で回っていますか。
国井:
7月から始まっているアニメなのですが、『ボールルームへようこそ』はめちゃめちゃ面白いですね。
サンキュータツオ:
社交ダンスを扱った結構、硬派な作品ですね。
国井:
社交ダンスなんだけど、ダンスで楽しくというような部活物ではなくて、競技ダンスなのでアスリートたちが本当に戦う。「勝つにはどうする?」「何が必要?」「才能?」「いや、才能だけか?」というように、ずっとピリピリしている。
サンキュータツオ:
なるほど。
国井:
主人公の男の子(富士田多々良)が高校、中学のときに才能を見出されて始めたんだけど、あこがれの人(花岡雫)となんとか上手くいって、くっつくのかと思ったらそれはとんでもない。
高校のときに新しい女の子(緋山千夏)と出会うのですが、この子がまたじゃじゃ馬で……。
藤津:
すごくクセのある世界ですね。
国井:
千夏がおてんばなんですよ。それでまたちょっとハートを持っていかれましたね。もう毎週が楽しみでしょうがない。
藤津:
社交ダンスは元々の競技人口が女の子が多いから、女の子が男役(リーダー)をやる。
国井:
そこもすごくいいと思いましたね。
藤津:
そして性格が合わないとパートナー解消とか、そういうアイデアは、元々原作のアイデアだったんでしょうけれどやっぱり知らない身からすると、そこが上手く設定されているのが良かったですよね。
国井:
うち、母が社交ダンスをやっていたんですよ。いわゆるソシアルダンスというのが好きで、「あんたもやろうよ」と中学、高校のときからいわれいて、俺は嫌いじゃないんだけど、やるほどでもないので。
見学に行って「おばさんたちのダンスはこんな感じなんだな」とか見てたんですよ。そうしたらとにかく俺を誘うんですよ。「なぜ?」と聞いたら「男の人が少ないんだ」って。
サンキュータツオ:
そっか。
国井:
「何でやめちゃうの?」というと、「男のリードが難しいんだ」っていうんですよ。
サンキュータツオ:
なるほど。
国井:
「みんなそれが嫌でやめちゃうんだ」っていうの。だから『ボールルームへようこそ』を見て、その通りだったんだと思いました。女性を対動作的に導かなければいけないというのを詳しく知ると、「やっぱりそうなんだ」と合点がいきましたね。
その辺も、全く知らなかったんだけどよくわかる。多少は知っていても「なるほど。そうなっていたのか」というのがよくわかって面白いですね。社交ダンスの競技人口が増えてほしいと思いますね。
スタッフ:
要は、ダンスの作品じゃないですか。このダンスの動きの描写がすごいのですかね。
サンキュータツオ:
そこです。
国井:
すごいです。
サンキュータツオ:
株式会社プロダクション・アイジーの作品で、『ハイキュー!!』をやっていたところということで、コメントからも「『ハイキュー!!』のノウハウも活きているんじゃないかな」という指摘もありますね。
藤津:
原恵一監督の『百日紅~Miss HOKUSAI~』を作っていたりします。
サンキュータツオ:
なるほど。
藤津:
『百日紅~Miss HOKUSAI~』のときに作画監督をやっていた板津匡覧さんが今回の監督をしています。だから原さんが担当したコンテ回が2回ほどありました。
一同:
そういうことだったんだ。
サンキュータツオ:
やけに豪華だなと思った。
藤津:
あと、演出で佐藤雅子さんという女性の方がいて、その方も今回入っているのでそういう流れを感じます。ダンスの動きがすごく動くところとか。
国井:
ダンスなので止まってしばらく動かない振り付けのシーンとかは、カメラだけ振るというところが実にかっこいい。決めるところでピタッと止まるのがかっこいいじゃないですか。
動いてないところは、悪い意味じゃなく、全く動いてないんですよ。そこがまたかっこいい。
藤津:
枚数をきっちりコントロールしているという噂は聞くんですよ。
サンキュータツオ:
そういう感じ、伝わってきますよね。
国井:
見えますね。伝わってきますね。
藤津:
使うところは、使う。使わないところは、使わない。『孤独のグルメ』でおなじみの黄瀬和哉さんが担当した10話ですが黄瀬さんがラフをほとんど描いて、レイアウトをほとんどやったそうなんです。あの回は、止めが多い回なんですよね。
そして11話が結構、絵が動く回なんですよね。
国井:
9話もすごかったです。赤城真子が「私を花にしてください」といって、多々良が額縁になる話でした。
国井:
だからちょうど静と動のバランスなんですよね。
藤津:
9話と11話が動きが大きい回なのでね。10話は少し枚数的には少なめですが、たぶんすごく計算されて作られている感じがするんですよね。
サンキュータツオ:
なるほど。
国井:
すごいアニメだと思う。「テレビでこんなもの見られるなんて!」という感動がありますね。
『ユーリ!!! on ICE』とはどう違う?
サンキュータツオ:
黄瀬さんといえば、劇場版『攻殻機動隊 ARISE』ですね。
藤津:
『孤独のグルメ』もありますし、黄瀬さんはずっと忙しい気がする。
サンキュータツオ:
まぁ、ダンスものというと『ユーリ!!! on ICE』』という大きなコンテンツが昨年ありましたので、どうしてもダンスの動きということで比較されがちなのですが、その中でも全く違う見せ方ですね。
国井:
『ユーリ!!! on ICE』はどちらかというとキャラクターで見る。男同士がコミカルに味つけされていて、女性の視聴者を意識してますよというのがある程度出ていました。
しかし『ボールルームへようこそ』は王道のスポ根アニメですね。男の子、女の子が戦って、そうやって上にあがるというところが痺れますね。
藤津:
あとタイプの違うヒロインが次々と出てくる。若干のギャルゲー感がありますね(笑)。
国井:
そうなんです。しかもみんな美人なんですよ(笑)。たまりません(笑)。
サンキュータツオ:
気づいたらハーレムアニメですからね。
藤津:
合宿の話のとき、みんなでご飯を食べるときに、主人公は登場人物の三人の女の子とみんなパートナーを組んだことがあって、いろんなことを考える。
国井:
ハーレム感が出てくるんですよ(笑)。
サンキュータツオ:
しかし、めちゃめちゃ動くことがだけがいいというアニメではないですね。
国井:
1枚の絵がそもそもかっこいいからね。
藤津:
かっこいいですね。独特の首が長いプロポーションをすごく上手く描いています。
サンキュータツオ:
ちょっと硬派なね。やっぱりちゃんと作ってるな~。
藤津:
ちゃんと作ってますね。説明の部分を聞いていても、ただ説明してくれているというよりは、本当にかっこいいセリフに聞こえるんですよね。
「あの体のしなり、相当鍛えているな」って兵藤清春というかっこいい男の子がブツブツいうんですよ。それがまたかっこいい。