KABA.ちゃんが性別適合手術前の葛藤を明かす「本当はゲイとして男性が好きなのかなとか考えたり」
性転換手術を後悔しないための精神療法。KABA.ちゃん「絶対にやってください」
土屋:
次は手術のプロセスについて勉強していきたいと思います。理解をより深めるためにしっかりと勉強していきたいと思います。こちらです。
山口:
FTMというのはFemale to Male。女性から男性へ。MTFはMale to Female。男性から女性へ。これがまず大原則としてあります。一番上に書いてあるのが生殖腺切除。女性の体から子宮と卵巣を取っちゃう。男性の体から精巣を取っちゃう。これはとっても特別な手術です。母体保護法という法律で守られている臓器ですから、ここは非常にハードルがあります。
ほっしゃん:
男性で言うと、まだ性器はついたまま?
山口:
ついていますね。そしてMTFというのが、いわゆる性器を取る手術であったり、膣を作ったりする手術です。女性から男性の場合は膣を閉鎖したりとか、それこそクリトリスの場所をずらしたりとか、陰のうみたいなものを作ったりします。
IMALU:
閉鎖ってどうなっちゃうんですか。穴だけ閉じる?
山口:
たとえばご老人の方で子宮が落ちてきてしまう方がいるのですが、そういう方も閉鎖します。女性の加齢変化に対して行う手術なのですが、トランスジェンダーの場合は膣の粘膜を全部取って縫います。あとは女性が男性になるにはやはり乳房を取らないといけない。これは絶対ですね。下半身はともかく上半身は社会的にも目立つ場所ですからね。男性の場合は逆に豊胸したり声を変えたり、顔のエラを削ったりします。
土屋:
たとえば「私、性転換手術をしたいです」「はい、きょう手術しましょう」とはいきません。ここにいくまでのプロセスを説明します。まずは精神療法、ホルモン療法にいって、ようやく性別適合手術ということなのですが、精神療法についての説明をお願いします。
山口:
まず、精神科の先生が果たして手術が必要なのかどうか、あるいは性同一性障害なのかを診断するには三つくらい行うことがあります。一つはまず、躁うつ病と言われている双極性障害といった病気とか、うつ病とか別の疾患が本人に性別違和を引き起こしているのではないかという意味で、別の疾患ではないという鑑別が必要です。
一過性に気の迷いで言ってしまうこともあるかもしれません。さらに子供のときから受診するまで「子供のときはどうでしたか」「小、中、高校生のときはどうでしたか」と、生活史を聞きます。そうすると、性別違和が時間軸に沿っているかどうかがわかるんですよ。急に目覚めたとかではなく、持続していることが大事なポイントになっています。
さらにカミングアウトをしたあととか、社会で生きていくためにはたくさんのハードルがあるので、そのあたりのアドバイス、あるいはカミングアウトの方法そのものをアドバイスすることもあります。
土屋:
精神療法を行って、実際に性転換手術に踏み切る人は何パーセントくらいですか。
山口:
実際に精神療法をして本当に手術までいくのは5%くらいです。
一同:
えっ!?
西川:
意外とそこの手前で「もしかして違っていたのかも……」と気づくということなんでしょうか。
土屋:
患者さん自身が止めるのか、先生が止めるのかどちらなんですか。
山口:
どちらもだと思います。別の疾患の場合はこちらが止めます。あとは話を進めていく中で、「ちょっと違うかな」と自分が認識していくとかですね。
IMALU:
手術を受ける人は必ずこれはやらないといけないんですか。
山口:
理想ですね。法律ではありません。
KABA.ちゃん:
私やりました。自分史を書かされるんです。生まれたときから現在まで、こういう時期にこういうことが起こってどう思ったとかを全部書いて、それを見ながら先生と話をしていくというのを1年近くやりました。
土屋:
これはみなさん1年くらいやるものですか。
山口:
そういうわけではないですが、だいたい半年くらいは必要ですね。
土屋:
やっぱり間違って手術してはいけないというものがあるからですか。
山口:
それもありますし、やっぱり1回くらいだと、「こう言えばいい」みたいなマニュアルが出回ったりしますからね。
KABA.ちゃん:
そういうのをなくすために、カウンセリングも時間をかけて通わないといけないんですよね。
西川:
でも途中で「私、そうじゃなかったのかも……」というのは、本人が気づいていくものなのですか。
山口:
そうですし、ホルモン療法で止まる方もいます。
ほっしゃん:
まれに手術終わってから「やらなければよかった」と言う人もいるんですか。
山口:
どうしても、いなくはないですね。
西川:
そのためにもやっぱり順番を経ていかないとね。
土屋:
そういうことで自殺をしてしまう人もいるらしいです。1回手術してしまうと絶対に元に戻れない。
KABA.ちゃん:
情報を集めているときに、手術の前後に精神的に不安定になって万引きをする人がいるんですって。私、そういうのが出て捕まっちゃったらどうしようって。だからそういうのがあって、なかなか踏み切れないというのもありました。
ほっしゃん:
KABA.ちゃんも1年間カウンセリングをやっているうちに、「もしかしたら違うかも……」と思ったことはあったの?
KABA.ちゃん:
ちょっとはありました。
ほっしゃん:
KABA.ちゃんですらあるんや。
KABA.ちゃん:
自分は本当はゲイとして男性が好きなのかなとか。
西川:
だったら別に手術をする必要はないもんね。
土屋:
やっぱり精神療法はやったほうがいい?
KABA.ちゃん:
絶対にやってください。