腕の組織から男性器を形成――性転換の全容を医師が解説「軟骨を入れて硬さを作ります」
腕の組織から陰茎を形成。海綿体の再現は?
山口:
次にいきましょう。左図は下から見たらこうなりますよというものですが、右図は立ったらギリギリ小さいおちんちんが見えます。
西川:
もうほとんど男性ですね。
山口:
これで終わる人もいますけれども、陰茎を作ることもできて、難しい言葉でファロプラスティーと言います。
これは陰茎の断面図ですけれども、おしっこが通る尿道と硬い芯になる部分と、全体のシャフトという全体の構造になっていて、これを作る手術を、先ほどの手術の次の段階で行います。
これもまた難しいのですが、軟骨とかを入れたりして、硬さを作ったりとか、シリコンの棒を入れたりするパターンです。
土屋:
海綿体は作れないんですよね。
山口:
そうです。海綿体は都合よく硬くなったり柔らかくなったりするんですけれども、現代医療ではそれは作れません。常に硬いか、常に柔らかいかです。尿道は植皮という皮膚だけで作る場合と、巻き寿司みたいにして作る皮弁という二つがあります。
西川:
自分の腕とか?
土屋:
やっぱり自分の組織というのが大事なんですか。
山口:
もちろんです。自分の組織でないと作れません。次ですね。
山口:
これは腕で作った場合の絵ですけれども、腕の皮膚を剥ぎます。皮膚と皮下組織を取ります。筋肉を傷つけないですよ。そしてこれを巻いて神経と血管がついたままで、これをマイクロサージャリーでくっつけます。顕微鏡手術ですね。こうして出来上がります。
IMALU:
移植した跡は残るんですか。
山口:
とても残ってしまいます。
西川:
だって、これだけの皮下組織を全部取るわけですもんね。
IMALU:
跡はどんなふうになるんですか。
山口:
どうしても腕の太さが変わっちゃいます。
西川:
今こそ再生医療というか、iPS細胞とかで今後そういうものができるみたいな可能性はあるんですか。
山口:
かもしれませんけれどね。皮膚はできますけれども、皮下組織まではなかなか……。
星田:
内蔵みたいに移植っていうのも、これはまだ程遠い未来ですか。
山口:
今のところそうですね。それは究極の性別適合手術と言われていて、MTF(Male to Female 男性から女性へ)の人にお亡くなりになった人の子宮とか内蔵器をもらって、FTM(Female to Male 女性から男性へ)の人に亡くなった人のペニスをくっつけるとかですね。次お願いします。
山口:
ここに神経が通うので、つまむと痛いです。最終的に亀頭の部分を局所麻酔で作り出します。
星田:
機能はどうなんですか。
山口:
常にちょっと柔らかいか、硬いままです。
星田:
そっか、骨とかが入っているから。
山口:
だから大きすぎると困ってしまいます。邪魔になりますからね。
西川:
ちょっと神経の入ったペニスバンドをずっとつけている感じですよね。
男性が女性になるための切除から膣形成の流れ
土屋:
これが男性になった場合ですが、次はKABA.ちゃんがやった男性が女性になった場合も同じように見ていきたいと思います。
山口:
精巣を取って、陰茎を取って、輪郭を作る。あとは膣を作る。直腸の前、尿道の後ろ、図で言うと点線のところに穴を作る。ここに膣が出来上がるんです。
星田:
穴を開けないといけないんですね。
山口:
これが難しいんです。次にいきましょう。
山口:
膣形成といって、先ほどの膣に穴を開けて、それを置いておくとすぐに穴が塞がってしまうんですよ。ですので皮膚を反転して裏張りを作るとか、皮膚を移植して裏張りを作るとかして、穴を維持するわけです。あるいはS状結腸を引っ張ってきて膣を作ります。
星田:
手術方法は患者さんで選ぶんじゃなくて、先生が選ぶんですか。
山口:
患者さんが選びます。ざっくり言うと、陰茎が大きい人は反転が向いています。靴下をひっくり返すようにして、それを入れ込む。
KABA.ちゃん:
私、1回目の手術のときはそれでした。
山口:
陰のうがちょっと大きくて、陰茎が小さくなっている人は移植法なんかもできます。
IMALU:
裏返しにするのは、その位置で裏返しにするんですか。
山口:
ちょっと下になります。後ろ寄りになります。次にいきましょう。
山口:
陰のうと肛門の間に膣を作ります。次にいきましょう。難しい絵ですが、膀胱のすぐ下の極めて狭い空間に穴を通す。
西川:
すごいすれすれのところですね。
山口:
これがとても難しいんです。
西川:
これって内蔵がすごく近いじゃないですか。腹膜だったりとか、内蔵を守っている部分に近いじゃないですか。
山口:
これが難しいので、なかなか日本でできる医師が少ないんです。
西川:
逆に海外とかでも雑にやられちゃったら……。
山口:
腸に穴があいて便が出てきちゃったりとかします。
IMALU:
怖い怖い……。
KABA.ちゃん:
私、膣に穴があいたことがある。
土屋:
実はKABA.ちゃんは2回手術したことがあるんだって。
西川:
そうなの!? 1回しか聞いてない! ひっくり返すときに毛深かったから、ひっくり返すと毛が内側に来るじゃないですか。そうすると脱毛をきちんとしておかないと、中で毛が生えてきちゃう。
IMALU:
詳しいですね(笑)。
土屋:
次にいきましょう。
山口:
実は海綿体は三つの海綿体でできているんですよ。尿が通る尿道海綿体、陰茎海綿体というのが左右に1本ずつあって、3本が一体化しているんです。それを分解しましょう。
星田:
そこ切られたら終わりや……。
山口:
尿道を短くします。陰茎海綿体を全部根元から取っちゃいます。
西川:
これが命やのに……。
KABA.ちゃんの身体は明石家さんまの女性経験の結果?
西川:
KABA.ちゃんは、身体のサンプルじゃないけど、こういうのにしたいなとか選べるの?
KABA.ちゃん:
そうそう。アテンド会社の方にお願いして、「こういうのがありますよ」みたいな感じで、9人分くらいのパターンを見せてもらいました。
星田:
それは手術した方の?
KABA.ちゃん:
そう。こういう感じですよっていう、すごい昔のやつでしたけど。
IMALU:
なにが違うんですか。
KABA.ちゃん:
微妙に見た目とか、膨らみがあるとかないとか、いろいろあって。
土屋:
でもそれって、どうやって選んだんですか。
KABA.ちゃん:
さんまさんに……(笑)。
IMALU:
えっ!?
KABA.ちゃん:
実はさんまさんに選んでもらったんですよ。
IMALU:
どういうことですか。
KABA.ちゃん:
さんまさんはハニートラップとかすごい引っかかるから……。
IMALU:
(笑)。
KABA.ちゃん:
身近で一番知ってる人がさんまさんだった。
IMALU:
父の女性経験の結果が……?
西川:
さんま師匠の好みになっちゃった(笑)。だから「お姉ちゃん」と呼びなさい。
IMALU:
絶対いやだ(笑)。なんだよもう~!
KABA.ちゃん:
でもそのままじゃなくて、プラスアルファでオプションもつけたんです。
星田:
なにそれ?
KABA.ちゃん:
クリトリス小さめ、小陰唇短め。
西川:
そのオーダー方法、ラーメン二郎やん! マシマシやんか! なんやそれ(笑)。
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