アニメ『おそ松さん』2期が大爆死した理由を現役漫画家が解説「腐女子をからかうアニメだったはずが、逆に取り込まれてしまった」
過剰で下品な下ネタで空回りしてしまった
山田:
女子を引かせなきゃいけないと思って、ものすごい下ネタが多かった。このすべてが見事に空回りしていって、過剰に下品になっちゃってしまってるなっていうのがあって。
乙君:
空回っちゃったんだ。
山田:
そう。だからポストモダン【※】は、型があったのをズラすからポストモダンなの。自分自身がそれになってしまって。
※ポストモダン
現代という時代を、近代が終わったその後の時代として、特徴付けをしようとする言葉。
乙君:
型になってしまって。
山田:
どこにも行けなくなっちゃう。だから笑えなくなる。だからそうすると今度、メタをメタでやるんだよ。今週の回なんかだと、イヤミが「今更“ざんす”なんて言ったってウケないざんすよ」とか言い出して。
乙君:
あら。
山田:
プロデューサーが出てきて。イヤミが一緒に自殺をしようとするんだよ。
乙君:
え?
山田:
「あと2回なんで、そこまで我慢してくださいよ!」みたいなことをプロデューサーに言われるみたいな。
乙君:
なるほど。うん。
山田:
俺達も何て言ったらいいかわかんないじゃない。大体お前は鉄板の「シェー」というギャグがあるじゃないか。みたいなことを延々やるんだよ。いや、面白いんだけどさ。
乙君:
うん。
山田:
だから、それで何が見えてくるかっていうと、やっぱりメタ、メタ、メタの地獄みたいなものがあって。人の目線を気にしすぎるがゆえに動けなくなっていった『おそ松さん』2期というのが、もしかしたらあったんじゃないかなという気がするよね。
乙君:
なるほどね。だから反骨心とかがある人らが一度天下を取っちゃったら、体制側に回っちゃった時に、戦う対象がなくなっちゃって、自分をパロディ化してしまうしかない。それがこっち見てる側としたら、もう痛々しいというか、最初の勢いどこに行った? となる。俺達はあのパンクな感じが好きだったのに。
山田:
その通り。
乙君:
何も壊すものがなくなっちゃったと。
山田:
ねえ。でも、途中から「頑張ってるなー」とは思ってた。イントロ回とかも実際面白かったし。
乙君:
2期はアレだけど、また3期あれば吹っ切れて、新しい感じに変わるかもしれないし。
山田:
そうだね。だから、この後も見てみたいよな、っていうね。