書評日本一高校生は静か過ぎる少年だった? 全国高等学校ビブリオバトル2016決勝大会
2017年1月8日(日)に行われた「全国高等学校ビブリオバトル2016 決勝大会」。この決勝戦の模様が、よみうり大手町ホールからニコニコ生放送を通じて中継された。
“ビブリオバトル”とは、自分の好きな本を選び、観客の前でその面白さを紹介するという、プレゼンテーションと書籍レビューを組み合わせた、ゲーム感覚で行える書評バトル。この全国一位を決める大会が、地方予選を勝ち抜いた高校生によって行われた。
【公式ルール】
1.発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる
2.順番に一人5分間で本を紹介する
3.それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2~3分行う
4.全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員で行い、最多票を集めたものを『チャンプ本』とする
(知的書評合戦ビブリオバトル 公式サイトより)
ビブリオバトルの公式ルールは極めてシンプル。自分の好きな本を1冊選び、その本の魅力を5分の制限時間の間に紹介する。その後、3分間の質疑応答を挟み、次の発表者に交代していく。そして最後に、参加者全員による投票を行い、「最も読みたくなった本」を決定する。
「自分で本を選ぶ」という部分に強く個性が出るという点でただのプレゼンテーションやディベートとは違うし、「決められた時間内に魅力を伝える(他人に読みたいと思わせる)」という点で、読書感想文コンクールとも異なる。この二つのが組み合わさることによって、全く新しい“競技”。それがビブリオバトルだ。
このビブリオバトルを観戦するにあたって最も面白いところは、“発表者の個性”がよく見えるところだ。前提としてはあくまでも本の紹介なのだが、書評を続ける中で「なぜその本を紹介するのか?」という書評者の好みや考え方などが否応なく浮かび上がってくる。
公式ルールとして設定されている5分間という制限時間は、1冊の本のあらすじを紹介するにしては少し長い。必然、あらすじだけでなく、その本を読む中で自分の中に生まれた感情を表現せざるを得ない。そして、こういった“自分なり”の部分から十人十色の個性が見えてくる。「人を通して本を知る、本を通して人を知る」というキャッチコピー通りに、本の紹介であると同時に、“その本を紹介する私”の紹介にもなっているのだ。
決勝戦を勝ち抜いたグランドチャンプ本は、山梨県立北杜高等学校・北原仁さんの紹介した『ハリネズミの願い』。友達を自分の家に招こうと手紙を書くのだが、招待状を出す前に「この人が家に来たらどうなるんだろう?」、「迷惑なんじゃないか」と想像してしまい、結局、手紙を出すことが出来ないというハリネズミの心情を描いた物語だ。
他の参加者がハキハキと元気よく書評をこなすのと対象的に、北原さんの書評は物静かに過ぎるほど控えめなものだった。しかし、そういった控えめさが、物語の中で葛藤を繰り返すハリネズミと上手くマッチし、聞き手の興味を掻き立てる形となった。
自分の好きな本が一冊あれば、誰でも参加することが出来るビブリオバトル。一般参加可能なイベントも全国各地で行われている。本好きな方はぜひ一度、体験してみてはいかがだろうか。
■関連リンク
21世紀 活字文化プロジェクト(活字文化推進会議)公式サイト
「知的書評合戦ビブリオバトル」公式サイト