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オタク芸人でラノベ作家の天津向に聞く、大変でも仕事をしながら同人活動を続けるワケ。一人のサークル参加者として語るコミケとは?

オリジナルから二次創作にジャンル変えた理由

──今回のジャンルは『ラブライブ!』で参加してますが、最初はどのジャンルだったのですか?

向:
 オリジナルです。ずっとやっていて、もともと好きなのはオリジナルだったんですが、同人でオリジナルをやる意味を考えた時に、同人でやりたいオリジナルではないんじゃないか? と思ったんです。

──コミケの場でしかできないことはなんだろうと。

向:
 僕はどちらかというと、やりたいことはメジャー志向でもある分、オリジナルをやっていたんですけど、それ自体は持ち込みしたボツのやつをやっていたりとかもあったんです。そうなった時に、即売会でのスタンスがよくわからなくなるというか、ここで何をしたいのか?と思ったんです。

──それまでは二次創作をやろうとはあまり思っていなかった? 二次創作の同人誌もあまり買っていなかったのでしょうか?

向:
 買ってないわけではなくて、好きな作家さんがやっている二次は好きだしとか、作家さん目当て買っている部分は多少はありました。

 二次創作をやるにあたっては、オリジナルにおける自分のポテンシャルと、二次創作は二次創作でやりたいことができたんです。それは本当にシンプルに『ラブライブ!』と出会ったからですね。二次創作をやるなら『ラブライブ!』をやりたいなと思ったんです。

C94の新刊「破らぶらいぶさんしゃいんの4コマ」
(画像はとらのあなより)

──二次創作をやってみるとそれまでと変わりました?

向:
 スタンスは確かに変わりましたね。僕のやっていたオリジナルは普通の4コマをやっていたんですけど、『ラブライブ!』をやろうとなった時に、僕は箱推しをしたいと思いました。キャラクター的にオチにしやすいキャラとか当然いるわけじゃないですか? ということは、15本の4コマを描くにあたって、キャラは走りやすい分、バランスはどうしようかと考えました。だから9人が3本ずつ出るようにするとかを考え出して、そこが結構バランス取りにくいんです。

 例えば今、ことりちゃんだけの話が多いけど、そうじゃなくて真姫ちゃんの話って考えると、真姫ちゃんメインの1本とサブで出ている3本みたいな感じで、パッケージでバランス取れてるぞ! というふうにはしていて、キャラを全員目立たせてあげたいというこだわりがあってやっています。

  例えば、「にこ本」だったら「にこ本」で良いんですけど、そうじゃない『ラブライブ!』の4コマだったら、全員目立つことの方が良いんじゃないかなと思っています。

本を手にとって買ってもらえる喜び

──今、サークルの配置場所はどの辺になっていますか?

向:
 僕は全然島中で、中とお誕生日席【※】が交互ぐらいな感じですね。

※島中、お誕生日席
コミケのサークル配置位置を表す言葉。人気サークルの壁、シャッター前に対して、多くのサークルは会場の内側に縦長の長方形状に無数に並べられて島と呼ばれる。島の中でも縦長の両端は比較的人気があるサークルが配置され「お誕生日席」といい、それ以外が「島中」という。

 一度、コミケではない即売会で壁に配置されてしまい、その時は無茶苦茶恥ずかしかったですね。僕のところだけ列にならなくて…….。

──行列がすごいサークルの緩衝材として壁に配置されるというやつですね。

向:
 そうなんですよ。そういう感じになって。だから僕はもう島中とか、お誕生日席でもありがたいんです。

──どれぐらい売れているかは配置位置で分かる人は雰囲気分かりますね。

向:
 そうなんですよね。だから「同人やってて儲かってるでしょ?」みたいなことを言われた時に、「いやぁ……」って。

──儲かってはいない。

向:
 しかも、作画をやってくれているのも元々はNSCの後輩で、芸人辞めてプロで作画をやっているワタマツくんとずっとタッグ組んでやっているんですけど、多少ですけど、ちゃんとお金も支払っていますし。元はほとんど取れないです。だから売れる売れないじゃないしなぁと。

 単純に芸人として生のお客さんと対峙する職業なので、その嬉しさは、劇場で笑いとった時に似ているというか、よく即売会でお客さんが歩いてきて、僕なんて全く見ていなくて、「いいですか?」って本を手にとってペラペラ……ペラ……。

 「ください」と。

 この嬉しさ! ペラペラってめくってもらって「ください」の嬉しさって代えられないもので、舞台上での喜びに近いもので、それは堪らないと思ったりしますね。

朝まで生放送明けで、大阪からビッグサイトへ来て並んで入場

──一番最初にコミケに一般で行かれた時って並びましたか?

向:
 どうだったかな…… 多分、その時は物見遊山的なところもあったので、並んではいないですね。その時は並んでいないんですけど、2〜3年前の冬コミの時には、年末に大阪で朝まで生放送の番組に出て、そのままコミケにサークル参加したことが3年連続であったんです。

 手伝ってくれる後輩たちに先に入場してもらって設営は頼んでいるんですが、僕が会場に着くのが、サークル入場の時間がどう考えても終わっているので、一般で並んで入ったんです。なので冬コミはしっかり3回並んで入っています。

 毎年、基本3日間は絶対休みを押さえるんですけど、夏にも前日泊まりの仕事とかがあって、設営してくれる後輩にメールで確認しながら、汗だくになりながら並んで入場したこともあります。それを経験するとまたひとしおというか。

──買いに来てくれたのは、それをくぐり抜けてきた人なんだっていうのがわかりますよね。

向:
 それがわかると、色んなことが腑に落ちだすというか、やっぱりコミケは社会の縮図に近いと思います。僕の考えですけど、要は相手の立場ってどうなの? って分かった時、何でこの人全部読んで買わないんだろう? ということもあるじゃないですか。

──自分も迷った挙句、買わないというのはよくやります。

向:
 結局、このお金でこの本、この予算内で楽しむにはどうするんだ!? この祭の熱にほだされてはいけないと思いながら……。

──多分、並んで入場するかどうかで使う金額も変わりそうですよね。

向:
 変わりますよねぇ。というのが並んだ時に分かったんです。

 だからこそ、「暑い中、すいません」と買ってくれた人に感謝もできるし、でもそんな中、逆に凍らせたお茶とかを差し入れで持ってきてくださる方も居られたり。だから、並ぶべきですよね。そういう意味では。

──並ぶと、しんどいですけど楽しいですよね。

向:
 塩キャンディみたいなの舐めながら、とりあえずタオルで日差しから顔隠しながら、並んでいる人もアチ〜って言いながら、僕は1人でしたけど、友達同士でわいわいやっている感じってなんか、10年後も思い出すでしょうね。

──たとえサークルで入ったとしてもその後、買い物に行くとまた暑いですよね。

向:
 今年も台風一過の後って言いますし、2日目なんですけど、2日目3日目は地獄みたいになるらしいですね。開場後の色んな交流もありますよね。先生方も来ていただいたりとか。

──向さんのお知り合いの先生方も結構いらっしゃる感じですか。

向:
 来ていただきますし、僕も挨拶回りは必ずするようにしています。そこで「お久しぶりです」っていうのも嬉しいですし、僕は単純にその先生方のファンですから。逆にその先生の紹介で来られることもあって、好青年のお客さんと「どうもです」って挨拶していたら、「あらゐけいいちです」って言われて……「ええぇ……ええ!」ってなって。むっちゃ嬉しいじゃないですか。

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