お酒(エタノール)を使って治療される病気とは? メタノール中毒のメカニズムとその治療法について解説してみた
今回紹介したいのは、ニコニコ動画に投稿された『【解説】 お酒(エタノール)を使って治療される病気がある?!【宮舞モカ】』といういわし@超ビビリさんの動画です。
投稿者メッセージ(動画説明文より)
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薬学に関する動画を投稿している薬剤師のいわし@超ビビリさんによると、お酒はとある病気の治療に使えるそうです。

それはメタノール中毒。正確には、お酒ではなくその成分であるエタノールがメタノール中毒の治療に使えるとのこと。
メタノールはアルコールランプの中身として学校で学んだ人も多いですね。このメタノールをアルコールと間違えてしまったり、密造酒の中に含まれていたりなどの事故や事件でメタノールを飲んでしまうとメタノール中毒が起きます。

メタノールの別名はメチルアルコール。目が散るアルコールとも言われるように、視力障害を起こすのが特徴です。重度の場合は死に至ることも。
では、なぜメタノールは目に障害を与えるのでしょうか。

メタノールは体内にあるアルコール脱水素酵素によりホルムアルデヒドへと分解されます。

そしてアルデヒド脱水素酵素によりホルムアルデヒドは蟻酸(ギ酸)へ変換。この蟻酸が神経や細胞のミトコンドリアを攻撃します。


目に強く症状が出るのは、目の網膜にアルコール脱水素酵素が多く含まれるため。本来ビタミンAを代謝して利用するための酵素ですが、そこにメタノールが来てしまうと蟻酸が大量に作られ、網膜が破壊されてしまうのだとか。つまり、最大の問題は蟻酸なのだそう。

この代謝はエタノールも同じ経路をたどります。ただしエタノールは炭素原子を1個多く持つため、代謝物が蟻酸でなく酢酸になります。酢酸はお酢なので体に毒とはなりません。

どちらも代謝にアルコール脱水素酵素を必要とするメタノールとエタノール。そこでメタノール中毒患者にエタノールを投与すると酵素の取り合いが起こり、メタノールから蟻酸への変換を遅らせることができます。これがメタノール中毒の治療にエタノールが使える理由なのだそうです。

といっても、エタノールはメタノール中毒の数ある治療法の1つでしかありません。実際にはエタノールと同様の作用かつより優秀な薬「ホメピゾール」が治療の基本選択肢となるとのこと。エタノールはこの薬が使えない場合のみに使用するそうです。



他には胃の洗浄、炭酸水素ナトリウムの投与、血液透析、葉酸の投与と様々な治療法を組み合わせて何とかしようとするのが中毒の治療だそうです。ここまで取り組んでもなお、残念ながら失明したり死亡することも多いのだとか。
メタノール中毒とその治療の大変さの片鱗を感じることができる本動画。いわし@超ビビリさんの解説の詳細に興味を持たれた方はぜひ動画をご視聴ください。
視聴者のコメント
・なるほどぉ、そうなってたのか
・毒を持って毒を制す
・代謝をゆっくりにすることでギ酸の濃度を弱めるのか
・変なもん作られる前に先に材料使っちまえってことかw
・炭素原子ひとつでエラい違いだなあ
・ここまで持てる手を尽くしてそれでやっと助かるかどうかという
▼動画はこちらから視聴できます▼
『【解説】 お酒(エタノール)を使って治療される病気がある?!【宮舞モカ】』
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