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モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

 今回紹介する、帰ってきたロシュフコーさんがニコニコ動画に投稿した『【ゆっくり解説】モテる人とは?九鬼周造の美学、「いき」の構造を解説!』という動画では、音声読み上げソフトを使用して、魔理沙(きりさめ まりさ)霊夢(はくれい れいむ)のふたりのキャラクターが、「いき」の構造について解説していきます。

投稿者メッセージ(動画説明文より)

【目次】
#0:00 オープニング
#1:18 「いきの構造」の著者九鬼周造
#1:57 「いきの構造」の本の構成
#3:39 いきの内包的構造
#6:25 いきの外延的構造
#9:51 いきの自然的表現
#11:43 いきの芸術的表現
#12:59 エンディング


■「いき」とは何か

魔理沙:
 粋の構造について解説していきます。

霊夢:
 「いき」ってなんですか? あんまり聞いたことがないです。

魔理沙:
 確かに今ではあんまり使われませんね。でもたまに「粋だねぇ」とか言う人いますよね。

霊夢:
 いますね。どんな時に使うのかよく分かりませんが、何か魅力的なものを指して使うイメージですね。

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 いきの構造という本は、かなり昔に書かれた本なんですけど、モテるとかかっこいいとかそういう人間の魅力を考察した美学の本です。

 けっこう言葉が難しくて、現代ではあまり読まれていませんが、書店でも売ってるし、WEBでも青空文庫で無料で読めるはずです。

 この動画の目的は、難しい言葉で書かれたいきの構造の内容をかみ砕いて解説した上で、「いき」とは何かを知ってもらい、これからのあなたのモテライフ参考にしてもらうことです。

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 まず著者についてです。著者は九鬼周造という人です。ざっくり紹介すると、九鬼周造は日本の哲学者で、東大の哲学科を卒業し、ヨーロッパに留学なんかもしたりした。そこでベルクソンと出会ったり、ハイデガーから現象学や実存哲学を学んだそうです。その後帰国し、京都大学で教授をしていたそうです。

 九鬼周造は、「偶然性の問題」とかで難しい思想を展開している。

霊夢:
 なんか哲学者が美学の本を書くのってオシャレですね。

魔理沙:
 おそらく「いきの構造」が九鬼周造の中でも一番有名な作品です。

■いきの内包的構造とは

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 目次は六つに分かれていて、「序説」から始まり、四つの章を展開し、最後に「結論」です。

霊夢:
 内包的・外延的って言葉がよくわからないのですが……。

魔理沙:
 内包・外延という言葉はセットで覚えておきましょう。これらはよく哲学などで「何かしらの記号を説明するとき」に使われる概念です。内包とは、ある記号が持っている共通な性質のこと外延は記号の指す具体的対象です。

 具体例は、「果物とは何かを説明しろ」と言われたとします。その時、「果物は、食用の果実のことで強い甘みを有し、調理せずそのまま食することができるものを指します。」と言えば、それは内包的説明です。

 それとは違い、「果物は、いちご、バナナ、りんご、ぶどう、桃などのことである。」と説明したらそれは外延的説明となります。

霊夢:
 なるほど、果物の持つ性質を言うのが、内包的で、果物を具体的に例示するのが、外延的ということですね。

魔理沙:
 いきの構造では、「いきの内包的構造」と「いきの外延的的構造」という二つの章があります。いきの内包的構造では、いきという表現とはいったい何かを言葉でうまく説明する、この本の一番のメインディッシュだと思えばいいです。

 いきの外延的構造では、いきって表現と、上品とか派手みたいな、いきに関連する表現を比較して、いきの意味内容を外側から明確にしたパートだと思えば良いです。そして、いきの自然的表現では、日常生活に潜むいきなものを取り上げていくパート、いきの芸術的構造では、いきを芸術作品、芸術的な表現に見出すというパートです。

霊夢:
 なるほど、この本が何を言おうとしているかなんとくわかりました。

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 いきの内包的構造では、九鬼はこう定義しています。「いきは、「垢抜して(諦め)、張りのある(意気地)、色っぽさ(媚態)」のことさ。」

 つまり「いき」には三要素あって、媚態、意気地、諦めだと九鬼は言っています。まず媚態ですが、これが一番重要です。九鬼は媚態をこう定義しています。「媚態とは、一元的の自己が自己に対して異性を措定し、自己と異性との間に可能的関係を構成する二元的態度である」

霊夢:
 ちょっと何言ってるか分からない。

魔理沙:
 自己と異性との間に可能的関係を構成するというのは、恋愛対象として見れるとかこの人と付き合えそうみたいな感じですね。もっとはっきり言うと、「こいつとヤレる」って思わせるような雰囲気、それが媚態です。

霊夢:
 まじか、そんな下品な感じなのか。

魔理沙:
 九鬼がいう「いき」はそんな下品なニュアンスではなく、もっと上品です。まぁ男女の二元的な関係性を想像させるようなびたいのある人が「いきな人」ということです。

霊夢:
 言ってることはよくわかります。でも「すぐヤレそうな人」は下品だしあまり魅力を感じないと思いますけど……。

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魔理沙:
 そこで重要なのが意気地です。意気地とは、媚態でありながら尚、異性に対して一種の反抗を示す強みを持った意識のことです。

霊夢:
 つまりどういうことですか?

魔理沙:
 はっきり言ってしまえば、「そんな簡単に付き合わないぜ。ヤラないぜ。」という反抗的な態度。欲望に支配されていないぜって感じですかね。そんな反抗的な態度の中にも異性としての魅力が湧き出ている、これも九鬼のいう可能性の維持ってことですかね。

霊夢:
 なるほど。確かに「誰とでも枕を共にしそうな人」より、「少しガードが堅くて恋愛とか性の執着がない人」の方がむしろそそりますね。

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 お前、結構きもいこと言ってますよ。三つ目が「諦め」です。諦めとは、運命に対する知見に基づいて執着を離脱した無関心のことです。諦めがあると、より大人っぽく見えますよね。

霊夢:
 そうですね。いつまでも非現実的な理想を追いかけている感じの人より、執着から抜け出したクールな人の方が、いきな気がします。

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 ここで九鬼が本の中で実際に言っている表現を引用してみます。「一元化にむけて二元的関係を作り上げながら、一元化の圧力に抗して二元性を維持すること、しかもその理想主義に遊ぶことが「いき」である。要するに「いき」とは、我が国の文化を特色づけている道徳的理想主義(意気)と宗教的非現実性(諦め)との形相因によって、質量因たる媚態が自己との存在実現を完成したものであることができる。」

霊夢:
 やっぱり本文は難しいですね。とにかく「いき」は、媚態と意気地と諦めによってできていることが分かりました。

魔理沙:
 そうですね。いきの構造は異性の魅力を説明したカジュアルな本だけど、哲学者が書いた本だから、やっぱり哲学の専門用語がたくさん出てきますね。ちなみに九鬼によると、「いき」という表現は日本特有らしいです。ヨーロッパにはないらしいです。

霊夢:
 日本特有なんですね。面白い。

 「いき」には、内包的構造と外延的構造の二つの構造と三つの要素からできており、日本特有の表現であることが分かりました。

■いきの外延的構造について

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 つぎに、いきの外延的構造です。いきに似た言葉とか関連する言葉ってありますよね。それらと比較しています。九鬼はそういった関係性を直方体の構造として説明しています。これがその図です。

霊夢:
 ユニークな発想ですね。

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 出てくるのは、「意気:野暮」「甘味:渋味」「上品:下品」「派手:地味」の4対の言葉です。P側の上4つの言葉が「人性的一般性に基づくもの」で、O側の下4つが「異性的特殊性に基づくもの」。つまり異性的でない、単に人間の魅力を表す言葉か、異性的な魅力を表す言葉か、そういう違いです。

 また「対自的」とか「対他的」かという分類もあります。対自的なものとして「意気、野暮、上品、下品」があげられ、対他的なものとして「甘味、渋味、派手、地味」があげられます。

霊夢:
 これはどういう違いなんですか。

魔理沙:
 対自的とは、その中に価値判断を含んでいるような言葉に対して使われます。それと反対に、対他的とは、それ自体価値判断を含まないような言葉に対して使われます。

 意気か野暮かと言われたら、いきの方が価値が高くて、野暮は価値が低い感じがしますよね。それに対して、甘みと渋みみたいな言葉は、「甘いから価値が高い」とか「渋いほうが絶対良い」とは言えませんよね。

霊夢:
 そうですね。甘味も渋味も価値があると一概には言えませんね。

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魔理沙:
 また「O、P、意気、上品でできる長方形」は有価値性を表し、「O、P、野暮、下品でできる長方形」は反価値性を表す。O、P、甘味、派手でできる長方形は積極性を表して、O、P、渋味、地味でできる長方形は消極性を表しています。

霊夢:
 なんだか論理的な分類で面白いですね。

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魔理沙:
 まとめると、まず上下で人性的か異性的かという大きな違いがあり、それぞれ「対自的なもの」か「対他的なもの」に分かれる。対自的なものの中で、有価値的なものが「意気と上品」で、反価値的なものが「野暮と下品」です。対他的なものの中で、積極的なものが「甘味と派手」で、消極的なものが「渋味と地味」です。

 こうして幾何的な構造を想定することで、「いき」に関する言葉がこの直方体の中に配置され、どういう違いがあるのか整理しやすくなります。ちなみに九鬼によると、侘び寂びの寂びという言葉は、意気とPと渋味、上品とOと地味でできる三角柱に配置されるらしいです。

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霊夢:
 確かに、寂びって切ないイメージがあるから派手じゃなくて絶対地味よりですよね。下品であることもあり得ないですし、絶対上品です。

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魔理沙:
 他にも雅という言葉は、上品と地味と渋みを底面としOを頂点にしてできた四面体のうちに位置するらしいです。「きざ」は、派手と下品を結びつける直線上に位置しています。

霊夢:
 きざって下品寄りの言葉なんですね。確かに褒める言葉ではないですね。

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魔理沙:
 このようにある言葉がどこに位置するかを考えるのも面白いですが、ある人間の魅力はどこに位置するかを考えてみるのも面白そうです。例えば、原宿とかにいそうなポップなファッションの人は、甘味と派手の直線上にあるんじゃないかとかですね。

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霊夢:
 私個人の意見としては、みちょぱとゆきぽよの二人を比較したとき、両者とも派手であることは間違い無いですが、ゆきぽよはさらに下品寄りな気がします。

魔理沙:
 なかなか失礼ですね。

 いきの外延的構造は、いきに関係するものを直方体の構造で説明しながら具体的に、そして論理的に分類しています。

■具体的な「いき」とは

魔理沙:
 ここまでの話は、意識現象としてのいきでした。ここからは具体的なファッションだったり美術だったり、客観的な形をとったものを考察していきます。価値意識だけでなく客観的な表現も考察することによって「いき」の構造が明らかになるというわけです。

霊夢:
 まず、いきの自然的表現ですね。

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魔理沙:
 言葉遣いについて、一語を長く引いて発音し、その後急に抑揚をつけて言い切る言い方は「いき」らしいです。次に服装について、抜き衣紋は「いき」らしいです。

霊夢:
 なんでですか?

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魔理沙:
 抜き衣紋は、異性への通路が開かれると共に、その開放が暗示されたものに止まっています。その二重性が開放性を洗練されたものにしている、要はエロいけどあからさますぎずチラッと見える感じがいきってことです。九鬼曰く、西洋のデコルテは野暮らしいです。

霊夢:
 それかなり九鬼の主観入ってませんか?

魔理沙:
 九鬼的には、「いき」は異性への方向をほのかに暗示するものなんです。うすものを身に纏うこともそうらしいです。

霊夢:
 確かに、全裸よりうっすら何か羽織ってるけど身体のラインが出てるほうが興奮するかもです。

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 何を言ってるんですか。あとは、湯上り姿は「いき」です。姿がほっそりしていて柳腰であることも「いき」です。丸顔より細顔が「いき」、流し目、横目、伏目、上目遣いとかも全部「いき」、薄化粧も「いき」。

霊夢:
 全部「いき」という言葉で片付けようとしてませんか。

魔理沙:
 あと素足も「いき」です。特に着物を着ての素足は最高らしいです。九鬼曰く、「着物に包んだ全身に対して足だけを露出させるのは、確かに媚態の二元性を表している。」

霊夢:
 だんだん九鬼の性癖が分かりそうですね。

魔理沙:
 とにかく九鬼にとっては露骨なエロさはいきではなく、野暮なんですね。

 著者の九鬼自身の主観的な癖はともかく、客観的な表現やものを分析することでいきの構造を考察していきました。

■芸術的な「いき」とは

魔理沙:
 次に芸術的表現です。横縞より縦縞の方が「いき」。

霊夢:
 それは意味不明です。九鬼の主観じゃないですか。

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 どうやら、平行線は二つの線が出会わないってことで、そこに「媚態」の二元性が表されているらしい。そして横縞より縦縞の方が平行を知覚しやすい。だから縦縞の方が「いき」ということらしいです。

霊夢:
 なるほど。

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 だから放射状の縞模様は「いき」ではないらしいです。

霊夢:
 いきをそういう幾何学的なものにも見出す九鬼周造面白いですね。

魔理沙:
 そうですね。九鬼は幾何学的な模様がいきだと言っていますね。それに対して、絵画的模様はいきではないと言っています。

霊夢:
 絵画的な曲線を多用する模様より、直線を多用する幾何学的模様のほうがスタイリッシュだしかっこいいなと思います。

モテる人は“粋”である! 昭和初期に書かれた名著から学ぶ「人の魅力」の仕組みを、ちょっとフクザツだけど解説してみた

魔理沙:
 色彩で言うと、グレイや紺色、茶色はいきらしいです。色彩においても複雑なカラーはいきでないです。2色3色にするか、1色で濃淡を使い分けるかして二元性を表現するのがいきらしいです。このように「いき」は色彩とか模様にも見出せる言葉なんです。

霊夢:
 なるほど。だからファッションとかにも通じるんですね。

魔理沙:
 そうですね。例えば服装が上下どっちも黒とかはダサいですし、かといってカラフルすぎるのもダサいですよね。

霊夢:
 そう考えると、いきって現代のモテに結構参考になる言葉ですね

 「いき」にはファッションなど自身の価値判断、そして振る舞い方などを考えさせ、現代でも通ずる本であることが分かりました。

 ふたりの解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

『【ゆっくり解説】モテる人とは?九鬼周造の美学、「いき」の構造を解説!』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm37518529

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