“遅刻を絶対に許さない”異常な校風が招いた死亡事故。学校の隠ぺい体質も話題になった「神戸高塚高校校門圧死事件」を解説
今回紹介する、事故と災害を解説するところさん投稿の『【ゆっくり解説】「遅刻は絶対許さない」強引に校門を閉じる暴力的な校風が招いた悲劇…神戸高塚高校校門圧死事件』という動画では、1990年、兵庫県神戸市で発生した「神戸高塚高校校門圧死事件」について解説を行っていきます。
異質な校風が招いた悲劇
霊夢:
今回は1990年に起きた神戸高塚高校校門圧死事件を解説するわね。
1990年(平成2年)7月6日、兵庫県神戸市西区の兵庫県立神戸高塚高等学校で、同校の教諭、細井敏彦、当時39歳が遅刻を取り締まることを目的として、登校門限時刻に校門を閉鎖しようとしたところ、門限間際に校門をくぐろうとした女子生徒、当時15歳が門扉に頭を挟まれて死亡した事件よ。
魔理沙:
登校時間を過ぎた瞬間に門を閉めるのか? でも目の前に生徒がいたんだろ? 絶対見えてるよな?
霊夢:
そうよ。その瞬間にその場にいたのは亡くなった生徒だけじゃなく、他の生徒も先生もいたのよ。
魔理沙:
ちょっと意味がわかんないぜ。もっと詳しく教えてくれ。
霊夢:
事故が起きた日は午前8時すぎから、3人の先生が校門付近で遅刻指導を行っていたの。そのうちのひとりは、時計を見ながら「4秒前」などと生徒に対してハンドマイクで叫んでいたの。その日は期末テストで生徒たちも遅れないように必死だったと思うわ。
魔理沙:
そんな秒単位でカウントダウンされたら慌てるよな。
霊夢:
午前8時30分のチャイムが鳴ると同時に、教師の細井敏彦は高さ1.5メートル、重さ約230キログラムの鉄製のスライド式の門扉を閉めたの。細井は過去に20数回、校門指導で門扉を閉めていて、生徒の鞄を挟んで押し戻されるなどの経験があったため、校門に入る生徒の列が一瞬途切れたのを見た後、頭部を地面へ向けて勢いをつけて門を閉めたの。
魔理沙:
校門って重いもんな。勢いつけないと閉まらないし、閉まる時にすごい音がするよな。
霊夢:
そうよね。そんな重い鉄の門で駆け込んできた女子生徒が門扉と門柱の間に頭を挟まれたのよ。
魔理沙:
想像しただけで痛い……。
霊夢:
なのに細井は、女子生徒が挟まれたことに気付かず、そのまま門扉を押して閉め切ろうとさらに力を加えたの。現場にいた別の生徒が門扉を押し戻したり叫んだりしたことで、細井は初めて事件に気付いたの。
魔理沙:
どんだけ注意散漫なんだよ。その先生、自分が危険な行為をしている自覚ゼロなんだな。
霊夢:
女子生徒は倒れ、耳と鼻から血を流しながら痙攣していたと目撃した生徒が証言しているわ。
魔理沙:
目撃した生徒たちもショックを受けただろうな。
霊夢:
女子生徒は門扉と門柱の間に頭を挟まれたことにより、頭蓋骨粉砕骨折等の重傷を負ったわ。搬送先の神戸大学医学部附属病院で午前10時25分に脳挫滅による死亡が確認されたの。
現場に付着した女子生徒の血液は、警察の現場検証前に学校により洗い流されていたそうよ。
魔理沙:
は? 普通は事故現場って何も触らず保全するもんだよな?
霊夢:
その通りよ。しかも当日の試験は予定通り実施され、女子生徒を死に至らしめた細井は何もなかったかのように試験監督も務めていたの。学校側は女子生徒の容体を質問した生徒に対して、「重傷だが生命に別条はない」と説明していたの。
魔理沙:
生徒が先生の手で命を奪われたのに、血を洗い流し、平常運転でテストもするし、当事者の先生も試験監督してたっておかしいだろ! あまりにも事態を軽く扱いすぎだぜ。
霊夢:
実はこの高校の校長は、事件発生の前年度に、兵庫県高等学校生徒指導協議会神戸支部長を務めていたの。また、生徒指導部長は同協議会常任委員であったため、管理教育や生徒指導を推進しており、「全教師による校門や通学路での立ち番指導」は協議会で高く評価されていたのよ。
また当時は日本で5校しか採用されていない学校安全に関する「研究指定校」でもあったの。
魔理沙:
いやいや、安全とは真逆の対応だろう!メンツばっかり気にする隠ぺい体質の学校にしか見えないぜ。
霊夢:
文部省はこの事件を「いち教諭と、いち生徒」の問題であり、学校側に何ら問題はないとの認識を示したの。校長、兵庫県教育委員会は文部省の意向を受け、教員個人の責任を主張。
刑事裁判では細井の過失を認定したものの、学校側の責任や管理教育の是非については触れられなかったわ。また、あたかも細井ひとりの責任であるかのような報道もあったんだけど、生徒数が増加し、管理教育が漫然と行われて発生した事件であり、会に大きな影響を与えたのよ。
魔理沙:
なんかトカゲのしっぽ切りって感じだよな。そりゃもちろん先生に問題はあるけど、それをやらせていた学校もおかしいだろ。
霊夢:
本当にその通りね。でも細井もただのトカゲの尻尾ってわけでもないのよ。細井は事件当時3学年の副主任として、3学年の風紀指導の中心的役割を担っていたの。
また高塚高校に赴任する前に西脇工業高校や松陽高校でも、日常的に体罰を繰り返し、松陽高校の野球部顧問をしていた時には野球部員に暴行を働いて傷害事件を起こし、罰金5万円の略式命令を受けていたんですって。
魔理沙:
当時は先生が生徒に暴力を振るうことも今よりあったんだろうけど、警察沙汰になるってよっぽどだよな。
霊夢:
そうね。あまり聞かないわよね。そしてそんな事件を起こしても別の学校で何食わぬ顔で教師を続けられるんだから、教育委員会も何を考えていたのやら。
魔理沙:
昔の学校ってなんか怖いよな。生徒たちを暴力で押さえつけたり徹底的に管理して威圧的だぜ。
霊夢:
みんながみんなじゃなかったと思うけど、ここの学校は異様な感じがするわよね。生徒の保護者や犠牲になった女子生徒の親族への対応も本当にひどくて、関連動画を見ていたら腸が煮えくり返ってくるわよ。
魔理沙:
そうなのか。学生時代って学校や先生の影響って大きいから、被害に遭った子はもちろん、他の生徒たちも可哀想だよな。
霊夢:
この学校は遅刻した生徒に校庭を2周走らせたり、スクワット系の柔軟体操を数十回やらせたりして、8時35分の出席確認に間に合わないように生徒に懲罰を与えていたの。
理解できないことは他にもあるわよ。この学校の女子生徒は、生理のときもプールの授業を休ませてもらえなかったの。
魔理沙:
それって虐待じゃねえか!
霊夢:
いまじゃ考えられないわよね。事件の後、7月20日に全体保護者会が行われたんだけど、冒頭で司会の先生が、保護者会は非公開なのにマスコミに内容が流れて生徒がひどく困っているとマスコミを批判。
また要望があれば録音は後日聞くことができると発言していたにも関わらず、兵庫県は録音テープは公文書の公開等に関する条例において公開の請求の対象にならない。
会議の内容を録音したテープの反訳書および全体保護者会の会議録は初めから存在しませんと説明し、高校は録音テープを処分してしまったのよ。
魔理沙:
でた! またもや隠蔽だな。
霊夢:
でも実はPTAがテープを保管していたの。音声が公開されたのは、なんと事件から8年後のことだったのよ。
そして悲しいことに、被害生徒は真面目な生徒だったのに、遅刻の常習犯だったとか、あらぬ噂が立ち、ご遺族の元に「遅刻する方が悪い」、「自業自得だ」などといった心ない手紙や電話が届いたりもしたの。
魔理沙:
いったいどういう心理でそんな手紙書いたり電話かけたりするのか理解できないぜ。責められるべきは学校や教師のほうだろう。
霊夢:
学校関係者や細井への処分について説明するわね。兵庫県教育委員会は7月26日、細井を懲戒免職処分、また管理責任を問い、当時の校長を戒告、教頭と教育長を訓告、教育次長2名を厳重注意とする処分を行ったの。
でも校門を閉めようと言い出した教員や、生活指導部長に対しての処分はなかったわ。また、校長から出されていた辞表を同日付で受理したの。細井はその後、懲戒免職処分を不服として申し立てを行ったの。
魔理沙:
過去にも暴力事件を起こしていて、今度は生徒の命まで奪っておきながら申し立てをするなんて、どこまで図太い神経の持ち主なんだ。
霊夢:
図太さは刑事処分の過程でも垣間見られたわ。7月21日に兵庫県警察による実況見分が行われ、その結果、門扉はヘルメットが割れるほどの速度で押されていたことが分かったの。
生徒が集団で登校しているのに、細井が勢いよく門扉を閉めたこと、細井は過去にも門扉で生徒のスカートやカバンを挟んだことがあることなどから、細井は門扉を閉めることの危険性を把握しながら、安全を十分確認しなかったことが明らかになり、業務上過失致死の容疑で取り調べられたの。
魔理沙:
ヘルメットが割れるほどって、そんなすごい力で圧し潰されたのか。
霊夢:
細井は業務上過失致死罪で神戸地方検察庁に送検され、起訴されたわ。
刑事裁判では細井は「門扉の閉鎖は教員3人で行う共同作業であり、安全・合理的な方法。学校から安全面の指導や注意はなく、業務性はない。わずかな隙間に生徒が頭から走り込んでくることは予見不可能で、過失責任はない。十分な安全策もなく、教師に校門指導をさせた学校に責任があり、誤った教育理念を押し付けた学校管理者や兵庫県教育委員会、文部省の責任が問われるべき」などとして、無罪を主張したの。
魔理沙:
恐ろしいほどの責任転嫁だな。
霊夢:
神戸地方裁判所は1993年(平成5年)2月10日、「門扉の閉鎖は反復・継続して行う行為であり、その重量、構造から登校時に閉鎖することは、門扉を生徒の体に当てるなどして身体に危害を与える恐れがあり、教務上過失致死罪の業務にあたる」とした上で、「生徒が制裁などを避けるため、閉まりかけの門に走り込むことは予測できた。
他の当番教師との安全面の打ち合わせはなく過失があった」と、神戸地方検察庁の主張をほぼ認める形で、細井に禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡したわ。
細井は「判決には不服だが、自身や家族の心労を考えて控訴しない判断をした」として、大阪高等裁判所に控訴せずに有罪が確定判決となったの。
魔理沙:
執行猶予ってことは、実刑にもならず、そして最後まで無罪を主張して「判決には不服だが、自身や家族の心労を考えて控訴しない判断をした」って、全く反省してないし、自分達の事しか考えてないんだな!
霊夢:
判決は細井の過失を認める一方で、「被告個人の刑事責任とは別に、生徒の登校の安全に対する配慮が足りなかった」としたんだけど、学校が当時、遅刻者に校庭を2周走らせるペナルティを課していたことや、生徒を家畜呼ばわりする言葉の暴力の容認、女子生徒が生理の日でも水泳をさせられることへの人権蹂躙、管理教育の問題が事件の背景にあったことや、校門での遅刻指導を始めたころは5人体制だったのに、3人に減らされてしまったことについては言及を避けたのよ。
魔理沙:
家畜呼ばわりって、学校だよな? これ牧場じゃなくて学校で起きてたことなんだよな?
霊夢:
有罪確定に伴い、教育職員免許法に基づき細井は教員免許の欠格事由に該当し、細井が起こしていた懲戒免職不服申し立ての審理は中止されたの。
魔理沙:
当然だぜ。
霊夢:
でもよほど納得がいかなかったみたいで、細井は有罪確定直後の1993年(平成5年)4月に、この事件を題材とした本を実名で出版し、「警察的な校門指導を正義だと思っていた」と述べていて、基本的には自らの行動に問題はなかったという姿勢を貫いているわ。
魔理沙:
は? 一方的に言いたいこと言って、さらに金儲けでもしようっていう魂胆か?
霊夢:
学校は事件現場となった校門の門扉を事件直後に撤去しようとしたんだけど、「事件の風化を図っている」などとして、保護者や一部住民らが反発したの。また「判決前の撤去は好ましくない」とする裁判所の意見を受けて保留したんだけど、細井の有罪確定を受けて、再び校門撤去を進めたのよ。
撤去後の門扉を溶解工程に回すことなどの決定が、PTAや保護者に説明することなく記者会見で明らかにされて、保護者や住民らは反対したんだけど、1993年(平成5年)7月30日に小競り合いの中で撤去されて、従前よりも小型で軽量な門扉が設置されたの。
魔理沙:
この画像の看板、「歩道へまわりなさい」って書いてあるけど、普通は「歩道へ回りましょう」じゃないのか? どこまでも威圧的だな。
霊夢:
ほんとね。語尾や言葉遣いって心の中が現れるものね。事故を起こした門扉は撤去されたけど、その後も亡くなった女子生徒の死を悼む門前追悼は続いていて、事件から30年目の2020年7月6日には、大雨の中、門前追悼のため高校の卒業生や当時の教員他、多くの人が集まり、たくさんの花が手向けられたわ。30年という節目の年でもあり、マスコミも駆けつけて大きく報道されたの。
魔理沙:
みんな何十年たっても忘れてないんだよな。こんな悲しい事件、忘れられないよな。
霊夢:
そうね。この事件はとても悲しい事件で、時間が巻き戻せるのならば、女子生徒が生きていられた未来になって欲しいけど、この事件がきっかけで日本の教育現場は大きな変革を求められ、子供たちへの先生の対応が見直される転機であったとも言えるわよね。
魔理沙:
うん。辛くて悲しい事件だったけど、彼女の犠牲が日本の学校や先生日本中のたくさんの子供たちの学校生活に与えた影響は大きいよな。
まさに学校の腐敗を象徴するような胸糞事件でした。より詳しい解説をノーカットでご覧になりたい方は、ぜひ動画をご視聴ください。
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