5分で分かる“ピクサー映画”の特徴「泣くタイミングが用意されてる」「実はブラックジョークが大盛り」
言葉を発さずに感情を伝える「エモーションの視覚化」
マクガイヤー:
あとは例を挙げるときりがないんですけど、『アーロと少年』というのは動物と人間がセリフなしで心を通わせるということで、決め決めのカットでやっている。夕日をバックに、みたいな。
しまさん:
劇画調のね。感動しないわけがないと。
マクガイヤー:
これだけで、終わりにしてもいいなんじゃないかと。『ウォーリー』とか、あと『カールじいさん』の最初の方がセリフなしでなんとか、「エモーションの視覚化」というのをに意図してやっていて、たぶんそこが、ピクサーの秘密というか、大事にしているところだと思います。
マクガイヤー:
つまりセリフとか理屈ではなく、映像で感動させる。
しまさん:
なるほど。この画を見て格好いいと思わないはずがない! みたいな。
マクガイヤー:
というか、この画には、こういう意味があって、だから感動するんだみたいなのがあって『トイ・ストーリー3』とかその辺りがいびつになってるというか、なんかヒドイなというのがあるんですよね。『トイ・ストーリー』の最後、ウッディがアンディをすごく長く見つめる場面とかあるじゃないですか?
しまさん:
あるね。
マクガイヤー:
「ここで泣いてくれ」みたいなのがあるんですよね。まあ、それでちょっと泣いちゃうんですけど。泣き待ちみたいなのがあるじゃないですか?
しまさん:
はい、泣いた。みたいな。
マクガイヤー:
そうです、「はい、みなさん、ここで泣きましょうね。」みたいなのがあり、しかも、そこで今までの蓄積があるから、ウッディが、「ああ。」みたいな。そして、カメラが引いていくと。それをすごく長くやっていて、はい、ここで泣きましょう。みたいな場面があって、ヒドイ!
しまさん:
なるほどね。そこも計算づくなのかなという。
マクガイヤー:
そう、それは計算づく。ヒドイ場面がいっぱいあって。だからですね、押井守が「全ての映画はアニメになる」と言っていましたけど、ピクサーの監督が実写映画の監督をするっていうのも、何度かあるようになってきました。
しまさん:
そういうこともあるんですか。
マクガイヤー:
有名なのは「ブラッド・バード」で、彼はもともとピクサー生え抜きというわけじゃなくて、『アイアン・ジャイアント』や『シンプソンズ』などの監督をしていて、人が足りないからということでピクサーに呼ばれたんですけど、この『ミッション・インポッシブル』の監督をしています。これ『アイアン・ジャイアント』というアニメがあるんですよ。
しまさん:
そうなんだ。これはそのアニメのキャラクターで監督と。
マクガイヤー:
ただピクサーみたいにプロモーションがうまくなかったんで、そんなに売れなかった。
しまさん:
全然、知らないもんね。
マクガイヤー:
でも、これは知る人ぞ知る傑作。やっぱりブラッド・バードは「おっさんになってしまった我々」みたいなのがテーマなので、おっさんは必ず泣いちゃう。
しまさん:
なるほどね。
マクガイヤー:
あとは、『ファインディング・ニモ』、ドリーの監督もしてるアンドリュー・スタントンがジョン・カーターという映画の監督もして、大失敗したりしました。
しまさん:
あっ、大失敗したりもしてるわけだね。
マクガイヤー:
このジョン・カーターはもともとすごい有名な小説なんですよ。火星を冒険する小説。『スター・ウォーズ』とかにも影響を与えたりとかしてて、それが満を持して映画化したら本当に面白いんだけど別にあんまり新しくなかったっていうことで。
しまさん:
これだって、アニメなの?
マクガイヤー:
これはCG映画。
しまさん:
CG映画、ああそうですか。
マクガイヤー:
別にジョン・カーターの映画化として見たらすごいよく出来てるんですけど、みんなもう『スター・ウォーズ』とか『ロード・オブ・ザ・リング』とかで、さんざんやってきた感じだったんで。
しまさん:
なぜ今ジョン・カーター感が。
マクガイヤー:
やりたかったんでしょう。しかも、これディズニーが配給とかしてます。すごくよくできてたんですけど、ちょっと残念でしたね。
しまさん:
誰も知らんね、これね。
マクガイヤー:
いや、これ面白いですよ。だから2、3、原作は7とか8とかまであってジョン・カーターの息子とか出てきて。
しまさん:
ジョン・カーターというの地味じゃない? しかも、なんか田中康夫みたいな感じで。
マクガイヤー:
そうですね。それは意図してそうしてるのかもしれないですけど。これは西部劇時代の軍人がもう地球ではダメだけど火星に行ったらものすごく力を発揮するっていう、のび太の宇宙開拓史みたいな話です。
しまさん:
(笑)。
マクガイヤー:
『のび太の宇宙開拓史』は、ジョン・カーターを元にしてますんで。