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宮本佳林「ミクちゃんが歌ったら私たちの仕事なくなっちゃうじゃん」。アイドルゆえの葛藤を抱きつつ、苦しい時期に自身を奮い立たせてくれたボカロ曲たち

 初音ミクの初版から今年で16年、留まることを知らないボーカロイドの人気。今やメジャーシーンにも進出しているボーカロイド楽曲だが、そのファンは著名人にも多い。

 そんなボーカロイド好きの著名人にプレイリストを作成してもらい、それを元にインタビューを行う本企画。今回はJuice=Juiceの元メンバー、現在は歌手として活動している宮本佳林さんが登場。自身が選んだ「センチメンタルな時のプレイリスト」の選曲理由や彼女にとってのボーカロイドの存在について語ってもらった。


「ボカロにはボカロの良さがある」。アイドルゆえの葛藤もあったボカロとの出会い

──まずはボカロとの出会いを教えてください。

宮本:
 中学生くらいのときにニコニコ動画を見るのが好きだったんですが、ボカロの楽曲がランキングに入っていたのがきっかけで見つけて、聴くようになりました。

──ボカロを知った最初の頃に出会った楽曲というと、どんなものがありますか?

宮本:
 最初に見たのは猫虫Pさんの「繰り返し一粒」だったと思います。オリジナルバージョンではなく、歌い手さんが歌ってるのを聴いたのが最初だったかな。それから原曲を聴きました。あと多分ご本人がやってらっしゃるわけではないと思うんですけど、「繰り返し一粒」のミクちゃんバージョンとリンちゃんバージョンがマッシュアップされている音源を聴いたんです。それにすごく驚いたのが、ハマるきっかけのひとつでした。

──歌い手のバージョンを聴いたあとにボーカロイドが歌うオリジナルを聴いた際、ボーカロイドの歌声に驚きや違和感もあったかと思います。最初ボカロの声を聴いたときはどんな印象を受けましたか?

宮本:
 私もアイドルとして活動していたので、最初は「ミクちゃんが歌ったら私たちの仕事なくなっちゃうじゃん」という気持ちがあったんです。でもニコニコ超パーティーの映像を見たりするようになって、「これすごくない?初音ミクちゃんってかわいいな」と思うようになって。なので最初は自分の中でも「自分は生で歌を披露して好きになってもらっているのに、これを好きって言っていいのだろうか」みたいな気持ちがあったんですけど、ボカロにもボカロの良さがあるんだなと気付いてから好きになりました。

歌詞を自分に置き換えることで奮い立たせてくれるボカロ曲たち

──今回のプレイリストのタイトルは「センチメンタルな時のプレイリスト」。このテーマにした理由はなんでしょう?

宮本:
 中高生のとき、いろんなことに悩んで苦しかった時期に救ってくれた曲がすごく多いんです。好きな曲を挙げてくださいと言われると、明るくてポップな曲よりもちょっと苦しみが描かれている曲が多かったので、今回はそういう内容にしました。

──プレイリストのテーマを決めたとき、あるいはプレイリストを作ることになったときに最初に思いついた曲というと?

宮本:
 絶対に入れたいなと思ったのは「magnet」です。歌詞では同性愛が描かれているのですが、作品の中で同性の恋を描くとき、結構ドロドロしたり苦しい感じになることも多いと思うんです。でもこの曲はひとつの芸術作品みたいに聞くことができるのが素敵だなと思っていて。人が歌っちゃうとその人の感情が見えて苦しい感じになるのかなと思うんですけど、この曲は機械のボーカロイドが歌っていることで感情移入しやすい気がするんです。自分の中ですごいなと思っている曲なので、この曲は入れたいと思っていました。

──プレイリストのコメントには「上手くいかなかった帰り道におすすめ」とありますが、宮本さんが聴いて実際に救われた経験のある曲というと、どんなものがありますか?

宮本:
 やっぱり中学生とか高校生のときってメンバー以外に友達を作る時間も機会もなくて、親にも中々相談しにくい思春期みたいな時期でもあったんです。そういった部分で、「再教育」の〈「助けてくれ」の声を孤独の盾で塞いだ〉という歌詞には共感しました。自分としても、自分自身が孤独であることで救われている、強くなれている部分もあるなと思ったんです。それを実感して、明日も頑張ろうと思えた曲です。

──そうだったんですね。

宮本:
 他には「透明エレジー」とか。自分にとって大切な子が自殺してしまうという歌詞なんですけど、この主人公の感じているつらさは今の自分が経験しているつらさとは比べ物にならないと思ったんです。そう感じたとき、「この子は自分よりつらい思いに耐えてるんだから、自分ももっと頑張らないといけない」と感じました。

 あとは「地球最後の告白を」にも救われました。主人公の男の子が不老不死になっちゃって、好きな子に告白できなかったけど誰もいなくなった今地球最後の告白をするというすごく壮大な話なんですよね。そのくらい一途にその人だけを愛せるのってすごいなと思いましたし、私自身も活動に対して一途に頑張っていかなきゃいけないとすごく感じたんです。自分に置き換えて頑張ろうという気持ちにさせてくれた曲ですね。

──歌詞を自分に置き換えて、奮い立たせるんですね。

宮本:
 そうですね。私は壮大で絶対人間界にありえないような設定のお話が好きなので、そういう設定に自分を置きたくなっちゃうんだと思います(笑)。

──落ち込んだときは背中を押してくれる応援ソングよりも、今回挙がったようなニュアンスの曲を聴くことが多いですか?

宮本:
 そうですね。明るい曲って、落ち込んでるときに聴くと更に落ち込んじゃうんです。「こんなにこの主人公は明るく頑張ってるのに、自分は明るく頑張れていない……」みたいな。

──そうなんですね。普段生活の中ではどんな時間にボカロ曲を聴くことが多いですか?

宮本:
 お仕事に行くまでの時間に聴くことが多いですね。新しい曲も知りたいのでボカコレの曲も聴いたりしますし、原点に戻って今回挙げたような楽曲を聴いたり。ボカロを聴き始めた当初聴いていた、島爺さんとか+α/あるふぁきゅん。さんの歌ってみたを聴くこともあります。あとはDECO*27さんの曲がすごく好きなので、DECO*27さんの新曲は絶対チェックしています。

──プレイリストにはDECO*27さんの「モザイクロール」が入っています。数あるDECO*27さんの楽曲の中でこの曲を選んだ理由というと?

宮本:
 これは私が最初に好きになったDECO*27さんの曲だと思うんです。DECO*27さんの曲って、サビの中毒性がすごい曲があるのに、さらっと聞こえるんですよ。この曲も格好いいロックな曲なんですけど、よく聞くとちゃんとドロドロしているというか。それが不思議で感動した曲だったので入れました。

──これまでのお話で既に出たかもしれないですが、宮本さんの中で一番思い入れが強い曲、好きな曲というとどの曲ですか?

宮本:
 「繰り返し一粒」ですかね。今聴いても結構グサッとくるんですよ。恋愛模様を歌っている曲なんですけど、〈代わりはいくらでもいたんだって気付かれた人形は即退場〉の歌詞とかは、旬があると言われているアイドルとしても「確かにな」と思う歌詞なんです。恋愛模様として聞いても、私みたいな人が聞いても通じるところがあるのですごいなと思いますし、この曲はずっと好きな曲ですね。

みんながボカロの発展を望んでいるのも魅力

──最近は若いボカロPも次々と頭角を現していますが、宮本さんが最近注目しているボカロPはいますか?

宮本:
 もう有名すぎてお名前を出すのも申し訳ないですけど、Kanariaさんは結構最近ですよね。「エンヴィーベイビー」と「KING」を自分でマッシュアップしている動画もありましたけど、めちゃめちゃかっこいいなと思って。しかも聴いたらKanariaさんだとすぐに分かるくらい自分の色を持っているのも格好いいなと思います。

──宮本さんご自身はボカロ曲を作ってみたいと思われたこともあるんですか?

宮本:
 高校生くらいのとき、曲を作れるようになりたいと思ったことがあったんです。自分が体調を崩してしまったときに声が出なくなっちゃって、DTMをやっていた時期があって。でもボーカロイドに歌わせたいと思うほどの曲を書くことができなかったんですよね。曲が作れるようになるまでは絶対にボカロは迎え入れないという気持ちで向き合ってるんですけど(笑)。

──いつか曲ができてボカロPデビューされることを楽しみにしています。改めて、宮本さんが感じるボカロの魅力を教えていただけますか?

宮本:
 私は歌手として歌を発信している身ですけど、ボーカロイドの曲は作った本人がどういう活動をしているかといった背景がないからこそ感情移入しやすいと思いますし、それが魅力的だなと思っています。応援ソングとか明るい曲もありますし、私みたいに暗い曲で元気になる人もいると思うので、いろんな形で皆さんのもとに届いて更にボカロの文化が広がっていけばいいなと思いますね。あとはボカロの文化が広まってほしいとみんなが思っていることも、ボカロの良さだと思うんです。なので今後も日本のみならず海外も含めていろんなところで広まっていけばいいなと思います。


Information

「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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