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一晩寝かせたカレーで食中毒? 幼稚園のイベントで園児を含む70名が被害にあった集団食中毒を振り返る

 今回紹介する動画は、ニコニコ動画にゆっくりするところさんが投稿した『【2017年】意図せず作ってしまった”猛毒カレー”児童70名が突然苦しみだす事態に…二日目のカレーに潜むリスク【ゆっくり解説】』。
 幼稚園で作ったカレーによる集団食中毒について、音声読み上げソフトを使用して解説しています。


■1日寝かせたカレーから大量の菌を検出

魔理沙:
 今回紹介するのは、ある食品で起きた食中毒の事例だ。

霊夢:
 最近急に熱くなってきたし、時期的にちょうどいい話ね。

魔理沙:
 そうだな。一般的に食中毒は、気温や湿度が高い時期に増殖しやすく、毎年全国各所で、誤った食品の保管や、それを喫食したことによって食中毒が起きている。
 この病気は激しい腹痛や下痢、時には下血や脱水症状など、重篤な症状を引き起こす場合もあり、今回も例によって、その紹介の一部でショッキングな表現をせざるを得ない部分がある。

霊夢:
 食中毒は身近なものだけあって、事故とか事件よりもある意味怖いものよね……。でも知って置いたら防げることもあるかもしれないし……。

魔理沙:
 それじゃ早速本題に入るんだぜ。
 2017年。我が国の本州、関東地方の某都市にある私立幼稚園。この幼稚園は教員10名、園児70名ほどを抱える、地域では比較的大きな施設で、この日、小さなイベントが行われていた。それは、園児たちがカレーを作るというもの。

霊夢:
 へぇ、幼稚園でもそんなことやるのね。

魔理沙:
 カレー作りと言っても、かなり安全に配慮された、簡略化された調理だけどな。この幼稚園には、給食の調理施設はなく、普段は園児たちが各自弁当を持参していたが、「年長組を送る会」が催され、会の昼食として、園児たちが作ったカレーを食べる、といったイベントがあった。

霊夢:
 調理施設がないって、どこで作ってたわけ?

魔理沙:
 このイベントは、隣接する系列小学校にあった給食施設を借り、教員たち指導のもと、園児たちによって作られていた。

霊夢:
 ふむふむ。

魔理沙:
 この時作られていたカレーは、味をなじませるために1日保管され、その翌日、年長組を送る会の昼に提供された。

霊夢:
 あぁ~、カレーってなぜか1日寝かせると美味しくなるのよね。

魔理沙:
 送る会の当日。時刻は正午になり、全ての園児たち、そして教員たちに、カレーライスが配膳され、昼食がはじまった。

霊夢:
 おっ昼! おっ昼!

魔理沙:
 1日寝かせて味がマイルドになったカレーは非常に美味で、園児たちは喜んで、このカレーの味に舌鼓を打った。その後、午後も送る会は順調に進行し、そろそろ園児たちを各家庭に送り返す時間になったころ。突然、数名の園児たちがお腹を押さえて泣き出し、腹痛を訴えはじめた

霊夢:
 えっ……。

魔理沙:
 次々に他の園児たちも、腹痛や吐き気を訴え、中にはその場で漏らしてしまう子まで現れた。そして、それらの症状は園児だけではなく、教員らにも表れ、施設の責任者は、集団食中毒が起きていると判断。

霊夢:
 しょ、食中毒……!

魔理沙:
 直ちに救急車を手配し、園児たちは近くの病院へと搬送されていった。

霊夢:
 しゅ、集団食中毒って……カレーが……。

魔理沙:
 搬送先の病院で、園児たちを担当した医師は、一度に数十名もの大量の患者が運び込まれてくると、集団食中毒、もしくは感染症を疑い、直ちに保健所に通報。
 医師たちは患者の検査、そして輸液措置などを行い、しばらくすると、保健所職員が現場に到着。

 すぐに調査が行われた。検査結果、そして園に残されていたものなどから、園児たちを襲っていた、症状の原因が判明した。

霊夢:
 やっぱりあのカレー?

魔理沙:
 ああ。患者の体、そして数時間前に食べていた、あのカレーからは、どちらからも、大量の食中毒菌が検出された。その菌は、「ウェルシュ菌」という食中毒菌。

 これは自然界の土壌、水中、動物の腸管などに広く分布し、健康な人間の体にも、一定量は存在している、言ってみればどこにでもいる細菌だった。
 通常、健康な人間から検出されるウェルシュ菌は、非・病原性のものであり、体内にあったとしても、健康に害を及ぼすことはない。

霊夢:
 普通にいる菌なのに、どうしてこんな症状を引き起こすわけ?

魔理沙:
 どこにでもいるこの細菌だが、嫌気性という、酸素を嫌う性質の細菌の一種で、大気に曝されると死滅してしまう。しかし、その一方で酸素のほぼない、もしくはとても少ない場所にいると増殖を始める。

 また、摂氏12度から、50度の環境が最も増殖しやすく、「芽胞」という、熱に非常に強い膜をつくるため、例え摂氏100度の環境で、6時間ほど過熱されたとしても、死滅することが無い

 今回の食中毒の原因となったカレーは、味をなじませるために、調理してから24時間以上、大きな鍋に入れられた状態で、常温保存されていた。この時期は3月の初頭だったが、加熱調理済みの大量のカレーを、常温で放置するのはかなり危険な行為だった。

霊夢:
 で、でも、作ったカレーを鍋のまま1日置いておくくらい、どこの家庭でもやってることじゃないの? どうしてこの幼稚園でだけこんなことが……。

魔理沙:
 先述したように、ウェルシュ菌は土や水、そして動物の腸など、自然界に広く生息している菌だ。特に、鶏や牛、魚などについていることが多く、食材となった状態でも表面に付着していることが極まれにある。

 ウェルシュ菌は、水洗いでほとんど洗い流せる細菌だが、それが不十分だった場合、付着していたウェルシュ菌が、調理後常温保存される中で増殖し、それを食べることで、食中毒症状を発症する場合もある。

 どの食材に、きっかけとなるウェルシュ菌が付着していたのかは定かではないが、調理済みのカレーを、1日以上常温保存してしまったことによって、食中毒を起こしていたのは間違いなかった。

霊夢:
 そっか……熱に強いから、次の日に温めてたとしても関係なかったんだ……。

魔理沙:
 ああ。加熱調理によって、他の熱に弱い菌はなくなっていたかもしれないが、ウェルシュ菌だけは全くと言っていいほど減っていなかったんだろう。これは土壌にも存在する菌なので、泥付きの野菜などの洗浄が不十分だと、食材に混入してしまうこともあるしな。

 ある程度ならば、体内に入ったとしても、食中毒の症状が出ないことが多いが、大量に体内に取り込んでしまうと、人間の消化器官の中で増殖し、その際に毒素を発生させ、腸内の粘膜を破壊する。

 この働きのせいで、激しい腹痛、下痢を引き起こす。そして、保健所が検査を行った時点で、あのカレーの中には、冷蔵保存した場合に比べて、ウェルシュ菌の数がなんと1万倍近くになっていた。

霊夢:
 イヤアアアアアアアアアア!!!!

魔理沙:
 酸素の少ない、どろどろとした常温のカレーの中は、ウェルシュ菌にとって、増殖するのにうってつけの環境だったんだ。
 また、ウェルシュ菌による食中毒症状は、通常潜伏期間6時間ほどを経て発症するが、食べていたのがまだ免疫力や抵抗力の高くない子供だったため、食後約2時間程度で発症してしまっていたと考えられた。

霊夢:
 2日目のカレーっておいしいのに、まさかこんなリスクがあるなんて……。

魔理沙:
 確かに、作ってから1日程度寝かせたカレーは、野菜などから水分が出て、酸味がマイルドになったり、うまみが際立つと言われている。
 しかし、その保管方法を誤ると、今回のように食中毒菌が大量に増殖してしまう可能性があり、実はリスクもある保管方法なんだぜ。

霊夢:
 予防するにはどうしたらいいわけ? 寝かせたらだめなの?

魔理沙:
 いや、比較的安全に寝かせる方法はある。仮にウェルシュ菌が少量ついていたとしても、この菌は低温環境下では増殖スピードが非常に遅くなるので、調理後に粗熱を取ったら、冷蔵庫、または冷凍庫で保管することで、菌の増殖を抑えることができる。
 常温保存では、約1万倍に増殖していたのに対し、冷蔵保存では、10倍程度しか増殖していなかったという実験結果もある。

霊夢:
 そんなに違うんだ……。

魔理沙:
 この菌が増殖する、摂氏50度辺りになっている時間を如何に短くするかというのが重要だな。なので、カレーを作って保存しておきたい場合は、調理後にタッパーなどの小分けできる容器に入れ、粗熱を取ったら、すぐに冷蔵、もしくは冷凍してしまうのが最も安全な保管方法だろう。

 このとき、中心までしっかりと熱を取っていないと、冷蔵庫に入れても中で増殖したり、熱い状態で冷蔵庫にいきなり入れてしまうと、他の食品に影響を及ぼす可能性があるので、しっかりと粗熱を取ってから入れるようにしよう。

霊夢:
 ついつい入れちゃいそうになるのよね……。

魔理沙:
 そして、再加熱した後は、すぐに喫食すること。たとえ1度冷凍、冷蔵したとしても、ウェルシュ菌が完全に死ぬわけではない。増殖しやすい環境下に置かれれば、再び増殖を始めてしまうからな。

霊夢:
 そういうことだったんだ……。1日常温で寝かせたカレーでも、またしっかり火を通せば、食中毒の心配はないでしょって思いがちだけど、そんなことなかったのね……。

魔理沙:
 昔に比べると、菌の入る可能性のある肉などは、加工・製造・販売の流通過程での衛生管理が徹底されており、基本的には食中毒になる危険性はかなり低くなってきてはいるが、消費の段階で、さらに適切に調理、保管を行えば、より食中毒のリスクを下げることができるので、消費者の意識や知識も大事なんだぜ。

霊夢:
 確かに……お店で売ってるものに菌が付いていなくても、どこにでもいる菌なら、もしかしたら調理過程でついちゃうかもしれないし、家庭でも気を付けないとこういうことになる場合があるのね……。

魔理沙:
 以前紹介した、セレウス菌の場合は、米を使った料理、チャーハンやピラフなどを、常温で保存することによって発生しやすいものだったが、今回の原因となったウェルシュ菌は、カレーやシチューといった、中に酸素が入り難い料理で増殖しやすいので、作る時は野菜をしっかり洗ったり、調理後は速やかに冷蔵、冷凍したり、対策をとった方がいいだろう。

 また、家庭ではあまりこういったケースはないかもしれないが、どうしても料理を冷やして保存できない場合は、60度以上を保ち続ければ、菌の増殖を防ぐことができる。これは飲食店でとられる食中毒対策の1つなので、一般家庭ではあまり関係のない話だけどな。

霊夢:
 あ、そういえば食べ放題とかで、カレー鍋が温められた状態で置かれてることあるわね。

魔理沙:
 食中毒はこのウェルシュ菌のほかにも沢山あり、ほとんどの場合、気温や湿度が高い6月から10月にかけてリスクが高くなる。この動画が投稿されているのは5月だが、気温も高くなり、もうすこしで梅雨の時期になり、食中毒のリスクが高まる時期に入るので、こういった事例を知ったら、同じような状態にならないようにしたいものだな。

霊夢:
 そうね……。カレー大好きだし、とても他人事だと思えないから、私も気をつけなきゃ……。

魔理沙:
 そうだな。特にキャンプなどでカレーを作る場合は、なるべく作った後にすぐに食べきったほうがいい。

 

 今回はカレーを1日以上常温保存したことでウェルシュ菌が増殖し、食中毒が発生してしまいました。ウェルシュ菌が入らないようにする、保存の際は温度に気を付けるなど対策したいとことです。
 この解説をノーカットで聞きたい方はぜひ動画を視聴してみてください。


▼動画はこちらから視聴できます▼

【2017年】意図せず作ってしまった”猛毒カレー”児童70名が突然苦しみだす事態に…二日目のカレーに潜むリスク【ゆっくり解説】

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