実写と線画が交わるMVが心に残るボカロ曲『まどの景色は』知声の繊細な歌声に「ぴったりすぎる」「すき」の声
今回は、濁茶さんが2月23日に投稿した「まどの景色は」を紹介する。
新進気鋭のボカロPによるコンピレーションアルバム『合成音声のゆくえ』のために書き下ろされた、音声創作ソフトウェア「VoiSona」のボーカルライブラリ・知声をフィーチャーした1曲。
MVは、後から制作された。イントロで鳴り響く鉄道の警報音を模したサンプリング音から瞬時にノスタルジックな音世界が広がっていく。

実写映像と線画のアニメーションキャラクターが融合したMVは、モノクロの情景から始まる。
ドラムのタイトなビートと知声の儚いボイスが心地よい温度感で溶け合う。
伸びやかなメロディーライン、幾重にも重なる知声の声と<定期の区間が見せた 窓の景色は 変わらないまま 暮れてゆく>というサビの歌詞の相性は抜群だ。
この作品のなかで、時はゆっくりと流れている。その透明感のある歌声が鏡となって、作者の素直な心さえも映し出しているように感じられるのも興味深い。
特に、空間の広がりを生かした丁寧なアレンジからは、楽曲が大切に温められてきたことがダイレクトに伝わってくる。背景で微かに鳴る、万華鏡を覗き込んだ時のような幻想的な効果音もいい味を醸し出すファクター。

2番では、主人公が抱える忘れられない記憶が描かれる。
Aメロの<そりゃ七かけ七なら解るわ>という一節の「七×七=四十九」、それが主人公にとって何を意味するのか。その答えが提示される瞬間に、モノクロだった世界が鮮やかに色づき始める演出は圧巻だ。
心のフィルターが変わるだけで、見慣れたはずの世界がこんなにも美しく輝いて見えるのかと、ハッとさせられる。時の流れや心情の変化が映し出され、思わず胸が熱くなる展開に。
ラスサビの<哀しいことは 哀しいままで 持っとくから>というフレーズは、深く心に響く。
映像は「昨日」「本日」と、徐々に、今へと近づいていく。これは、過去の痛みを抱えながらも、“今”と向き合えるようになった主人公の物語だろう。

心が塞ぎ込み、センチメンタルな気分に沈んだ時、じわじわと心に温もりが生まれてくる。
「頑張れ」と根拠もなく応援するファイトソングではなく、一人ひとりの悲しみにそっと寄り添うことで、前を向く力を与えてくれるヒューマニティのあるエレクトロニカだ。
■配信情報

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「The VOCALOID Collection」 公式サイト
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