日本の選挙、努力の方向が間違っていた。「2つ折りしても開きやすくなる特別な投票用紙を使用してる」そんなことよりネット投票の導入を…
記名投票式では“投票の秘密”が守られない
小飼:
手書きにしている限りは投票の秘密も守られないんですよ。それがまずい、ということもあって各国はチェック式にしているわけです。チェック式は面倒ではないと言いますけれども、そもそもそこは面倒なもので……。
僕はもう30年くらい前にカリフォルニア州にいましたけれども、そのときカリフォルニア州は投票先が人だけでなくて政策投票もあるんですよね。本当に200個くらいチェックする項目のあるマークシートが送られてきていました(笑)。
山路:
試験みたいですね。
小飼:
なぜ僕が知っているかというと、不在者投票をしているやつが僕のルームメイトにいて、「この政策はどっちがいい?」と僕に聞いてくるんですよ(笑)。
山路:
選挙権がないのに見る機会があったというのはすごく貴重な経験ですよね。政策投票先をルームメイトに聞くのは本当にいいのかわからないですけれどもね(笑)。
小飼:
少なくとも彼は自分の投票の秘密に関しては無頓着でした。
山路:
投票というか選挙に関して言うと、前々から弾さん仕組みのところで……もっとブロックチェーン【※】などを使うといいみたいな……。
※ブロックチェーン
インターネットなどオープンなネットワーク上で、高い信頼性が求められる金融取引や重要データのやりとりなどを可能にする分散型台帳技術のこと。高い透明性や信頼性をインターネット上で確保できることから、多様な用途への応用が期待されている。
小飼:
一挙にそこまでいかなくてもいいけれども、たしかにブロックチェーンを使うと選挙管理委員会というのが事実上不要になるんですよね。選挙管理委員会の一番大事な仕事というのは票を数えるところです。
これは普通の電子投票でも変わらないですけれども、普通に電子投票した場合は投票端末からの投票データをどこかに集めなきゃいけないじゃないですか。
山路:
ブロックチェーンを使うことでどこかに集約するみたいな仕組みを作ったりは……。
小飼:
そんなことはしなくてもいいわけですよ。この場合は各党とも自分の票を確実に集めたいというインセンティブがありますから、各党でサーバーを運営してもらってもいいと思うんですよ。ブロックチェーンの場合というのは中央集権サーバーというのがいらないですから。
山路:
なんとなく、そこに至るにはまだ年数がかかりそうな気はしますけれども。
小飼:
そういうやり方もあるよという。
山路:
エストニア【※】とかなら、やりそうな気はしますね。
※エストニア
バルト三国のひとつ。ITを行政に活用する「電子政府」を構築しており、国外の外国人にもインターネット経由で行政サービスを提供する「電子居住権」(E-Residency)制度に1万5000人以上が登録している。
小飼:
やりそうですよね。日本は物事を進めるときにはえいやと進めるところがあるじゃないですか。たとえばブロードバンドに関しては、一挙に進んだ国でもあるんですよ。アメリカとかヨーロッパに行くたびにネットがしょぼくて泣きそうになりますからね。
山路:
そこは不思議なんですよね……。日本がガラッと変わるというのも、たとえば明治維新とか、第二次世界大戦でガラッと価値観が転換したということがあったからでは?
小飼:
テクノロジー絡みのもので急激な変化を受け入れる素地はあるかなと思います。ガラケーだのなんだの言ったって、スマートフォンもあっと言う間に広まったじゃないですか。
山路:
確かに、これだけiPhoneをいきなり使うようになったわけですからね。
小飼:
その通りです。
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