ギャラはどう変わった? 紙との違いは? 昨今のウェブライターを取り巻く環境について徹底討論【話者:中川淳一郎・ヨッピー・朽木誠一郎】
『ネットは基本、クソメディア』の著者である中川淳一郎氏と、人気ウェブライターのヨッピー氏がお届けする、「クソメディア」が乱立する地獄絵図のネット社会をバッサッバッサと斬りまくる好評企画も第三弾。
今回は、『健康を食い物にするメディアたち』を上梓したばかりのライター・朽木誠一郎氏をゲストに招き、ウェブメディアとウェブを主戦場とするライターの変移についてクロストーク。
「ギャラはどう変わった?」「社会的な立場は向上した?」「紙との違いは?」など、昨今のウェブライターを取り巻く状況とはどのようなものなのか!? ライター業界の未来を見据えながら3人が鋭く切り込んでいきます。
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親から認められれば立派な地位と言えるのか問題
中川:
本日はBuzzFeed Japanの記者である朽木誠一郎さんをゲストに、昨今のウェブメディアやライターについて話していければと思うのですが、お二人はいつくらいからウェブメディアが隆盛してきたと思われますか?
ヨッピー:
う~ん、いつ頃くらいからだろう? でも、今年ウェブにおける広告費がテレビを超えるとか超えたっていう声も聞きますよね。
中川:
たしかに今現在は、ウェブの広告が一番重要視されていますね。
朽木:
私がネットメディアでライターになったのが2010年とかですから、もっと前からだと思います。
中川:
AmebaニュースとJ-CASTが2006年だから、それくらいからかな?
ヨッピー:
ということは、ここ10年くらいの話ということでしょうね。
中川:
その間、「ギャラがどう変わったか」ということは、皆さんの大きな関心だと思うんだよね(笑)。
ヨッピー:
そこですか?(笑)
中川:
あと、親とか親戚の見る目が変わったとか、明らかに今までと違うなって思ったこととかあるでしょ?(笑)
ヨッピー:
それはある! 最初の頃は、「会社員を辞めて何をやってんだ!」って雰囲気でしたよね。でも、僕らの親の世代ってやっぱり紙媒体が権威あるんですよ。だから、僕が書籍を出して書店に並んでいる光景を見たときに、ようやく「まともな仕事をしているんだな」って認めてくれたというか。
高齢者にとってネットの地位は高くないですから、まともだと思ってくれるのって、自分が新聞や紙に登場したときだけですね。
(画像はAmazonより)
ウェブメディアにおけるギャラはどう変わったか?
中川:
なるほどね。でも今の若い世代からしたら、「ウェブで書きたい」って人の数の方が多いよね。その中でウェブを専門にしているライターの地位ってどんな変移があったと思います?
ヨッピー:
やっぱりギャラも地位も上がっているなとは思います。
朽木:
価格だけで見たら絶対に上がっていますね。それこそ僕は記事1本で500円とかから始めたので。
中川:
それっていつくらい?
朽木:
学生のバイトとして始めたての頃、2010年くらいですね。
ヨッピー:
僕の勝手な意見ですけど、ウェブのライターが儲かるようになってきたのは、ウェブの存在感とともに比例しているだろうと。それに伴い予算も上がっていきました。しかもウェブの場合、ほぼ総取りですからね!
朽木:
ヨッピーさんの記事のお手伝いをしたこともありますが、基本的にヨッピーさんは全部、自分でやっていましたよね。
ヨッピー:
そうそう。例えば雑誌の企画だったら、一つの企画に10万円の予算が付いているとして、カメラマンに〇万円、モデルさんに△万円というふうに割り振るじゃないですか。一方で、昔のウェブの記事ってせいぜい2万円くらいですから、カメラマンやモデルなんか使えない。
中川:
それが初期のヨッピーさんの記事、それこそ変態仮面の格好をして街に飛び出すとかの企画になっていったわけだ?
ヨッピー:
そうです、そうです。しかも企画から発信まで全部自分たちでやっていた。
朽木:
もともとは出たくて、前に出たわけじゃないところはありますよね。自分がモデルにならざるを得ないというか。
ヨッピー:
そうなんですよ。予算がないから自分でやるしかないじゃないですか。それを繰り返しているうちにウェブメディアの重要度が上がってきて、「予算10万円」みたいな感じで全体の予算が増えてきた背景がある。でも、最初から最後まで一人でやっているから結果的に自分のギャラの取り分が増えたというか。
中川:
広告記事だったら分かるんですけど、一般的な記事に対しての予算も潤沢になったということ?
ヨッピー:
そうですね。3年くらい前から上がっている実感はありますね。一般的な記事でもちゃんと予算組んで交通費を使って取材に行ったりしますよ。
朽木:
ウェブ業界の盛り上がりや成長とシンクロするようにギャラが上がっていったタイプだと思います。だから、記事に対する予算が上がっていったという実感はありますね。
中川:
今まで媒体って増え続けてきたわけですけど、これからは間違いなく淘汰の時代に入ると思うんですよね。若いライターたちには頑張ってほしいと思う一方で、フリーのライター・編集者の姿勢に若干の危機感を持っていて「お前らどんだけ自分に自信を持っているんだよ?」って思うことも結構あって。ほとんどのヤツなんて代わりがきく。それは自分自身がそう思っていて。
正直、ヨッピーや朽木さんみたいなイケてるライター見てるとキツい。ロートル【※】だから早く辞めたいんだよ!
※ロートル(老頭児)
中国語で、老人、年寄りという意味
ヨッピー:
いやいやいや、一番稼いでるの中川さんじゃないですか。「月に1200本編集して、記事31本書いて」ってあきらかに働きすぎですよ!
書いた記事が「ヨッピーっぽい」と言われてしまう“ヨッピー化問題”
中川:
ぶっちゃけていいと思うんだけど、朽木誠一郎というライターは、上位何%くらいのレベルだと思う?
ヨッピー:
言わせますかそれ!?(笑)
朽木:
言えないし、分からないよ!(笑)
中川:
じゃあ、ヨッピーさんを0.2%だとしたら、朽木さんは?
朽木:
どうしても答えさせたいんですか!?(笑) でも、じゃあ、ヨッピーさんが0.2%だとしたら僕は30%くらいじゃないですか?
ヨッピー:
オイィィィ! 嘘つけッ!
中川:
朽木さんは0.8%くらいだろ!
朽木:
いや、だってジャンルも違うじゃないですか。僕は今は報道記者なので「ウケる企画」みたいな仕事はもうほとんどやっていませんし。ウケる企画をする機会が減ってきているから、ウケる企画をよく担当させてもらっていたときは、ヨッピーさんが断った企画を、次の人が断って、さらにその次くらいで僕のところにやってくる、って感じでした。ということは30%くらいでしょ!
ヨッピー:
それ、あるあるだよね(笑)。僕が断った企画を、後輩が担当しているという。あんまり魅力的じゃない企画だと身内でぐるぐるたらいまわしにされてたり(笑)。
朽木:
それで、記事を書いたら、読者に「なんかヨッピーみたいな企画だな」って言われるという。そりゃそうだよ!(笑)
ヨッピー:
そりゃ仕方ない(笑)。ちょっと話がそれるけど、最近、若いライターから「頑張って書いたんですけど、ヨッピーみたいって言われるんですよ」って愚痴られるんですよ。
中川:
(笑)。面白系のウェブ記事が、“ヨッピー化”しているなんて言われているもんな。
ヨッピー:
でも、僕だって書き始めた当初は、「デイリーポータルZのパクリみたいな記事ばかり書いている奴」「劣化版デイリーポータルZ」「知性と品のないデイリーポータルZ」って言われ続けていたんですよ! それでも書き続けてたらだんだんそういうの言われなくなったので、なんか言われてもとにかくやり続けるしかないんじゃないかな。そしたらいつしか言われなくなって、その人の記事として認知されるはずです。
中川:
良いこと言うな!
朽木:
それだけ影響力があるってことがすごいですよねぇ。