絵本に“萌え絵”を使うのはアリ? ナシ?――「自分が子供の頃に読んでいた絵柄が見たいんでしょう?」元アニラジパーソナリティがコメント
アニメ風の“萌え絵”を絵本や児童書に使用したことが議論を呼び、河出書房新社の絵本『せかいめいさくアニメえほん』が注目を集めています。
河出書房新社側は、「プリキュア」シリーズを連載している漫画家の上北ふたご氏に「子ども自身が飛びつく絵を」と発注したと説明。そのため、「なぜ萌え絵にしたのか」という問い合わせがあっても、そもそも「萌え絵を描いてください」と依頼していないことから困惑しており、回答しても理解してもらえず苦慮しているとのことです。
ラジオパーソナリティのおたっきぃ佐々木さんと、声優の天海由梨奈さんが出演するニコニコ生放送番組「やっぱ、アニメでしょう」では、この話題をピックアップ。
おたっきぃ佐々木さんは、萌え絵は選択肢のひとつであるとし、「これはオタクが好きなやつでしょう? というところで非難されている気がする」「いろいろな時代に合わせた価値観を持って、いろいろな広い目で許容して考えていったほうがいいんじゃないのかな」と持論を展開しました。
絵本萌え絵論争が囂しいですが、弊社の「せかいめいさくアニメえほん」は作家さんたちに「萌え絵を描いてください」とお願いしたものではなく「子ども自身が飛びつく絵を」という発注のため「なぜ萌え絵にしたのか」としきりと質問され困惑、担当者も何度説明しても理解してもらえず苦慮しています。 pic.twitter.com/KqhLzAj2vJ
— 河出書房新社@プレゼント企画実施中 (@Kawade_shobo) November 8, 2018
「子供が将来オタクになっちゃったら……」というところで非難されている気がする
おたっきぃ佐々木(以下、おたささ):
これは難しいところだとは思うんですよ。だから要するに、批判している人というのは、基本的に自分が子供の頃に読んでいた絵柄の本が読みたいんでしょう? みたいなところだと思うんですよ。でもそれって今見ると、やっぱりちょっと古いんじゃないかなっていう。
それがいい場合もあるし、でも子供がこれ読みたい! というのは、今見ているアニメの絵に近いところだと思う。そのほうが子供が見てわかりやすいじゃないですか?
天海:
確かに今のこういう絵のほうが、今の子には親近感がわくのかなと思いますけれど。
おたささ:
とはいえ、NHK Eテレの子供向け番組とかで、ちょっと昔っぽいというか、わりとシンプルな絵でやっているアニメとかもあったりするじゃないですか。だからそういう絵でやってほしいっていうのも、わからないではないところではあるんですけれども。
ただ、萌え絵は選択肢のひとつじゃないですか。その絵でやっていることに、「これはオタクが好きなやつでしょう?」みたいなことで非難されているのかなみたいな。「うちの息子や娘がこれを読んでアニメを好きになって、オタクになったらどうしてくれる」みたいな話なんじゃないのかな。
天海:
小さい頃からそういうのを与えちゃうと将来的にオタクになっちゃったら……みたいな。
おたささ:
みたいなことで批判してる人が多い気がするんですよね。ただ、結局それって好みの問題で、『週刊少年ジャンプ』とかでも昔から70年代、80年代、90年代、2000年代、2010年代って、全部それぞれの流行りの絵があるわけです。
少女漫画もそうです。それこそ少女漫画家さんで何人か古い方とかいらっしゃるじゃないですか。年代ごとで絵が違うんですよ。わざとその時代にあった絵で全部出す。すごいなと思って。
天海:
今回の萌え絵に関しては時代がっていう感じになりつつあると思うんですよね。
おたささ:
そう。それが悪いというのは意味がわからない。たとえば時代の流れで、スマホだって「私たちの頃には電話機だったから家の電話で連絡しよう」みたいなことを言う? という話。
そういうことで考えると、それぞれを批判するというか、泥仕合になっているところがあるけれど、結局批判しているほうからすると、自分が好きなものを押し付けたいだけなんじゃないの? っていうところを反論しているんだけれど、その反論側が「萌え絵をバカにするな」と言っちゃうと、火に油を注ぐみたいなところがあって。
天海:
すごくかわいいですけれどね。こっちのほうが今の子にとってはとっつきやすいという感じはするんですけれどね。
おたささ:
たとえばディズニープリンセス風の絵柄でやってみて、「じゃあこれはどうなの?」と言った時に、「これは素晴らしい」とか言ったりするじゃないですか。それはおかしいんじゃないの? みたいな。国産アニメも愛そうぜ、みたいな話じゃないですか。いろいろな絵本がたくさんありますからね。
天海:
小さい子に読みやすくというのを考えたら全然アリだと思いますけれどね。さすがに『シンデレラ』の絵本となってくると大人がガッツリ読むわけじゃないじゃないですか。だから本当にいいんじゃないのかなと思いつつ、ちょっと嫌だなと思う人もいらっしゃるんですね。
「時代に合わせた価値観を持って、許容したほうがいいんじゃないのかな」
おたささ:
話はちょっとずれるんですが、子供の頃に見ていたアニメってあるじゃないですか。新人声優のオーディションとかすると、世代が見えるんです。これは「セーラームーン」シリーズの芝居だっていうのと、これは「プリキュア」シリーズの芝居だなって。子供の頃にDNAとして刻まれているものって、やっぱり出るんだなというのを昔感じたことがあります。
天海:
今は?
おたささ:
今は「プリキュア」がそろそろ出てくるくらい。「プリキュア」を7、8歳で見ていると今15周年だから23歳とかそのあたりでしょう。そのへんで新人声優が子供の頃に見ていたアニメを憧れのアニメとしていると、「プリキュア」の芝居というのが出てくる。
天海:
なるほど。
おたささ:
そのへんはいろいろな世代が出ていて、この人はこれだなとか。そういうのはちょっとおもしろい。
天海:
佐々木さんならではの視点ですね。おもしろい。
おたささ:
最近のオーディションとかでいろいろな声を聞くことはめったにないんだけれど、同じセリフを言ってもらうと、言葉尻の癖とかが出る。「この人はこの声優の影響を受けているな」というのが多少見えたりしておもしろい。
ちょっと萌え論争からずれましたけれど、そんなこともあったりして。昭和アニメを通っている人は強い発声というのが多かったり。演出的な部分でもあるんだけれど、それぞれの受けてきた影響というのは出る。
子供向け絵本を読んで、こういうのがかわいいなというのが刷り込まれるのは、そういう意味ではあるのかもしれないです。今、公式キャラクターとかもアニメとかで使ったりするじゃないですか。そうすると逆にそっちの絵のほうが馴染みのある絵ということになってくると思うんですね。
天海:
時代によって絵柄も変わるので適応していくしかないですよね。
おたささ:
昔は漫画とかも俗悪とか言われていた時代があったとか、いろいろあるじゃないですか。それこそ悪い本、漫画を燃やそうみたいなひどいこともやっていましたから。
天海:
なんてことを……。
おたささ:
手塚治虫さんの作品すら燃やされたこともあるくらい。今じゃ考えられないですよね。
天海:
考えられないですね。
おたささ:
そう考えると、いろいろな時代に合わせた価値観を持って、いろいろな広い目で許容して考えていったほうがいいんじゃないのかなと思うんですよね。変な保守的なところは、あまりいらないんじゃないのかな。世界に向けて日本のアニメを発信していくという立場になったら、日本人として世界に発信できるアニメの絵柄ということで、できるんじゃないのかなと思うんですけれどね。
天海:
アニメは日本の文化のひとつですからね。