たった4時間で3万のローマ兵を葬った名将ハンニバルの戦略とは? “歴史上最大の待ち伏せ”と言われるトラシメヌスの戦いを解説
■トラシメヌス湖畔の戦いの幕開け
ルビン:
執政官フラミニウスのローマ軍3万を待ち受けるのは、無敵の名将ハンニバル・バルカが指揮する5万のカルタゴ軍。ハンニバルが戦場として選んだのは、急斜面の丘が迫るトラシメヌス湖畔の隘路だった。
ルビン:
軍より先行していた彼はここを絶好の待ち伏せ場所と一瞬で判断し、多くの兵を緑が覆い茂る兵陵地帯に伏せさせると息を殺してローマ軍がやって来るのを待ったのです。レオ:
5万もの兵が待ち伏せするとか聞いたことねーぞ。
ルビン:
そして21日早朝、カルタゴ軍を急追するローマ軍が到来。濃い霧が立ち込める隘路に深く入り込み始めた。レオ:
さすがに少しは怪しんでもいいんじゃねーか!?ルビン:
たしかにそうなんだけど、フラミニウスは安全だとたかをくくっていた。なぜならハンニバルは前夜に野営する際、湖畔のもっと奥の方で煌々とかがり火を焚かせ、カルタゴ軍主力が実際より遠くにいるように錯覚させてたからです。レオ:
ローマ軍は敵がもうここら辺にいねぇと思ってたんか。
ルビン:
しかもここでローマ軍の疑念を払拭する情報が舞い込みます。前方にカルタゴ軍の補給部隊が音を立てて動いているのがわかったのです。フラミニウスはこれを敵の後続隊だと判断し、カルタゴ軍をいきなり襲うべく行軍速度をよりあげてしまう。そして、そんなローマ軍を待っていたのはあまりに予想外な事態だった。
ルビン:
先頭を進んでいた部隊がいきなり戦列を敷いたカルタゴ軍と衝突。同時に低いラッパの音が霧の中で不気味に鳴り響いたのです。
ルビン:
まもなくカルタゴ軍騎兵が兵を一気に駆け下りるとローマ軍の最後尾を襲撃して、まずはその退路を遮断します。つまりハンニバルは敵を袋に入れ、両端を縛って閉じ込めたわけです。レオ:
袋のねずみとはまさしくこのことですな。
ルビン:
この度重なる異常事態にただただ戸惑ってしまうローマ兵だったけど、そんな彼らに天から降り注いだのは、大量の矢と投げ槍の雨だった。矢の餌食になり、訳も分からずバッタバタと倒れるローマ兵。しかもこの攻撃は霧の中で行われているとは思えないほど正確だった。レオ:
なんでそんなに正確だったの?ルビン:
ハンニバルは事前に矢の集中する場所を湖畔沿いと選定し、弓兵などに射撃方向と飛距離などを検証させていたのです。また全兵には戦闘中でも混乱しないよう、合言葉も決めて徹底させていた。レオ:
ローマ君来るまで短時間だったのに準備よすぎー! つーかローマ君がかわいそうに思えてきたんですけど。
ルビン:
いや、同情するのはまだまだ早いです。なにせまもなくカルタゴ軍歩兵が容赦なく襲いかかってきたのですから。この攻撃に戦闘態勢を敷く暇もないローマ軍は大混乱。いたるところで行軍隊列は寸断され、無残にも引き裂かれてしまう。どころかフラミニウスはもうすでに討ち取られてしまっていた。レオ:
これはもう……戦いじゃねーなぁ。ルビン:
もはや反撃も後ろに逃げる事もできないローマ軍でしたが、カルタゴ軍はそんな敵を湖に追い込み、草をむしるように殺し尽くしていった。
ルビン:
ローマ軍の中で唯一この死地から逃げおおせたのは、決死の攻撃で前に活路を開いた6000人のみだったけど、そのほとんどがカルタゴ騎兵に追撃されて後日捕虜となってしまう。こうしてトラシメヌス湖畔の戦いはカルタゴ軍の死者1500、戦傷2500に対して、ローマ軍の損害3万というハンニバルの一方的な勝利で終結します。レオ:
あー……うん……もう圧勝すぎて感想がでてこねぇ。
ローマ軍が来るまでの短時間で準備をし、5万の兵士で待ち伏せをしたハンニバル。何もかもハンニバルの思惑通りに進み、ローマ軍は全滅しました。コメント欄では、「悪魔かこいつは」「すっげーシンプルなんだけど驚くほど効果的だよなぁ」「行軍速度上げるために装備外してたから矢でも致命傷なんだよな」「ハンニバルは戦術だけでなく統率力も凄まじ過ぎる」「戦争ですらないからな」といったコメントが寄せられました。
■ハンニバルの勝利で終結したトラシメヌス湖畔の戦い――その後のローマは?
ルビン:
その後、トラシメヌスでの惨事は首都ローマに伝わるのですが、そこで法務官が群衆にむかってたった一言、苦しみで呻くように報告します。「我々は大敗北を喫した」レオ:
嘘やろって感じだろうな。ルビン:
この思わぬ悲報にローマ市民は悲しみと不安に狂い、多くの女達が最愛の夫や子供が帰るのを門で待ち続けたと伝わっています。レオ:
残念ながら帰ってこねぇんだよなぁ。
ルビン:
ローマはハンニバルという恐るべきたった一人の化け物によって、今まさに国家が興ってから経験したことのない事態に直面していた。
ルビン:
この危機にローマは1年後、8万6000という盤石の大軍を送り出し、ハンニバル率いるカルタゴ軍5万にカンナエの地方で再び決戦を挑みます。しかし……、迎えたその結末にローマはあっけにとられ絶句してしまう。なぜならカンナエで起きた事はそれほどに信じられない……怪異じみたものだったのですから。
ローマは、ハンニバルによって経験したことのない事態に直面し、その後も苦しめられました。コメント欄では、「これだけ負けても最終的に勝つ国の体力がやばい」「それだけ負け続けても戦うローマもバケモノ」「ハンニバルの戦術はハンニバル自身すら破れなかったからねえ」といったコメントが寄せられました。
トラシメヌス湖畔の戦いについての解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画を視聴してみてください。