ボーイングとエアバス、それぞれの機体の魅力を航空写真家が解説ーー両社の機体の違いは操縦席の設計思想にあり!?
世界のライバルたちを描いたフランスの人気ドキュメンタリーシリーズ「Face to Face」から厳選した12作品を毎週お送りするニコニコドキュメンタリー「ザ・ライバル」シリーズ。第2回の4月12日(水)では、2大航空機メーカーの激しい争いを、克明に描いた『エアバスVSボーイング ~大陸間航空機戦争~』が放送されました。さらにこの作品をより楽しむため、『みんなで航空機マニアになる生放送』と題し、航空機の世界をより知るためにエアバス機とボーイング機を中心に、知られざる航空機の魅力やその楽しみ方に迫る番組が放送されました。
世界で最も多くの航空会社に乗った人としてギネス記録を持つ航空写真家・チャーリィ古庄さんと、1年間の最多搭乗回数1022回を誇るマンボミュージシャンのパラダイス山元さんが、司会のアナウンサー・久野知美さんと共に2大航空機メーカーについて解説してくださいました。
ボーイングとエアバス、機体のデザインとコストの関係
古庄:
ボーイングは100年くらいの歴史がある会社なんですけど、1903年にライト兄弟の飛行実験の直後くらいから、コツコツと飛行機を作っていて、ジャンボ機等を作っていました。日本の飛行機は、やはりボーイングがメインなんですよね。それから後に台頭してきたのが欧州共同会社のエアバスで、今は両社並んでいる、もしくはエアバスの方が売れている年もあって、2大メーカーになっています。2社しかないので、機体の形は似てくるんですよ。
古庄:
これが最新鋭のボーイング787(写真右)。そして、これに対抗して作られたのがエアバスA350(写真左)。そして、エアバスA300という最初に作られた機体を、さらに短くしたのがエアバスA310です。
古庄:
何が言いたいかというと、飛行機は開発費がかかるんです。だから、1度作ったら、(機体を)短くしたり長くしたりして元を取らないといけないんです。
久野:
どういうことですか?
古庄:
次の写真を見てもらいましょう。これはエアバスA318という機体です。これを少し長くしたエアバスA321と並べてみましょう。
山元:
こうして見ると、全然違いますね。
古庄:
ボディの長さを長くしたり短くしたりしています。こういう歴史の繰り返しなんです。
久野:
それで量産して、少しでもコストを低く作っていくということですね?
古庄:
そうですね。翼とか胴体も(機体を作る度に)「この型がいい」と言ったら、やはり(空力、航空工学、強度、空気抵抗などの設計に)お金がかかっているので、ボーイングも同じようなことをやっています。
2大メーカーの機体を所持するのは、リスク分散と価格交渉のため
久野:
ちなみにJAL(日本航空)とANA(全日本空輸)はどのような機体の使い分けをしているんですか?
古庄:
JALもANAも両方持っています。車みたいにそんなにすぐ新型が出ないので、古いのを使ったら、また同じ型の機体を買うというのもあります。
山元:
これは、リスクを分散させているんですか?
古庄:
最近はそういう流れになっていますね。リスク分散というか、価格交渉するときに、例えばボーイングばかり買うと「どうせ、うちの買ってくれるんでしょ?」ってなるよりも、「両方検討しているんですよ」って言える方がいい。
山元:
これ、どっちの価格が安いんですかね?
古庄:
正式なプライスはどこにも出ていないんですけど、機体をまとめて買うと安くなるんですよ。なので、「100機、買います」とかよくやってます。
山元:
何百億円という買い物だから、国家事業にもなるでしょ。ロッキード事件【※】なんてまさにそれで、田中角栄元首相が逮捕されたのって、ピーナッツ何個とかって(笑)。
※ロッキード事件
アメリカの航空機製造大手のロッキード社による主に同社の旅客機の受注をめぐって、1976年に明るみに出た世界的な大規模汚職事件。田中角栄元首相が、受託収賄と外為法違反の疑いで逮捕された。ロッキード社からの賄賂を受領する際の領収書に「ピーナッツ100個」などの暗号が記されており、後に検察の調べでピーナッツ1個が100万円の意味とわかった。