暴力団員が航空機に持ち込んだ手榴弾が爆発? “空の安全対策”が問われた「タイ航空機爆発事件」を解説
今回紹介する、ゆっくり亭さんが投稿した『【機内で手榴弾が】タイ航空機爆発事件【ゆっくり解説】』という動画では、音声読み上げソフトを使用して、1986年に発生したタイ航空機爆発事件について解説していきます。
暴力団組員が持ち込んだ手榴弾が爆発
魔理沙:
今回は「タイ航空機爆発事件」をやろうと思う。かつてタイ航空というタイ国内線の航空会社があったんだけど、日本ではその会社とは関係なく、タイ国際航空のことをタイ航空と呼ぶ場合がある。
1986年、10月26日タイ国際航空620便はタイのバンコクの出発し、途中フィリピンのマニラを経由し、大阪伊丹空港に向かっていた。ちなみにタイ国際航空620便というのは、現在はマニラ止まりで、大阪には別便が直行便で飛んでいる。
機材はエアバスA300-600型。乗員14名、乗客233名、計247名を乗せ、高知県の土佐湾上空を飛行中だった。午後8時頃、突然機体後部で爆発が起き、急減圧が発生した。この爆発に伴い、圧力隔壁が破損し、油圧系統3系統のうち2系統を喪失するなどの損傷を負った。
霊夢:
圧力隔壁って、なんか聞いたことのあるパーツね。
魔理沙:
この事故の前年、1985年に発生した日本航空123便墜落事故の事故原因で出てきたパーツで、この事故もまったく同じ。これにより同機は一時操作不能となり、ダッチロール状態となったが、午後8時40分、大阪空港への緊急着陸に成功。
霊夢:
よく着陸できたわね。
魔理沙:
当然、このパイロットも日本航空123便墜落事故を知っているだろうから、対処方法なりをすぐにイメージできたんじゃないかな。それに油圧が1系統は残っているから、そこがでかいだろうね。
霊夢:
事故の経験は業界で共有され活かされるのね。
魔理沙:
大阪空港に着陸できたことにより、乗員・乗客の全員が生還できたが、爆発や機体の乱高下によって乗員3名、乗客11名。計14名が重傷を負い、乗客95名が軽傷を負った。
着陸した機体は直ちに、運輸省(現在の国土交通省)と大阪府警により事故原因の調査が行われた。圧力隔壁が破損し、油圧系統ふたつが喪失したのは、前年の日本航空123便墜落事故の事故原因と同様であり、この事故も機体のトラブルが原因であると思われた。
霊夢:
似たような事故が立て続けに起こってしまったってことなの?
魔理沙:
しかしこの事故気は納品されて3週間も経っていない新鋭機であり、日本航空123便の事故気と同じように、しりもち事故などの圧力隔壁に損傷を与えるようなトラブルを起こした記録もなく、当然修理履歴もなく、整備と運行記録には問題がなかったことが判明する。
霊夢:
要は新品同様なのね。
魔理沙:
A300型機の圧力隔壁の構造や、機体の設計の問題の調査にも入ろうとしたが、圧力隔壁の損傷の原因が金属疲労や耐久性の問題ではなく、爆発物による破壊であることが判明した。
霊夢:
それって事故じゃなく事件じゃん。
魔理沙:
大阪府警は事故発生から3日後の現場検証で、爆発は手榴弾によるものと断定した。
乗客名簿より、大阪府警は暴力団山口組組員が搭乗していたことを突き止め、事情聴取をしたところ、組員は手榴弾を密輸目的でマニラから持ち込んだこと、機体左後部のトイレ内で自身で安全ピンを誤って抜いてしまい、そのまま手榴弾を放置して手榴弾を爆発させたことを自供した。
組員は重傷を負っていたため、大阪府警は退院を待ってこの組員を逮捕した。組員は爆発物を航空機に持ち込んだことで、航空法第4条違反の罪に、また手榴弾の安全ピンを自ら抜いたことで、殺人未遂罪で起訴された。組員は大阪地裁で1988年3月に懲役20年の判決が言い渡された。
霊夢:
未遂だからこんなもの?
魔理沙:
似たような事例だと、2009年にデルタ航空機爆破テロ未遂事件というのが発生してるけど、こちらの犯人は禁固50年という終身刑を食らってるな。函館空港で起きたハイジャック事件の犯人は懲役8年だから、日本は航空機事件に甘いような気がする。
それにこの事件は80年代だから、ニューヨークのテロを経験した現在ほどセキュリティは厳しくない。この前年には、インド航空に爆発物が持ち込まれ、飛行機は墜落し、成田でも貨物が爆発している。
そしてこの事件の翌年には、大韓航空機がやはり機内持ち込みの爆弾で墜落している。さらに翌年には英国でリビアによるパンアメリカン航空103便爆破事件が起きている。
霊夢:
結構事件が続いたのね。
魔理沙:
当時は爆発物の発見能力が低かったんだな。
霊夢:
今はどうなの?
魔理沙:
X線の検査機器もそれなりに進歩してるだろうけど、ボディスキャナーっていう機械が登場してるから、かなり期待してるけどな。
解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画を視聴してみてください。
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