動画作りは歯磨きと同じ? 日本一TRPG動画を投稿している“日本語読めない卓”の中の人に“爆速投稿”の理由を聞いてみた
コロナ影響でオンセ環境に。最近のTRPG動画界隈の動き
──TRPGの遊びかたを動画で知ったとのことですが、ご自身がTRPG動画を作るときに参考にしたり、影響を受けたしたり方っていらっしゃるんですか?
ニコライ:
動画を作ろうとしたときに一番参考にしたのは酔っぱらい卓の妙楽さんです。
TRPG動画を見つけてから、けっこうTRPG動画を見ていて、酔っぱらい卓は自分たちと遊んでいる環境が近いなと思っていて。
──近いというのはどのあたりが?
ニコライ:
リアル友人同士でのオフラインセッションで、セッションに直接関係ない雑談も動画にしてみんなでわちゃわちゃしている。そういう雰囲気が似ていたので、自分が動画を作る際に参考にさせていただきました。
──そんな妙楽さんとまさか後々いっしょにコラボ動画を作ることになるなんて。
ニコライ:
思っていなかったですよね。
──コラボ動画と言えば、いち視聴者の目線から見ていると、ここ最近、TRPG動画投稿者同士のコラボ動画や配信、交流が盛んになっている印象があります。
ニコライ:
個人的にはコロナの影響があるのかなとは思っています。もともと僕たちは友人グループで直接会ってTRPGを遊んでいたんですが、このご時世になって集まるのが難しくなってしまいました。結果、オンライン上で遊ぶようになった。その影響があるんじゃないかあと。
御村りょうさん(猫首卓、野良猫卓)の投稿動画一覧
──なるほど。2019年にまにむさんやダニエルさんに取材をさせていただいた際にも、投稿者同士の交流関係についてお聞きしたのですが、おふたりとも投稿者同士の交流はほぼないとおっしゃっていました。
ニコライ:
それぞれ遊ぶメンバーは独立しているので、なかなか機会がないのはありますね。
2018年に酔っぱらい卓、シリゴミ卓の方々とはコラボさせていただきましたが、それ以外は基本的にありませんでしたから。
──当時としては珍しいコラボ動画(詳しくは「【クトゥルフ神話TRPG】あくりょうのいえーい」をチェックだ)が作られたのってどういうきっかけがあったんですか?
ニコライ:
もともと、妙楽さんとは、『Grass Simulator』(通称「草」)というゲームのコラボ動画の際にお声かけいただいたのをきっかけに軽くやりとりさせていただいていました。
そんな妙楽さんからTRPG動画コラボのお誘いを受けて、甘党ふうせんとごいっしょにセッションをさせていただいたのが流れです。その後も年に1回コラボをさせていただいていて。
ネット上でリアル友人以外と遊んだのも妙楽さんとのコラボが初めてでした。僕のネット上での交流が広がったのは、妙楽さんにお誘いいただいたことがきっかけになっていると思います。
──TRPG動画でのコラボに限らず、配信交流も盛んになっているのにはなにか理由が?
ニコライ:
TRPG動画投稿者が集まってセッションをすると「じゃあ(誰が)動画化する……?」という話になりがちなんですが、動画を作るって時間と労力がどうしてもかかってしまうんですよ。
でも配信ならコラボしつつ動画を作る労力なくかたちに残る。今後も増えていくのかなと思ってはいます。
──オンラインで遊ぶ環境が広まったことでいろいろな変化が起きてるんですね。
ニコライ:
それで言うと、オンセ環境になってから、クトゥルフ熱が再熱した……というかよく遊ぶようになりました。
──ほうほう。それにはどのような理由があるのでしょう。
ニコライ:
クトゥルフは会話とダイスロールで進んでいくので、オンセで遊んだときにオフセのときとのギャップが少なかったんです。
システムによっては、コマを動かしたり、マップ上での操作があったりと、オフセのときと比べてワンテンポ遅れてしまうことがあるんですが、クトゥルフはそこをあまり感じない。
──オンセとオフセだと、どうしても環境が違いますもんね。
ニコライ:
そうですね。オフセだったら机の上にバッと並べられるんですが、オンセですとひとつひとつの処理に時間がかかってしまうことがけっこうあって。そのズレがクトゥルフは少ないんです。
──ふむふむ。
ニコライ:
逆にウタカゼは、オンセになってテンポがよくなりました。オフセだと、ダイスを振って、確認して、メモして、拾ってと、1回のダイスロールでもけっこう手間がかかっていたんですが、オンセだと、ワンクリックでほぼ済む。
ウタカゼは、“希望”(HPに該当するステータス)を消費することでダイスの振り直しができるので、ダイスロールがしやすくなった結果、ものすごい勢いで希望が削れていってビックリしました(笑)。
──(笑)。
日本語読めない卓とシノビガミ
──ニコライさん(日本語読めない卓)といえば、シノビガミのイメージが強いんですが、シノビガミを遊ぶようになったきっかけって何かあったんですか?
ニコライ:
じつはそれも酔っぱらい卓の妙楽さんのシノビガミ動画を見たのがきっかけなんです。
──え、そうなんですか?
ニコライ:
シノビガミの動画を見ていておもしろそうだと思って、シノビガミのルルブを買いました。
ルルブを買って、初めてセッションしたのが動画化した「妖刀歓喜」になります。遊んでみたらハマってしまって。当時はシノビガミばかり遊んでいました。
ですから動画もシノビガミばかりだったんです。動画の内容を追っていくと、そのまんま当時遊んだセッションの歴史になっています。
──まさしく「セッションを記録として残す」目的が果たされていると。いやあ、懐かしいですね……。当時からずっと動画を追わせていただいて。全部の動画を数周はしているくらい完全にファンなのを今日ここまで我慢していて(笑)。
ニコライ:
ありがとうございます(笑)。
──途中から登場するメンバーも増えていきましたもんね! ホープさんとか。
ニコライ:
ずっと前から友人だったんですが、僕が誘ってたとき最初は「TRPGはいいです」って感じだったんです。その結果、動画への登場はちょっと遅れているんですよね。ホープの人、じつはシャイなところがあるので。
──えっ、そうなんですか。セッションの中では女の子を毎回お持ち帰りしているのに。意外です。そこからどういう経緯でTRPGを遊ぶようになったんです?
ニコライ:
僕がTRPG動画を作っているのを知って、「動画だけでも見ます」と実際に見たら興味を持ってくれたんです。
──おおっ。動画の力ってすごい!
ニコライ:
そこからお試しで「30分勇者」というTRPGを遊んで、その翌日には友人メンバー6人集まってシノビガミのセッションに参加していました。それが「プレイヤー6人でやるシノビガミ」でした。
──その時期の日本語読めない卓のシノビガミ動画といえば、紅蓮というNPCを中心とした「紅蓮シナリオ」。
ニコライ:
「紅蓮シナリオ」ありましたね。もともと公式シナリオ「追憶」に登場するモブキャラだったんですが、ロールプレイをしていたら変にキャラがたっちゃったんですよね。愛着も湧いて、その紅蓮を主役に据えてシナリオを作ってみたのが発端でした。
そのキャンペーンシナリオの最後が2017年で4年前かぁ……懐かしいです。当時、せっかくだからとそれまで投稿していた動画の要素を組み込んでいったら引退説が出てしまって。
──ありました、ありました! リアルタイムで見ていた視聴者としては、完全にアニメ最終回後の劇場版だったので、引退しそうって思っていました。
ニコライ:
まったく引退するつもりはなかったのでびっくりしちゃいました(笑)。そこから4年続いていると思うと、感慨深いものがあります。
日本語読めない卓、中の人の話
──動画投稿開始から5年半、初めてのセッションから9年くらいTRPGを遊び続けているわけですが、TRPGのどこに惹かれたんでしょうか。
ニコライ:
大人数でいっしょに遊べるというのが大きかったですね。
いまいっしょにTRPGを遊んでいる人たちは、もともと学生時代の友人グループのメンバーなんですが、その友人グループは30人くらいの大所帯で。
だから、友人グループで遊ぶ際に集まったとしても、アニメを見る人、ゲームをする人、漫画を読む人、カードゲームを遊ぶ人と、同じ空間にいながら別々のことをして過ごすことが多くて。でもTRPGなら大人数でも遊べる。それも会話をしながら。
──友人グループで遊ぶときのネタのひとつとおっしゃっていましたもんね。
ニコライ:
はい。TRPGを遊ぶメンバーは増えましたが、TRPGを遊ばないメンバーもいますし、そのメンバーと遊ぶときはもちろんTRPG以外のことで遊んでいます。
──最初にTRPGを遊ぶようになったメンバーって、最初の動画に登場している方々なんです?
ニコライ:
そうですね。けぇちゃん(藤堂の人)、モヒカンさん(ドムの人)、ぎつねさん(ライトの人)の3人が、最初にTRPGを遊んだ初期メンバーです。
けぇちゃんとモヒカンさんは僕と同じで、TRPGは遊んだことないけどクトゥルフを好きだった。ぎつねさんは誘ったらなんでもチャレンジしてくれる方だったので声をかけて。
──ぎつねさんは動画を見ていて感じるいい人なイメージその通りな感じですね。ぎつねさん……最初のころはダイス運よかったのに、いまや他の投稿者のTRPG動画で登場するくらい1ゾロの代名詞みたいになってしまって……。
ニコライ:
本当に悪くなかったんですよね。むしろ動画を作る前はダイス目がいい人の扱いだったと思います。
──いやあ、信じられない……。そうだ、動画投稿を始めたとき、メンバーの反応ってどうだったんですか?
ニコライ:
当時どうだったかな……。けぇちゃんは自分のプレイに対するコメントを見て笑っていましたが、そこまでリアクションはなかったと記憶しています。
もともとリプレイ動画の存在も知らなかったので、いまいちピンときてなかったかもしれません。
──動画になる=誰かにロールプレイを見られることになるわけで、そのあたりTRPGを遊ぶなかで意識って変わるものなんでしょうか。
ニコライ:
僕自身は、もともと日記帳をつける感覚で動画を始めているので、意識はしていません。でもそれを意識している人はいるかもしれません。Tさんはもろに意識していますし。
──Tさんは、日本語読めない卓のTRPG動画がすごく好きな感じが伝わってきます。よくセッション内でも「詳しくは〇〇をチェックだ」と姑息な宣伝をされていますもんね。
ニコライ:
少し前はけっこう見ていたっぽいですね。誰がどれくらい動画を見ているか、とくに話す機会があるわけではないので、いまはどうなのか把握しているあけではないですが。
──ふむふむ。動画を見ていると、中の人に対するコメントがけっこう多い印象があるんですが、中の人側から見るとどうでしょう?
ニコライ:
それに関しては、純粋に投稿している動画の数が多いので、興味を持っていただけたというのもあるのかもしれません。
加えて、友人同士かつオフラインセッションでTRPGをしているのが、中の人の要素が強く出ているのが要因なのかなあとは思っています。
──友人同士かつオフラインセッションだから?
ニコライ:
はい。顔と顔を合わせた状態で会話をしながらのセッションなので、どのキャラを使っていても目の前には友人がいる。キャラというより友人と話している感覚が強いんですよね。
あと僕の動画では、セッションに直接関係ない雑談も残していて、セッションで起こるストーリーを見せるというより、大人数で遊んでいるところを見せるゲーム実況に近い空気感があるのかなと。
口調も基本そのままなので、ゆっくりボイスを使っているとはいえ、そういう意味で中の人の要素が見えやすいというはあると思います。
これからも今の卓の雰囲気、投稿頻度を変えないように
──約5年半に渡ってTRPG動画を投稿してきた活動をいま振り返ってみてどうですか?
ニコライ:
「たくさん動画を投稿してやるぜ!」っていう気持ちはなかったと言いましたけど、実際に動画の数が積みあがってくるのは思い出深くはあります。
とくに1000本目の動画を投稿したときは「超えたか」って感じはありました。
──いまではもう1600本超え(取材時)ていますもんね……。
ニコライ:
多分、TRPGを遊ばなくなるか、失明したり両手がなくなったり、あるいはPCが壊れてしまうか。それくらいの出来事がない限り、動画に関してはこれまで通り続けていくと思います。
──すごいです。今後の目標みたいなものってあるんですか?
ニコライ:
日記感覚で動画を投稿しているので、明確に考えたことはなかったですね。
うーん……(しばらく考える)、いま僕たちのことを知ってくれているのは、日本度読めない卓の動画を見ていただいている方だと思うので、その雰囲気は変えずにこのままやっていきたいと思っています。
──TRPG動画以外で、いわゆる卓以外での活動についてはどうでしょう?
ニコライ:
それに関しては逆にいろいろやっていきたいなとは考えています!
ステイホームで家にひとりでいる時間も増えたので、VTuberの活動もそうですし、卓メンたちのオリジナルアバターを作っていたり、おもしろいことにチャレンジしていきたいですね。
ただそれはそれとして、メインはTRPG動画というのを前提に。投稿頻度を落とさないようにしていこうと思っています。
──ニコライさんの投稿頻度ですと維持するだけでも大変なような……。とはいえ、TRPG動画に卓外での活動、どちらも楽しみです! 本日はありがとうございました!(了)
ニコライさんの投稿初期から動画を追っていたいち視聴者として、長年疑問に思っていた“爆速投稿”の理由。
動画を作ることが歯磨きや日記を書くことと同じ感覚で、家にひとりでいるときは動画を作ることが習慣になっているのが大きな要因のようだ。
また、ニコライさんによると「演出や編集を入れずに、セッション中の会話をほぼそのまま動画」にする形式なら同様の頻度で投稿できる方は珍しくないとのこと。
これに関しては、正直なところ信じきれない思いが多少なりともある。1~2時間程度とはいえ、ほぼ毎日同じことを継続するのは決して簡単なことではない気もする。他のTRPG動画投稿者の反応が気になるところだ。
ニコライさん(日本語読めない卓)の動画はこちら |
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