『全日本女子プロレス』 本当にあった“最狂”にヤバイ話を吉田豪が語る
現役時代の北斗晶が持つ天才性
久田:
僕はプロレスに関してはそこまで詳しくない人間だけど、北斗晶さんは?
吉田:
北斗さんは柳澤健さんが単行本を出した後に、雑誌でインタビューをしていたんですけど、正直言って、もう芸能人モードだったんですよ。
久田:
北斗晶さんって男子プロレスを含めて見回しても完全に天才、曲の選び方も全部天才ですよね。「Oro De Ley」という曲で出てくるんですけど、フィニッシュホールドから最後のマイクアピールまで全部最高ですよ。
吉田:
今の芸能人の北斗晶さんしか知らない人は当時の映像とかを見てほしいですね。
この前、聞いた話が結構衝撃だったんですよ。北斗さんは正直メイクする前は、悪いけどそんなに可愛いわけでもないし男っぽい二枚目でもない。気のいい男みたいな感じのビジュアルじゃないですか。だから、ビジュアル的には長与千種さん級ではないんだけど、プロレスセンスが異常ですよね。それで、人気が上がってきたから潰されたんですよ。
久田:
なるほど、そうなんだ。
吉田:
コーナーポストからの受けられない技を食らって首の骨を折って死にかけたんです。その辺の話もこの本でだいぶ検証してるんですけど……。怖いなと思ったのが、そんな目に遭って復帰の署名集めをして、その署名の結果、北斗晶さんは復帰するんですけど……その時も他の選手たちは皆、北斗さんのことを無視していたらしいんですよ。
なぜかと言うと、ただでさえスター性がある人間が、こんなドラマまで持って復帰したら……。
久田:
持っていかれる?
吉田:
完全に持ってかれる。こんなやつを復帰させたくない、みたいな空気があったらしいです。そんなにひどい目に遭ってるのに無視されるの? という感じですよね。
勝利したにもかかわらず、北斗晶がレフェリーに謝罪した理由
久田:
だから、全女とは何かみたいな感じですよ。言ってみれば、当時の男子プロレス全部を見回しても本当にすごく格好良かった。
吉田:
全女での北斗晶さんのデビュー戦の話がこの本にも出てるんですよ。デビュー戦というのは、当然新人だからガチなわけですよ。押さえ込みで北斗さんが勝った後に、ダダーっとレフェリーのボブ矢沢さんの元にバーっと走ってきて、「すいません!」と謝っていたらしいんですよ。
吉田:
「すいませんって何だお前、勝ったのに」と言ったら、「いや、ちゃんとファンを沸かせられませんでした」みたいな。勝ったうえで、ちゃんとファンも熱くさせなければいけないのに、私としては本当にすいませんでしたみたいな。
久田:
すごいね、格好いいね。
吉田:
デビュー戦から、そんなプロ意識があったという。
久田:
だから僕は、北斗晶さんの大ファンですよ。佐々木健介さんは、そんなにファンじゃないんですけど(笑)。