『全日本女子プロレス』 本当にあった“最狂”にヤバイ話を吉田豪が語る
全女初代会長は“愚連隊の神様”万年東一
吉田:
基本的にこの本で紹介されている話は、この番組が好きな人だったら、気に入るような話なんです。基本的には金と喧嘩と揉め事みたいな話しかしてないですから。あとヤクザとか、皆さんの好きな話ばかりが詰まっています(笑)。
久田:
赤城マリ子さんが万年東一さんの名前を出してたのすごいと思いました。
吉田:
万年東一さんというのは、どういう人かちょっと簡単に。
久田:
万年東一さんは、愚連隊【※】の神様と言われている人ですね。新宿の喫茶店で色々なヤクザの相談に乗っていた方です。赤城マリ子さんが、万年東一さんのことをすごく話しているんで、ええっ! と思った。
※愚連隊
終戦後、復員軍人で社会復帰に困難を来たした者や民族的マイノリティ集団から自生したマフィア的組織の構成員らを中心に、暴力行為の他、ゆすり・たかり、窃盗、ダフ屋、景品買い等の違法経済活動を行っていた集団。博徒、テキ屋とともに、現代型の暴力団の三大源流の一つといわれる。
久田:
戦後史として面白いですよ。だから、僕は赤城マリ子さんの話が面白かったですね。
吉田:
万年東一さんが、女子プロレス絡みを仕切っていたんですよね。
久田:
全女の初代会長でしょ?
吉田:
スタートから、ちょっと黒いというかデタラメというか(笑)。
久田:
赤城さんは言ってたじゃない? 「戦後の興行はみんなそうだったのよ」とかさ(笑)。
UWFが実現できなかった「ガチの興行化」を成し遂げていた全女
吉田:
本当にUWFが、あれだけいろいろ頑張ってたどり着かなかったガチの興行化を全女がやってたというのが恐ろしいところですよ。
それが試合として面白いかどうかは別という話なんですよ。言っていたのはやっぱり大技からのフォールにならないらしいんですよね。すごく小さな技からのフォール。
吉田:
考えてみると、どんどんすごいなと思ってきたのが、三禁という酒と男とタバコを禁じるルールがあったわけですけど、その結果、何が起きるかと考えたら外で息抜きすることができない、外で恋愛もできない。その結果、女同士の揉め事が増えるんですよ。それで試合が面白くなる。そして、賭け事が成立しやすくなるみたいな……そういう発想でやっていた気がするんです。
僕が思ったのが、昔、相撲で貴闘力さんが貴乃花さんとかと組んで相撲をガチ化させようとして、それがあったから野球賭博だ何だの時に相撲界追放みたいになったわけですけど……。そういう、なぜ相撲界をガチ化させようとしたのかと探ったら、ガチにしたら賭け事が成立するから(笑)。
あの人ギャンブル狂だから、相撲をギャンブルにしたかったらしいんですよね。ギャンブルにするにはガチしかないという。もしかしたら、全女もそういう発想だったんじゃないかと思うんですよ。賭けたいから、賭けるにはガチでみたいな。すごくシンプルな発想だった気がするんですよ。UWF的な高い理想とか関係なく、俺たちは賭けたいんだから、そりゃガチだろうみたいなね。
久田:
なるほどね、それ当たってるかもしれないですね。
吉田:
高い理想よりも、目の前のそういう賭け事の方が。
久田:
欲望を優先したみたいな感じですね。