マンガ家的に2017年盛り上がったアニメ・漫画界の出来事を総ざらいしてみた【上半期の巻】
3月・映画『この世界の片隅に』が日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞受賞
乙君:
『この世界の片隅に』が日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞に選ばれました。これはもう文句ないですね。
山田:
これもね、ちょっと、『うつヌケ』の流れと似たところがあって。
乙君:
そうなんですか。
山田:
いわゆるインディー的な形で立ち上がったアニメがここまで来たと。
要するに、デカいところが倒れて、陽の当たらないところにいた、まさに“この世界の片隅にいた人たち”が、陽が当たるようになってきたっていうそのトピックが、もうこの辺の今年の前半の話ですね。
乙君:
ちなみに『シン・ゴジラ』が最優秀作品賞だったということで。
山田:
今年前半に関して、“モルヒネアニメ3部作”みたいな、3絞りっていうのがありまして。
山田:
もうね、この世界は地獄なので、皆さん普通に生きていたら、死にますから。モルヒネが必要なわけですよ。
乙君:
はい。
しみちゃん:
はい。
山田:
「すっごーい!」とか「さびしい!」とか、そういうモルヒネアニメがね。
この並びでいうと、ちょっと面白いなと思っているのが、『けものフレンズ』などの『異世界モルヒネ』。今、大ブームですよね。
乙君:
ああ、ファンタジーということ?
山田:
「異世界に行っちゃえば嫁だらけ!」みたいな。そんなモルヒネ。芥子の実から生成したヘロインと同じもので、それを医療に使うとモルヒネ、ドラッグに使うとヘロインになります。
乙君:
はいはい、そうなんですね。
山田:
ダウナー系の最強ドラッグ。「死ぬから手を出すな!」でおなじみのヘロインですね。
乙君:
へえ。
山田:
あとは、『君の名は。』などの『赤い糸モルヒネ』ですね。赤い糸は本当にあるんだという。
乙君:
なるほどなるほど。
山田:
だから今、もう「恋愛とか終わってますよ」とか、男子も女子も「生きてる人間となんか恋愛しませんよ」という顔をしていながら、本当はどこかで赤い糸があるといいなっていう圧がかかったところに、“新海マジック”がかかりまして。そして、大ヒットという流れがありました。
これ、問題はですね『スイーツ大盛りモルヒネ』という話ですよ。
乙君:
なんでしょう?
山田:
これがね、映画館に行くと、とにかくスイーツですわ。
しみちゃん:
え?
乙君:
え?
山田:
要するに少女漫画の王道系、とにかく甘くて美味しい。甘過ぎるんじゃないの? というようなやつですよ。
乙君:
だから、あれですよね。初恋ものとか。
山田:
『ピーチガール』です。PとJKです。結婚から始まるピュアラブストーリーですよ。『オオカミ少女と黒王子』『黒崎くんのいいなりになんてならない!』です。
乙君:
ああ。
しみちゃん:
(笑)
山田:
今は『覆面系ノイズ』とか『一礼して、キス』とか『兄に愛されすぎて困ってます』とかね。これ全部、JK狙いなんですよ。
乙君:
あれ誰が見てるんですか? っていうとJKなんですか?
山田:
JKですよ。
乙君:
はあ。
山田:
つまり、まだ絶望する前の少女達ですよ。絶望してタラレバになると、夢が見られなくなり、大量のモルヒネが必要となるので。
乙君:
『世界の中心で愛をさけぶ』とは違うんですか? 今のそういうのって。
山田:
あんまり少女漫画を馬鹿にすると怒られますよ。少女漫画にもいろいろありまして(笑)。
乙君:
別に馬鹿にしてない(笑)!
山田:
『ちはやふる』も『3月のライオン』も全部少女漫画くくりですけども、その中でも、「スイーツ大盛り」が多いですよ、という流れですね、最近は。
乙君:
なるほどね。
山田:
そうなんですよ。だから今の風潮として、例えばイオンシネマに行くと、半分くらいこんな感じですよ。
だから、どれだけ現代の若者が辛いんだっていう話ですよ。
乙君:
なるほど、なるほど。
山田:
だからちょっと前までは「傷口に塩塗っちゃえば痛みがなんだかわからなくなっちゃうんじゃないかコンテンツ」っていうのが流行っていたじゃないですか?
しみちゃん:
流行っていましたね。
山田:
『進撃の巨人』とか。
乙君:
ああ。
山田:
「世界は地獄だ」と言っていたら「ならば、もっと地獄を見せてやろうか」みたいな。「火星に行って虫と戦ったろうか」とか、そういういろんな種類の地獄を見せるというか。
地獄のような現実に、更なる地獄をあえて乗っけていく、というコンテンツ。もしくは『タラレバ娘』なんてまさにそうだよ。
山田:
『タラレバ』は地獄からのスイーツでいくって言う流れで、あれは中々上手い展開をしてますけども。そういうのが大体なわけです。
乙君:
モルヒネだとしたら副作用はいつ来るんですか?
山田:
怖いですね。
しみちゃん:
(笑)
山田:
副作用は怖いですね。
乙君:
そうすると、次に来るのは玲司さん的には何なのでしょうか?
山田:
俺は、次のタームがどうこうというよりは、今の時代は生き残ればいいのです!
乙君:
ほう、サバイブ!
山田:
死ななきゃいいのです。だったらモルヒネ打ってくださいっていう。
乙君:
ああ。
山田:
本物のヘロインで死んでしまうよりは、全然いいんじゃないかっていうのが俺の意見。
乙君:
なるほど。なるほど。
山田:
生き延びて、いつか、何かが起こるのを待てばいいじゃないですか。
6月・『ジブリパーク』2020年開園を発表
乙君:
僕たち的には、4、5月は特に何もなかったということで、すっ飛ばしまして(笑)。
6月は「ジブリパーク、愛知万博跡地に2020年代の開園を目指して建設」と。
山田:
本当に生き残ってください。
乙君:
そして、「成人漫画作者に配慮、ワイセツ事件を受け」…これは、同人作家が描いた同人の内容で、同じような犯行をしたという事件があって、その模倣犯が現れた、ということですね。「同人作家の作品に影響された」と、炎上した。
さらに「人気アニメ『カウボーイビバップ』実写ドラマ化企画が進行中」「NHKクローズアップ現代+で『ブラックアニメ業界特集』が話題に」「『HUNTER×HUNTER』が連載再開」。特に言うことは?
山田:
ない!
乙君:
(笑)
※下半期の記事も準備中でございます。
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