なぜベストを尽くしたのか――モテたエピソードから“機材”自慢まで、日用品で音楽を奏でる演奏家たちが語る「演奏してみた」【RAZO×おれお×お野菜×ケロリン】
“異色演奏”でもモテる説
――楽器やってる人はモテるって、よく言われるじゃないですか。実はずっと気になっていたことがあるのですが……異色演奏者のみなさんも、やっぱりモテたりするんですか?
RAZO氏:
私は結婚しました。
一同:
ウオオ!?
――まじですか!?
お野菜氏:
モノサシでですか?
RAZO氏:
モノサシで結婚しましたよ。
――ちょっと詳しく伺ってもいいですか?
RAZO氏:
モノサシ演奏を始めたその年に、東京であったイベントに演奏で呼ばれまして。そこに来てくれた人が今の嫁さんです。
――おおおおお! 夢がありますね。このお話を聞いてみなさんは……?
おれお氏:
異色演奏を初めてない自分を想定すると、多分それよりはモテてるなと(笑)。
――そっちの世界線よりはモテていると(笑)。
おれお氏:
生放送に来てくださる方とか、Twitterでリプライをくださる方は、女性の方が多い印象です。
ケロリン氏:
確かに異色演奏をやってなかったらと思うと、今の方が女性との機会というのはあります。
――やっぱりイベントに出たりすると、「あの人だ」ってなったりするんでしょうか?
ケロリン氏:
そうですね。まあこれは男女共になのですが、路上演奏をしてる時に「動画観てます」と話しかけてくださる方がいたり。
――それはめちゃくちゃ嬉しいですね。
ケロリン氏:
ただ自分でやっておいてなんですけど、どうしてこれに女性が興味があるんだろうって(笑)。中高生の変わった動画が好きな男子が騒ぎ立ててくれてるくらいだと思ってたので。でも実際には意外と、若い女性の方が興味を示してくれるんです。
――なるほど。みなさんやはりモテていると言えるかもしれませんね。お野菜さんはどうですか?
お野菜氏:
YouTubeの方に、コンスタントに「死ね」ってコメントがつきます。
――それは……(笑)。良い反応もありますよね?
お野菜氏:
良い反応もあるんですけど、「死ね」に比べるとインパクトが薄くて記憶に残りにくいですね。
――では、あまりモテているという体感はないと。
お野菜氏:
多少は好意的なコメントをくださる方もいたりするのですが……どうなんですかね(笑)。
一同:
(笑)。
お野菜氏:
お笑い芸人的な立ち位置にいるので、あんまりそういう感じは期待できないですね。女性の割合なんて、500人ぐらいで分けたピザみたいなイメージ(笑)。
――その円グラフはだいぶ厳しいですね(笑)。
「モノサシスト」のルーツ
――ニコニコ動画における「モノサシスト」って、誰から始まった んでしょうか?
RAZO氏:
一番最初に投稿したのが確か……私?
おれお氏:
RAZOさんが一番最初ですね。僕は実はかなり後になってから始めました。
――おおお! そういえばおれおさんは先ほど、RAZOさんに影響されてモノサシ演奏を始めたと仰っていましたよね。
おれお氏:
僕はモロ影響を受けまくりで(笑)。文房具でふざけるっていうのは男の子なら誰もが通る道だと思うんですけど、ちゃんと楽器として演奏をして動画投稿しようと思ったのは、RAZOさんの影響がかなりあります。
RAZO氏:
真似しやすいので、増えるなとは思ってたんです(笑)。ですけど、やっぱり若い子が多かったので、学校であまりに流行って問題になるのは嫌だなと(笑)。
――“スタイリッシュ授業妨害”問題ですね。
RAZO氏:
というのも、モノサシ演奏のイメージを悪くしたくなくて。なので、みなさん健全に楽しんでくれればいいなあと。
――RAZOさんが最初にモノサシ演奏を始めたキッカケはなんだったのでしょうか?
RAZO氏:
元々これは仕事で使っていたんですね。それを家に置いておいたら、兄がこれでベンベンと遊んでいて。
それを見てて、「これ真面目にやったら結構音程出るんじゃないか」と。探してみたら、YouTubeで海外の人がマリオの曲を弾いている動画があったんですが、“上手い!”と言えるクオリティではなかったんですね。
※RAZO氏が言及しているマリオの曲を演奏している動画。2006年の12月29日にアップされており、再生回数は111万回を超えている。
――たしかに、お二人と比べてみると音程も不安定です。
RAZO氏:
じゃあニコニコでやってる人はいるかなと思って探してみたらいなかったんですね。それで、「この人よりも上手く弾いてやろう」と思ったところから始めた感じです。
――RAZOさんのモノサシ演奏の初投稿が2007年なので、この海外の動画が公開されてからすぐですね。こんなところにルーツがあったとは。
始めたきっかけ お野菜&ケロリン編
――お野菜さんとケロリンさんは、どんなきっかけがあって異色演奏を始めたんですか?
お野菜氏:
やれる時にやれる環境があったというか。
――歯磨き中に口の開閉で音を鳴らせるのは、割と多くの人がご存知だと思うのですが、それをレコーディングして世に送り出そうというきっかけ何だったんでしょうか?
ケロリン氏:
虫歯になっちゃうから(笑)?
お野菜氏:
簡単に言っちゃうと、暇だったんですよ(笑)。それが出来るって分かってて、たまたまマイクがあったんですね。録れちゃったんです。それだけなんです。
――ぶっちゃけどういう気持ちでしたか? それを録って、アップロードする前にご自身で動画を観直したりするわけじゃないですか。
お野菜氏:
観なかったですね。そのまま即アップしました。
一同:
(爆笑)。
お野菜氏:
上がった瞬間に再生数が伸び始めて、「何だこれは」と。なんかやばいんじゃないか、みたいな(笑)。
そのひとつ前に歌ってみたを上げていて、その再生数が当時200回とかだったんですよ。なのに今回はアップしてから2、3分で700回くらい再生されていて。
――どエライ速度ですね(笑)。
お野菜氏:
死ぬかと思いました(笑)。
――ちなみに、あの表情やアンングルは、狙ってやったんですか?
お野菜氏:
いや、さっと入ったポジションがそこだったんで(笑)。
――なるほど、本当にカジュアルに撮影した動画だったんですね(笑)。続いて、ケロリンさんお願いします。
ケロリン氏:
僕のきっかけなんですけど……RAZOさんのモノサシ動画とか、こういう変わった演奏をして、ちょっとチヤホヤされているのがすごく羨ましくて(笑)。僕もチヤホヤされたくて始めました(笑)。
RAZO氏:
それは……されてたかもしれない(笑)。
一同:
(笑)。
ケロリン氏:
ただ同じことをやっても面白くないなと思って。そう思った時に、歯で演奏してみようと思ったんです。例えば口をカチカチしながら音程作るのって、誰でもできることだと思ってたんですよ。
――お野菜さんの歯ブラシ演奏のように口の開閉で音程を調整すれば、歯をカチカチさせるだけでも音は鳴らせますよね。
ケロリン氏:
そうなんです。けど友達の前でカチカチやってたら、「何やってんの?」って言われて。「え? みんなも出来るんじゃないの?」みたいな(笑)。それで「これなら俺でもイケるんじゃないか?」と思って始めたんです。
ただそれは全然伸びなくて、試行錯誤の結果、現在のいろんな楽器が生まれていった、という感じです。
――「叩いて音を出す」というスタイルは変わらぬまま、叩くものが変わっていったんですね。
録音も一苦労
――レコーディング環境についてもお話を伺っていきたいのですが、みなさんどのような感じで録音しているのでしょうか?
ケロリン氏:
今日持ってきてるんですけど、こうやって普通のマイクで録ってます。
――これは、パソコン用のマイクですよね。これをどう使っているんですか?
ケロリン氏:
ガチャポンの湾曲面を叩いているのですが、音はこの反対側に向かって出ているんですね。なのでマイクはこの下のにおいています。
最初はハンガーを使ったりしていたのですが、5、6年ぐらい使っているとハンガーって壊れるんですよ。
――(笑)。
ケロリン氏:
それで代わりに何かないかなと思っているときに見つけたのが、IKEAのライトなんです。自由に可動するので、生放送時など、演奏の音を拾ったあとに話すときの切り替えが楽で良いですよ。
――実用性も兼ねた、洗練された環境ですね。おれおさんはいかがでしょうか?
おれお氏:
Skype用とかで売られているピンマイクを使ってますね。RAZOさんのピックアップほどではないですが、よく拾ってくれるので愛用しています。
あと、モノサシを抑えている方の力加減はレコーディング時、大切だと思います。
押さえる力が弱すぎると、指で弾いた瞬間にモノサシが浮いてしまうことがあるんですよね。すると、浮いたモノサシが着地するときに「カチッ」と鳴るんですよ。
この「カチッ」が鳴ると最初からやり直しなので気をつけています。
RAZO氏:
私もやってることは基本的には同じですね。私は横弾きなのでマイクの位置は少し違いますが、できるだけ近くにマイクを置くようにしています。
――すみません。ちょっと気になったのですが、モノサシ演奏って縦横あるんですか!?(笑)。
おれお氏:
人によって横弾き、縦弾きっていうのがあるんですよ。そして僕はどちらかというと、斜め弾きです(笑)。
一同:
(笑)。
おれお氏:
モノサシストさんは結構いるんですけど、よく見ると皆さんちょっとずつ違いがありますね。
――知りませんでした! そういう視点から演奏動画を見ても面白いですね。