洋ゲ―を単純に翻訳するだけじゃない! “ローカライズ”って何?『Detroit』日本版スタッフが語る海外ゲームローカライズ事情
最近のゲーム界隈について、Vジャンプ編集のサイトーブイさん、ファミ通編集の世界三大 三代川さん、ニコニコ動画の中野さんが語るトーク番組「ゲーム界隈井戸端会議」。
今回は、近未来世界を描いたアドベンチャーゲーム『Detroit: Become Human』を手掛けた株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントでローカライズプロデューサーを務める石立大介さんと、ローカライズスペシャリストの谷口新菜さんがゲストとして出演しました。
ゲーム作品をその国の人々の文化やニーズに適応させる「ローカライズ」という作業。英語力よりも日本語力が重視されるアメリカンジョークの翻訳や、各制作会社の進捗に合わせて作業をするため、エンディングパートが先に届いてゲームの流れが読めない中で翻訳を行う等、現場ならでは苦労話が紹介されました。
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洋ゲ―を単純に翻訳するだけじゃない! 「ローカライズ」って何?
サイトーブイ:
ローカライズをやられているということですけれど、具体的に言うとそれは何ですか。
谷口:
簡単に言うと、海外のゲームを日本版にして出す仕事。終わり(笑)!
石立:
翻訳とはちょっと違っていて、翻訳もローカライズの中に含まれるし、すごい重要な部分であるんですけれど、吹き替えとかも「こういう感じでやってください」と演出さんにアドバイスをしたりとか、役者さんと綿密に打ち合わせすることもありますし、そのゲームをどういう形で日本に紹介していくかっていうのも含めてローカライズなんですね。
たとえば海外である要素をしていても、必ずしもそれが日本で受けるとは限らないので。それに対して「こういうふうにやったらいいんじゃないですか」とか、宣伝の方とも協力して、「このゲームはここを推したほうがたぶん日本のユーザーに一番良さがわかってもらえます」みたいなのもありますし。
谷口:
私がすごい適当みたいなんだけど(笑)。
一同:
(笑)
谷口:
私の10倍くらい説明してくれた(笑)。
石立:
あと、一般的に翻訳とローカライズだと、ローカライズのほうがエンドユーザー重視なんですよね。翻訳は結構「原著作者が神!」みたいなところがより強くて。文芸作品でも、たとえば学者の方が訳しているものだと、あえて原文の調子を崩さないように、ちょっと直訳っぽく訳している場合とかもあるんですよ。
それはその文学を学んでいる方が、そうじゃないと原文をうまく学べないというか。
世界三大 三代川:
なるほど。意図が違うというか。
石立:
そうです。それよりはローカライズはゲームもそうですし、エンターテイメント系というのはご覧になられる方、プレイされる方がいかに楽しめるか。原著作者がこういうことを感じてほしいなとか、こういう気分でプレイしてほしいなっていう気持ちと同じものを味わってもらうっていうのがローカライズかなと。
谷口:
すごい真面目だった(笑)。
一同:
(笑)
世界三大 三代川:
最近「カルチャライズ」という言葉もあるじゃないですか。それもいわゆるローカライズに含まれる?
石立:
そうですね。
谷口:
うちらはそれを含めてのローカライズ。
石立:
カルチャライズという定義も人によって違うと思いますけれど、すごく極端に定義を決めると、「現地の良さを楽しんでもらうために、ある程度オリジナルのコンテンツも変えていいじゃん」という思想がカルチャライズ。
中野:
どこまでやるかっていうのはソフトによっても違うんですか。
石立:
そうですね。ソフトによっても違いますし、あとはユーザーさんの好みっていうのはだいぶ違って、たとえば10年、15年前だと、すごく日本化しないと受け付けない。「洋ゲ―ってこうだよね」みたいな先入観もありましたし。
海外のゲーム自体がかっこいいという感じになってきていますので、あまりそこまで日本化しないほうがユーザーさんが喜ぶっていう傾向かな、と思います。
谷口:
それこそ「ラチェット&クランク」シリーズとかは、キャラクター自体のデザインを変えて。それがいわゆる“ザ・カルチャライズ”みたいな。
石立:
ゲーム自体の難易度とか、ステージ構成とかも一部変えたりとかしていたんですけれども、今はそこまでやるにはグローバル的な予算がでかくなりすぎているということもありますし、ユーザーさん的にも作られたままのものを楽しみたいという方も結構増えてきているので。
たとえばコミック作品だったら、もっと日本に寄せたほうがいいとか。基本的にライトコメディ系は日本に寄せたほうが良くて。シリアス系が好きな人は、あの欧米の独特な暗いトーンが好きだったりするので、それは結構保ってほしいのかなと思います。
『アンチャーテッド』サリーのセリフ翻訳に「ジョークはあまり好きじゃないです(笑)」
中野:
昔のPCゲームとかよくやっていて、ローカライズ、日本語化するのはすごく難しいというイメージがあったので、海外で作られてローカライズを前提に作られているものって、結構メニューの文字が入らないぞ、とか。
谷口:
よくご存知で(笑)。
中野:
日本語に翻訳したら、ここのメニューが全然足りないけれどって。今はそういうのって、ある程度グローバル化で作られていたりするんですか。
谷口:
いや、作られていないものと、作られていたりするものと……。開発とかタイトルによって違いますね。
それこそ英語に寄せて、英語がベースになって、枠が決まっているものとかもあったりするので、その場合は一生懸命文字数を数えて入るようにしたりとかをこっちでしなきゃいけないですし、そうじゃなくて最近だとスクロール機能とかついてあったりとかして、こっちでそんなに考えなくても自由にできるようにとかも。
本当にタイトルバイタイトルな感じですね。
石立:
コンシューマーゲームだとPCゲームよりはローカライズというか、世界展開を考えて作っている作品が多いのかなとは思いますけれど、それでも「やっぱりまず英語版を」っていうのがありますね。
世界三大 三代川:
昔だとウィンドウをはみ出している時とか。日本語であったりしたじゃないですか。
谷口:
そんなの見たことないな(笑)。
サイトーブイ:
(笑)
世界三大 三代川:
俺が見ているの、違っていたのかな(笑)。
谷口:
ありますあります(笑)。弊社でもQAテスト【※】のチームとかがあって、それで全部はみ出しているところとかを見たりして、直しているという感じですね。
※QAテスト
ソフトウェア品質の測定・確保・保証を目的として行われるソフトウェアテストのこと。
世界三大 三代川:
文字数が全然違いますからね。
谷口:
日本語って特に長くなっちゃうんですよね。英語だと2ワードとか3ワードになるものが、日本語だとダーッって。
石立:
単語単位だと漢字の力で圧縮できるということがあるんですけれど、センテンスになってその意味を全部表現しようと思うと長くなりがちかなと。特に英語で複数の意味をかけているとか、ちょっとしたシャレも結構あるんですよ。
世界三大 三代川:
結構アメリカンジョークとか結構大変じゃないですか。
谷口:
そうですね。それこそ『アンチャーテッド』シリーズとかは……。まだわかりやすいジョークだからいいんですけれど、特にサリーが出て来ると、楽しいんですけれど台本がそこにたどり着いた瞬間に「はぁ……」ってなりますね(笑)。他のキャラの3、4倍かけて考えないといけなかったりするので。
ジョークはあまり好きじゃないです(笑)。
一同:
(笑)