電気グルーヴ・ピエール瀧氏の逮捕、狙いは“サブカル界の大物”の逮捕…? 「薬物のどこを問題とするのか」を一連の騒動から考える【久田将義×吉田豪×高野政所】
石野卓球氏とのテクノユニット「電気グルーヴ」他、俳優や声優などマルチな活動で知られているピエール瀧氏が3月12日、コカインを使用したとして、厚生労働省の関東信越厚生局麻薬取締部に逮捕されました。久田将義氏と吉田豪氏がパーソナリティをつとめるニコニコ生放送「タブーなワイドショー」では、この報道を受けて3月23日に「ピエール瀧氏の特集」を放送しました。
ゲストには、ミュージシャン・DJの高野政所氏が登場。違法薬物事案で逮捕され作品出荷停止の経験のある氏は、メディアに瀧氏への思いを寄稿をし、改めて今回の逮捕についてショックを受けたことを告白。また、海外では大麻が次々と合法化されていく中、自身の逮捕を振り返り「反省したらいいのか、俺は悪いことをしたのかまったくわからない状況になった」と述べ、「薬物のどこを問題とするかを考えるべき」と問題提起しました。
―あわせて読みたい―
・大麻取材歴20年、矢部武にドラッグを学ぶ。「危険性と違法性は必ずしも同じではない」
・「これがマリファナビジネス最前線だ」5万人が大麻を吸いまくる”ヤバい”パーティーから超ハイテクのマリファナショップまで突撃リポート
ピエール瀧氏逮捕の狙いはサブカル界大物の逮捕?
久田:
ちょうど僕も同じなんですけれども、この人って51歳くらいですか。
吉田:
50歳超えのゴリゴリの体育会系ですよ。
久田:
そっか、野球部だもんね。
吉田:
ミュージシャン枠の人じゃないですよ。野球部を本気でやって高校野球にも出て、プロテストも受けたぐらいだから、もともとサブカル側の人間じゃないんですよ。体育会系の人間がサブカルに紛れてきたみたいな感じで。
久田:
演技は『凶悪』ではじめて「すげえな」って思った。一見「はい……」って言っていたのが「コラァ!」って豹変するのがすごかったのが面白いなと思ったんですけれどね。
吉田:
ちなみにいまだにメディアが気づいていない情報として、『凶悪』のコメンタリーがやばいらしいっていうのがあるんですよ。メディア側は映画は見ていても、コメンタリーまでチェックしていないみたいで。コメンタリーでは監督とリリー・フランキーさん、ピエール瀧の3人で話しているんですけど、シャブが映るシーンでリリーさんが「おい、これ瀧の私物だろ!」って言ってるっていう(笑)。
一同:
(笑)
高野:
冗談にしてもそれはすごいな(笑)。
久田:
当たっちゃってる(笑)。
吉田:
どこかで記事になっていたんですが、ピエール瀧の逮捕っていうのは、サブカル出身で映画とかCMに出ている大物が実はホシで、そいつを上げようとしているんだ……みたいな記事が出ていて。それを僕がリツイートしたら「みうらじゅんじゃないか」みたいな話が広まっていたんですけれど、明らかにリリーさんのことでしょうって(笑)。
『SCOOP! 』っていう映画での、リリーさんのシャブ中の演技が上手すぎたんです。あまりにもリアリティがあるシャブ中っぷりで、ボクも「あれは凄すぎますよ」って絶賛してたんですけど。そうしたらリリーさんが実際に記者会見で「この役のために、シャブを打って役作りしました!」って言ったらしいんですよ。
高野:
うわあ、笑えない(笑)。
吉田:
そのコメントもヤバいと思われたのか、CMの話がひとつ飛んだらしくて(笑)。リアリティがありすぎたらしいんですよ。やっていないからこそギャグで言っているのに(笑)。
久田:
やっていたら言えないだろうな。
吉田:
こじつけようと思えばいくらでもあるんですよ。『大麻農家の花嫁』という短編小説を書いていたりとか、ジョニー・サンダース【※】のトリビュート盤に参加していたりとか、瀧さんとも仲いいしで。
※ジョニー・サンダース
アメリカ出身のパンクロッカー。ニューヨーク・パンクを創世記から牽引した伝説的なアーティストであるが、薬物の過剰摂取によって38歳で亡くなっている。
ボクが一週間前くらいに会った時に薬物ギャグを連発しつつ、ボヤきまくっていましたよ(笑)。「俺はやってないんだよ!」って(笑)。
久田:
新井浩文被告が逮捕された時10月末に TABLOでは、この俳優ヤバイ、と報じていたんですけどね。ピエール瀧容疑者はささやかれていたけど、このタイミングかと思いました。あとは、当局としては次は誰か、売人は? 入手さきは? という点に注目していると思う。
吉田:
みうらじゅんさんも「インド好きだから大麻くらいやるかも」とか、いろいろこじつけようと思えばこじつけられる。
(コメントを見て)「町山【※】」って! 町山さんはアメリカで解禁されている大麻をやっている感は全開ですけどね(笑)。あと今回ちょっと話題になった“K子”という女性が『セックス依存症だった私』という本を昔出していて、その中で「ラジオをやっていたテクノの大物グループと交流があって……」とか書いている。
※町山
映画評論家でジャーナリストの町山智浩氏のこと。
高野:
特定されすぎでしょう(笑)。
吉田:
その人が最近「週刊新潮」でコメントをしていたりもして、すぐに絶版になっているその本を読んだんです。そしたら、それこそ「石野卓球さんの愛人だった」ぐらいに思われていたのに、全然違っていて。石野卓球さんとの肉体関係もなければ、ピエール瀧に至っては出てすらこない。
出てくるのは石野卓球さんの弟子の“DJ・T”って人くらい。その人との克明な話は出てきますが……という感じでした。
瀧氏は面白いことをやって成功している“すごい偉大な兄貴”
高野:
僕はもう電気グルーヴ・チルドレンなので、電気グルーヴがなかったら音楽をやっていないから、悪くは言えないというか……。
吉田:
ラジオの影響も音楽の影響も……。
高野:
全部あるんですよ。だからショックはショックでしたけれどね。
吉田:
瀧さんはやっている感があまりにも薄かったですからね。
高野:
テクノは、ドラッグと密接なジャンルと言われて、実際にそうだと思うんです。
吉田:
“K子”って人も本にはっきり書いていましたね。「テクノのクラブはみんなやっていますよ!」「DJもみんなやっています!」みたいな(笑)
高野:
そこまでは僕も断定できないですけれども、瀧さんはそういうのを理解することはあっても、する人じゃないのかなと。
吉田:
運動して酒飲んでというタイプですからね。
高野:
そっちじゃないかなと思っていたのに、瀧さんが……! というショックで、本当に2日間くらい日付の感覚がなくなりましたからね。いろいろな人と連絡を取ったり、それこそ「原稿を書け」って来たりしましたが、訳がわからなくなっちゃいました。僕ら世代でDJとかテクノとかの音楽をやっている人にとっては絶大な存在だったので。
吉田:
そっちジャンルからの成功例というかね。
高野:
そうですね。面白いことをやって成功している、すごい偉大な兄貴みたいな感じで僕らは見ていたので。
吉田:
ラジオとか一緒に出ていても、やっぱり兄貴感がすごいんですよ。忘年会に3、40人が集まって、それこそ町山さんとか山里(亮太)さん、博多大吉さんとか各界のトップ所の人たちが集まっている中でも、場を支配する能力が圧倒的なんですよ。
圧倒的な体育会能力で完全に瀧さんがまとめ上げて、瀧さんが盛り上げて。たくさんの星が集まったら、いちばん輝く星はひとつだけなんですよね。町山さんですら輝きがなくなるぐらいで、瀧さんだけが輝く場になっていくのが、とにかくすごいんですよ。
高野:
キャプテンな感じがします。
久田:
町山さんの存在感を消しちゃうんですか。それは凄いですね。
高野:
僕もお会いしたことがあって、TBSラジオで番組をやっていた時に、ゲストで来ていただいた時なんですけれども、特集コーナーで、今まで面白かったレコード紹介みたいなのを瀧さんがしていて。本当にその番組中だけの会話で、終わったらすぐさっさと帰ってしまう感じで、さすがだな~というか。
俺みたいなファンだったやつと会うのが嫌なんでしょうね。そういう面倒くさい愛情を向けられたくないとかがあるのかもしれないです。
吉田:
最近の『電気グルーヴのメロン牧場―花嫁は死神』にも書いてあったのが、「ファンです」みたいに言ってくるのは「昔の、ある時期のあなたのファンです」みたいな意味のことが多くて、でも俺たちが求めているのは客だっていう。今でもCDを買っているやつは客だから大事にするけど、「あの頃の作品は良かったですよね」みたいな人に対しては、お前は今は客じゃねえだろ! みたいな。
高野:
思い入れがありすぎるやつは面倒くさいのかなという感じだったんですけれど、でも瀧さんはすごい面白かったし、超複雑な気分にはなりましたよね。
吉田:
ハーパービジネスオンラインで、瀧さんと同じような経験をした人間として原稿を書いてましたよね?
高野:
そうですね。僕がやってきたことって今思い返すと、電気グルーヴが今までやってきたことの縮小再生産でしかないなと思ったんですよ。音楽、DJで卓球さんの要素と瀧さんの要素ってあると思うんですけれど。例えば電気グルーヴは日本にテクノを持ってきたように、僕もインドネシアのファンコットというマイナージャンルがあるんですけれども、それを持ってきたり。
でもよく考えたら、これって全部電気グルーヴがやったなと思った。ただ、たまたま逮捕だけ僕が先だったので(笑)。 唯一電気グルーヴより先にやったことだったので、なにかコメントをしなきゃいけないのかなと思ったんです。