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HD DVDはなぜブルーレイに負けたのか? 次世代DVDの座をかけた“規格戦争”について解説

 今回紹介する、敗北図鑑ゆっくりルーザーズさん投稿の『【HD DVD】ブルーレイに負けたら土下座!?規格争いに敗北した理由とは?【ゆっくり解説】』という動画では、音声読み上げソフトを使用し、次世代DVDの座を争ったHD DVDとブルーレイディスクについて解説していきます。

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次世代DVDの座をかけて戦い抜いた企業たち

魔理沙:
 今回は、次世代DVDの座を争い家電メーカーたちが対立した結果、ブルーレイディスク(以下、BD)に敗北したHD DVDについて解説する。HD DVDが敗北した理由を解説する前に、前提となる情報を簡単に説明していく。

 HD DVDとは、DVD規格をベースにハイビジョン放送時代に対応するため作られた光ディスクの規格だ。まぁ簡単に言うと、DVDの進化系って感じで考えてもらえればいい。

 当時、最も普及している従来の記憶メディアであるDVDは、HD画質の映像を記憶するのに容量が足りないという事態に陥ったんだ。

霊夢:
 画質が良くなったりすると、容量も大きいものを求められるもんね。

魔理沙:
 こうして次世代DVDであるHD DVDが東芝から登場したんだ。HD DVDは旧型DVDからの拡張規格でサイズも同じなため、旧式DVDとの親和性が高く、製造ラインの一部を流用できるなどの利点があったんだ。一方でDVDよりも波長の短いレーザーを用いることで、高密度の記録が可能になっているんだ。

 東芝を中心に三洋電機、NEC、マイクロソフトなどのメーカーがHD DVDを推進していたんだ。一方、HD DVDと規格争いをすることになるBDだが、HD DVDがDVDの拡張型規格だったのに対し、BDは新型規格で製造コストが高価なことが特徴なんだ。

霊夢:
 BDはHD DVDとは違った新技術なんだね。

魔理沙:
 そうだ。こちらはソニーやパナソニック、フィリップスなどが推進しており、それぞれの家電メーカーが真っ向から対立することになったんだ。両規格はほぼ同時期に発表され、第3世代光ディスク規格の地位を争っていたんだ。

 なぜこうした争いが起きたかといえば、ことの始まりは2002年2月。ソニーをはじめとするBDグループが新型規格であるBDの規格発表記者会見を開いたんだ。

霊夢:
 BDのお披露目会だね。

魔理沙:
 この記者会見には日本の多くの家電メーカーが名を連ねていたが、東芝はその中にいなかったんだ。

霊夢:
 どうして?

魔理沙:
 東芝はBDを推し進めるソニーの誘いを断っていたんだ。そして別規格である「HD DVD」で、BDに対抗する道を選んだ。

霊夢:
 それにしてもわざわざ対抗するなんて、よほどの自信があったのかな?

魔理沙:
 東芝には勝算があった。BDの誘いに乗らなかったのはBDの多層化は難しく、二層化、低価格化が不可能だと考えたからだったんだ。一方、HD DVDはDVDとの親和性の高さ、製造コストの安さ、協力企業であるマイクロソフトのサポートによるPCとの親和性の高さと、技術的に不安のあるBDと比較すると、多くの面で優位性があると東芝は考えていたんだ。  

 こうして2006年3月に、初代HD DVDプレイヤー「HD XA1」が発売され、本格的に両者の規格争いが始まった。この規格争いでは、HD DVD側が「勝ったとは言わないが圧勝」などと勝利宣言をすれば、BD側も「本当に日本でHD DVDは売ってるんですか?」と高度な煽りテクニックを用いるような状況が発生した。

 しまいに東芝側は「BDとの規格争いに負けたら土下座する」とまで言い出す始末だった。そんなこんなで争いは激化していたわけだが、アメリカを中心に販売を仕掛けたHD DVDの戦略が功を奏し、一時は米国の映画ソフトでHD DVDがBDの3倍売れていた時期もあったんだ。  

霊夢:
 HD DVDが勝っていた時期もあったんだね。

魔理沙:
 しかし、東芝側にも不安要素はあった。BDが技術的な問題を抱えていると目論み、HD DVDを推進した東芝だったが、実は容量の差が負け筋となりうる可能性を秘めていた。

霊夢:
 容量はブルーレイの方が大きいんだったよね?

魔理沙:
 そうだ。というのも、過去にベータマックスとVHSの規格争いが起きた際、最終的に勝負を決めたのは容量の差だったんだ。画質が悪くても、サイズが大きくても、2時間の録画時間が最重要であるというのが、この規格争いの決め手になった。

 このことにより、当初からHD DVDは要領で劣るためBDに負けるという見方もあった。

霊夢:
 でも東芝さんだってそこまでバカじゃないでしょ?

魔理沙:
 その通りだ。容量差が大切なことは東芝も重々承知だ。そこで対策として、HD DVDプレーヤーを値下げするという手に出た。技術的な問題もなく、価格戦略も講じることで盤石な体制をつくったHD DVD。

 ところがHD DVDはBDに敗北した。一時はBDの3倍売れていた映画ソフトも、2006年末にはBDと拮抗する。2006年度内に100万台売り上げの目標を掲げていたHD DVDプレーヤーも、年間販売台数が世界累計10万台という結果に終わったんだ。

 そして2008年1月。それまでHD DVD陣営側だったはずのワーナーホームビデオが、HDビデオをBD1本化すると発表。ワーナーショックと呼ばれるこの出来事が起きた1ヶ月後に、東芝はHD DVDからの全面撤退を発表し、規格争いはBDの勝利という形で終結したんだ。

霊夢:
 いったいなぜ? あんなに調子に乗ってたのに。

魔理沙:
 HD DVDの敗因はいくつかある。ひとつには、やはり記録容量の問題だ。先ほど説明したように、過去の規格争いでベータマックスがVHSに敗れたのは録画時間の短さが原因だったが、結果として同じことがHD DVDとBD間でも起こってしまったんだ。

 エアチェックメディアでHD DVDはBShiを1時間半しか録画できない。一方BDは2時間10分の録画が可能だった。

霊夢:
 1時間半しか録画できないといろいろ不便そうだね。

魔理沙:
 エアチェックメディアは2時間録画できないと、一般に受け入れられないんだ。当然東芝もこのことは理解しているはずで、容量が少ない対応策として2層メディアやHD Recの存在を強調していたが、浸透することはなかったんだ。

霊夢:
 でも記録時間が短くても、BD側が技術的に問題があるからHD DVDが勝つっていう話じゃなかった?

魔理沙:
 それがHD DVD敗北ふたつ目の理由だ。東芝はBDの技術進歩を想定できていなかったんだ。BD側は、東芝が実現性がなく難しいと考えていたBDの技術的問題を、次々に解消していったんだ。

 そもそも何がそんなに技術的な問題と見られていたのかという話だが、BDの第1世代はケース入りとなっていた。極限までビームスポットを小さくすることで、記録密度を上げるという技術を使用していたために、BDは保護層の厚さがわずか0.1ミリだったんだ。その影響により、表面に傷がつくと記録層が破損し、ホコリが付着するだけで読み取りエラーになるといった問題を抱えていたんだ。

 また、薄い保護層ゆえに多層化も難しいと考えられていたんだ。

霊夢:
 それがHD DVDを推進する東芝の勝算だったわけだね。

魔理沙:
 そうだ。まったく新しい技術であるBDは生産が困難だと考えていた東芝だが、実際には技術が徐々に進歩し、第2世代BDはカバーを持たないベアディスクとなり、多層化も実現するなど、予想外の進化を遂げていたんだ。

 長期的な競争をする場合には、技術の進化も視野に入れなければならない。技術の進歩を信用せず、あくまで旧規格であるDVDの延長線上の技術にこだわったことがひとつの敗因になってしまったんだ。

霊夢:
 東芝も悔しかっただろうなぁ……。

魔理沙:
 そして第三の敗因が、低価格戦略の失敗だ。2007年、東芝はアメリカ市場でHD DVDプレーヤーを99ドルという超低価格で販売するという動きに出たんだ。

 プレイヤーを安売りするのは、東芝からすれば後の利益を見越した、いわば先行投資だった。早期にプレイヤーを普及させることで、シェアを獲得することを狙っていたんだ。

 安くHD DVDプレーヤーを購入した消費者に、自然とHD DVDのソフトを購入させる戦略だった。だが、これは失敗だった。99ドルのプレイヤーはよく売れたが、HD DVDとBDソフトの売上比率は2007年中に変わることなく、1:2のままだった。

霊夢:
 疑問なんだけど、なんでプレイヤーが売れたのにソフトが売れないの?

魔理沙:
 実は消費者は、この99ドル格安HD DVDプレーヤーを単なる高機能DVDプレーヤーとして利用していたんだ。つまり、99ドルのプレイヤーを喜んで買う消費者層は、35ドルのソフトをなかなか買わなかったんだ。

霊夢:
 それはそうかもしれない。

魔理沙:
 結果として、HD DVDプレイヤーが売れても、ソフトが売れないということで映画配給会社はHD DVDから離脱してしまった。HD DVDが低価格戦略で勝負している中、BD側は画質、多機能性、操作性といった面で勝負し、新たな規格を試す先進的なユーザーの心をくすぐっていたんだ。

 他にもHD DVDという名称がDVDと混同されてわかりにくいことや、BD対応ゲームハードであるPS3が、日本・アメリカをはじめ世界16カ国で発売されるなど、BD有利な展開が続いたんだ。

 結果的にHD DVDと比較して、製造コストが高価であることが懸念されていたBDも、一度軌道に乗ると量産効果で製造コストを低減することに成功。結果的にBDの都合が良いように全て事が運んだというわけだ。

 こうしてワーナーがHD DVDから離脱し、BDを選択。大手小売店「ウォルマートストアーズ」や大手オンラインDVDレンタルショップもBDのみを取り扱うと決定。東芝はHD DVDからの撤退を表明したんだ。

 東芝が全くの見当はずれだったというわけではなく、単に技術の進歩を見誤り、他社の成長を勘案できなかったことが敗因となる。この話は良い教訓になると思う。

 ブルーレイの勝利の理由は、東芝でさえ不可能と考えた高い壁を越えたことにあるのでしょう。なかなか胸熱な対決でした。解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

【HD DVD】ブルーレイに負けたら土下座!?規格争いに敗北した理由とは?【ゆっくり解説】

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