トランプ相場で大儲け!? 為替・株の行方を徹底分析――注目株は機械・自動車・精密《niconico×大和証券》
おおかたの予想を覆し、ヒラリーを破ってトランプ新大統領が誕生。「アメリカファースト」を掲げるトランプ氏の政策によって、今後の市場はいったいどんな動きを見せるのでしょうか。
niconicoでは、飯田泰之氏(明治大学政治経済学部准教授)を案内役に、大和証券ストラテジストの今泉光雄氏・細井秀司氏を解説に迎え、『《niconico×大和証券》 トランプ新大統領で市場はどうなる?~トランプノミクスと為替と株を徹底分析!』を配信。トランプノミクスの中でも気になる「インフラ投資」や「本国投資法」の解説、為替・株の将来的な展望、年内の市場の動きを左右する注目イベント紹介など、今後の市場を占う内容盛りだくさんでお届けします。
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どうなる!? トランプノミクスの今後
飯田:
今回のアメリカ大統領選の影響で、一時的な混乱回復以上の伸びを経済、相場にもたらしているトランプノミクスの今後……トランプの経済政策というのは、どのようなものなのか。
報道ではメールとセクハラと暴言の話ばかり。漏れ聞こえてくる経済政策についてもTPPをやめる、NAFTAをやめる、メキシコとの間に壁を築くという話だったんですが、そうではなくてもう少し実現性のあるトランプの政策提言について、細井さんから解説いただければと思うのですが。
細井:
こちらにまとめておりますのでご覧いただきたいと思います。トランプはテレビ討論会などで、政策については話していないと言われたんですが。やはりアメリカファーストということで、法人税を引き下げる。それによって生産をアメリカに返すためにいろんなことをしてくるというようなことが言われています。
細井:
あとは個人の所得税、これの最高税率を下げることによって消費を喚起する。それと、アメリカでの雇用を増やす。移民政策もそうですけど、どんどんアメリカ人に働いてもらって……というような話になってきます。
いちばんマーケットで話題になっているのは、インフラ投資ですね。選挙戦の最中にも「クリントン候補の倍の規模の公共事業をやります」というようなことを言っていましたが、足元ではさらにその金額が拡大するのではないか、とういうような形が出てきていて。
それだけ大きいことをすれば、当然財源がいります。その財源のアテが本当にあるのか、もしなければ国債が大増発されることになり、それで金利が大幅に引き上がるというような形で現れてきます。
今まで世界経済というのは、どちらかと言うとアメリカは出口に向かっていますが、日本と欧州はデフレ。デフレ退治をするためにわざわざ低金利にしていたけれど、アメリカは長期金利が思いっきり上がってしまったということで、それに巻き込まれる形で各国金利の市場が上昇します。
ですから、今までデフレがどうする、というような議論だったのが、トランプさんが勝ってから、インフレになるんじゃないの?って言うような形に視線が変わりつつあるのでは。
飯田:
なんと言いますか、まさに減税する、財政出動するとか、かなり強力な財政主導政権で、それこそ田中角栄の列島改造論と(かぶる)。まぁレーガノミクスの後半期のような、結構大盤振る舞い感を感じられる政策ですね。
これはたしかに相場は反応せざるを得ないところでしょう。一方で、もう少しインフラ投資の部分に注目してみたいと思います。やはりいちばん注目が集まるところだと思いますので、今泉さんからトランプ公約の中身について見ていただければ。特に、インフラ投資の規模についてですね。
今泉:
もともと討論会等でも、クリントンさんもインフラ投資に関しては「やる」と言っていたんですけど。トランプさんは最初、「俺はあんたの二倍やるよ」というような言い方をしていたんですね。それで一応、10月に好評を博した計画を……こちらの方をちょっと見ていただきたいんですけど、10年で一兆ドル規模のインフラ計画ということですね。こちらは昨日、ムニューチンさんという、アメリカの次期財務長官になる可能性のある方なんですけども。
飯田:
ゴールドマン・サックス
今泉:
そうなんですね。この方がトランプタワーで記者会見しまして。当初政府がインフラ投資を大規模にするためには米国債をかなり増発する。増発されることによって、米国債が売られると。ということは……。
飯田:
金利が高くならざるを得ない
今泉:
そう、金利が高くなる。それが今相場の理由付けになっていますけど、どうなるかわからないことを今の材料でやってる人は、ほとんどいないんじゃないかと思います。
ただ、このムニューチンさん曰くですね「インフラ投資の資金調達でインフラ銀行創設を検討する」という言い方をしておりまして、民間資金に頼ろうという動きがあるんですね。
そうすると、これは今マーケットでまことしやかに言われていますが、米国債の増発というところには繋がらなくなる可能性があります。ただ、公約としても「インフラ投資をやる」と言ってますし、これはもうある程度規模の問題ですね。
問題は共和党。議会を握っているのは共和党で、彼らは従来小さな政府を目指しています。そうすると財政均衡化とか、そういう方を目指しますので、共和党主導の議会が、このー大規模インフラ投資というものを認めてくるのかどうかと。
飯田:
大統領と与党共和党の力関係の問題ですね。
今泉:
というあたりが、これからの問題になってくるのではないかなと思います。
飯田:
いちばんはインフラ投資が注目されているところなんですけども。結局のところ、まぁ大統領になったとしても”議会”を無視できるわけではない。
この場合、上下院ともに共和党が支配的です。しかも、トランプ大統領は共和党出身の大統領なので、その意味では政策遂行はしやすいんですが、主流派とはかなり距離があると思うと、私自身の感想としては、いわゆる共和党主流派とトランプ氏が言っている政策の中で、いちばん握りやすいのは減税のような気がするんですけども、どうでしょう?
今泉:
減税に関しましては、今35%の法人税を15%に下げると、一応公約でトランプさんは言っています。
議会も法人減税に関してはやると言ってるんですけど、議会が目指しているのは35%を20%に下げるという、議会側の考え方なんですね。ただ、減税に関してはトランプさんも早くやると言っています。議会側も就任後150日以内に法人減税を成立させようというような動きがありますので、これに関しては早めに決まってくるんじゃないかと思いますが。ただ、減税するということは歳入が減る。
飯田:
まぁそうです。
今泉:
インフラ投資をするということは、歳出が増える。
飯田:
はい。お金はどうするんでしょう?
今泉:
お金はどうするんでしょう? っていうことになりますね。その部分で、議会と大統領側がどこで折り合いをつけるのか。その問題は、就任してから出てくるんじゃないかと思いますね。
飯田:
ここで、コメントの中にも出てきていますけど、リベラル派の経済学者、中でもポール・クルーグマンとかは「現在のアメリカの状態だったら、バンバン財政出動しろ。で、金が足りないなら刷れ」という組み合わせをずっと提言していて。
実は蓋を開けてみたらクルーグマンはドリベラルですから、「いちばん嫌いで絶望した」と言っているトランプが、もしかしたらクルーグマン提案を受け入れてしまいそうな雰囲気になっているのが、非常に面白い流れなんですが。
ではその一方でもう少し長い目で見ていくと、トランプの経済政策というと、2つキーになるものがある。
ひとつが、これは私自身もあまり注目してこなかったのですけど、いわゆる「本国投資法」ですね。そしてもうひとつはずっと繰り返し言っている、「保護貿易への転換」。この2つというのが徐々に徐々に、経済の基礎体力であったり、長期的な経済環境を決めていくんじゃないかと思うんですけれど。こういったところの説明は、どの順番でいきましょう?
今泉:
じゃあ先にいいですか? これは昨日出たニュースなんですが、ポリティコというところが、「トランプさんの政権移行チームの内部資料を引用」ということで出てきたんですけれども。100日以内にTPPから撤退する可能性があると。実際にトランプ氏は大統領に決まったあと、まだTPPとNAFTAについては触れていないんですね。
飯田:
なるほど
今泉:
この内部資料のままいくか分かりませんけど、まずTPPから撤退と。あとNAFTA。NAFTAからも、もし一部要求が満たされなければ200日以内に撤退する公算ということで。
NAFTAに関してはカナダもメキシコも再交渉の余地はあると言っていますので、今後、関税等の問題で折り合いがつけば撤退まではいかない可能性があると思います。
あといちばん最後、中国の為替操作国への認定、これは大統領に就任した当日に「中国の為替操作国への認定をする」と言っていましたので、これが大きく貿易摩擦を起こしてくる可能性があると思います。
為替操作国認定ということは、その段階でおそらく中国からの輸入品に対して関税がバン!とかかってきたりする場合がありますので、どちらかと言うと私は、この中国の為替操作国への認定というのが気になっています。
TPP に関しては、今の経済にどうなるってことは多分ないんですね。別に締結されてもいないので、TPPは日本にとってみれば将来の日本の成長の可能性を削ぐというものであって、今の相場に大きく影響するものではないと思っています。
ただ、NAFTAの場合はかなり影響が大きくなると思います。みなさんも新聞等で見たでしょうけど、メキシコで日本の製造業も工場を作って、安い労働力のメキシコからアメリカに輸出しているという動きがありますので。
NAFTA見直しもそうですけども、ここは一部、メキシコの工場で生産している製造業にとっては、影響が出てくる可能性があります。