マイナス30℃の冷凍倉庫から男性の遺体が… 施設の設備対策、従業員への教育不足等の複数要因が重なって起きてしまった労災事故を振り返る
今回紹介する動画は、ゆっくりするところさんが投稿した『【2004年東京】摂氏-30℃の冷凍庫で凍っていた男性…カギを持っていたのになぜ閉じ込められていた?『冷凍食品工場警備員凍〇事件』【ゆっくり解説】』。
2004年に東京で発生した、警備員の男性が冷凍庫に閉じ込められて凍死した事故について、音声読み上げソフトを使用して解説しています。
■暗室の冷凍庫内で進路を失ったか
魔理沙:
今回紹介するのは、以前リクエストをもらっていた、食品製造業での事故事例だ。
霊夢:
食品製造業って、お弁当作ったりとか?
魔理沙:
間違いではないが、もっといろいろあるんだぜ……食品製造と言っても本当にいろんなものがあるが、今回事故が起きたのは、冷凍食品を扱う工場だな。
霊夢:
冷凍食品……。
魔理沙:
その冷蔵庫、冷凍倉庫内で起きた物なんだが今回も例によって、その紹介の一部でショッキングな表現をせざるを得ない部分がある。それに、これはあくまでも概要を伝えるものであり、すべての事柄を詳細に、正確に解説する動画ではない。以上のこと、コメントガイドラインを理解し、了承できる人のみ視聴・コメントしてくれ。
霊夢:
まだどんな事故なのかわからないけど、食べ物関連のことならちょっと気になるし、おっけーおっけーよ!
魔理沙:
ヨシヨシ、それじゃ早速本題に入るぜ。2004年。東京都郊外のとある食品製造会社。この事業所では、主に冷凍食品の製造、販売を行っており、自社工場で商品を加工し、それを各業者へと卸していた。
霊夢:
今ってホント色々冷凍食品出てるもんね。こういう工場もいっぱいあるんでしょうね。
魔理沙:
誰でも知っているような、一般向けの冷凍食品のほかにも、レストランなどの業務用の冷凍食品も本当に色々製造されているからな。この会社に勤める男性「Aさん」。彼は製品の品質管理などを行っていた男性で、この日は作業場の人間の中で、1番早く出勤していた。
こういった冷凍食品工場での作業は主に、検品・梱包・出荷だが、ほとんどの業務は冷凍庫の中で行われる物ばかりだった。
霊夢:
そうなんだ……なんか想像しただけで寒くなってくるわね。
魔理沙:
事業所や保管しているものの種類にもよるが、この工場の冷凍庫では、摂氏マイナス約30度ほどに冷やされていたからな。
霊夢:
そ、そんなに寒いの!?
魔理沙:
Aさんは、冷凍庫の温度や湿度、商品の状態などをチェックするため、出勤後はいつも、管理室でカギを受け取り、冷凍庫へと向かっていた。この日もいつも通りに、冷凍庫のドアを開錠し、重い扉を開いて、中の照明を点けようとして、何かに躓いた。
霊夢:
あぶなっ!
魔理沙:
危うく冷たい床に転倒しそうになったAさんは、とっさに棚の一部をつかんだ。体勢を立て直し、改めて照明を点け、つまずいた「何か」を確認した。彼は当初、棚から床に落ちた商品に躓いたかと思っていたが、床に転がっていたのはそんなものではなく、カチカチに凍ってしまった、大人の男性だった。
霊夢:
ハァ!?
魔理沙:
驚いたAさんは、慌てて冷凍庫を出て、管理室へと走り、すぐに上司に連絡を入れ、その後警察へと通報した。しばらくして、上司や警察が現場に到着。すぐに調査が行われた。冷凍庫に横たわっていた男性は、服や体が白く凍っており、すでに絶命していた。
霊夢:
どうしてそんなところに……ま、まさか殺人事件……!?
魔理沙:
この段階ではまだ何とも言えなかった。現場から男性が運び出されると、身元の特定が行われた。亡くなっていた男性は、この工場で警備員として市内の派遣会社から派遣されていた「Bさん」。
霊夢:
警備員がなんでそんなとこで??
魔理沙:
勤務記録などを調べると、彼は発見される前日夕方から、この日の朝まで1人シフトに入っていた。また、工場内の廊下に設置されていた、監視カメラを調べると、彼は冷凍庫内に深夜0時頃に入っていたことも分かった。
霊夢:
そのときから、Aさんに発見されるまでずっと冷凍庫にいたってこと?
魔理沙:
恐らくはな。状態が状態なので、彼の体を調べても、どれくらい長くあの場所にいたのかは不明だったが、少なくとも4、5時間程度は横たわっていたと思われた。この食品用冷凍庫は、一般の冷凍庫とは全く違い、1つの大きな部屋になっていた。
冷凍庫の奥行きは約30メートル、幅約50メートルもあり、ドアも特殊なもので、開閉するには通常のドアノブではなく、専用の開閉装置が設置され、それを使わなければ開けられないようになっていた。
目撃者などがいないため、Bさんがどういった経緯で亡くなったのか、その詳細は不明だったものの、Aさんが彼を発見した時の状況や、カメラの記録などから、恐らくBさんは倉庫内を確認しようとドアを開けて中に入った時に、照明を点ける前にドアが閉まってしまい、閉じ込められてしまった。
霊夢:
か、鍵持ってたんじゃないの?
魔理沙:
キーは開閉装置に使用するものだったが、冷凍庫ドアは、内部の気密性を保つため、外からの光を一切入れないような特殊な作りになっており照明を点ける前にドアを閉めると、内部は暗闇になり、数10センチ前に何があるのかも全く分からないほど暗い状態だった。
霊夢:
い、イヤァァァァァァァァァ!!!! そんなとこに閉じ込められるなんて怖すぎるぅ!!!
魔理沙:
事故後、Bさんには労災認定が下り、事業所での問題点などが浮き彫りになった。この事故の直接的な原因は、冷凍庫のドアの構造、そして安全対策が不十分だったこと。
現在は冷凍庫のドアが開くと、自動的に一定時間照明が点灯するようになっているが、この当時はそういった装置が備えられておらず、また照明のスイッチと、ドア開閉装置の位置が離れていた。
霊夢:
だから見つからなかったんだ……。
魔理沙:
仮にBさんがそれらの位置を把握していたとしても、突然目の前が真っ暗になったら、方向感覚がくるって正確にはわからなくなっていただろう。
霊夢:
確かに、いきなり暗闇になったらわからないかも……。
魔理沙:
それに、この冷凍庫の中はマイナス30度近い低温。Bさんは当時、警備員用の制服を着てはいたが、それは防寒用ではなかったし、この低温の世界の中では、10分も活動できなかっただろう。
霊夢:
真っ暗でそんな寒さなんて……考えただけで鳥肌が……。
魔理沙:
これはかなりの恐怖だったと思う。突然のことにパニックを起こしたかもしれない。また、彼はこの施設内を1人で巡視していたわけだが本来ならばこういった危険を伴う場所を見回る場合、最低でも2人組で行動し、万が一の時に備えられるようにするべきだった。
霊夢:
確かに……あと1人でもいれば、防げたかもしれないわね……。
魔理沙:
こういった事故が起こった後、「こうしていれば……」と仮定の話をするのは、良くないことなのかもしれないが、どうしてもそう考えてしまうな。
霊夢:
今の価値観とか常識とか、基準で語るのもよくないっていうしね……。
魔理沙:
その後、この事業所では、事業所から人がいなくなる、深夜帯の警備員を増やし、冷凍庫内を確認する際は、必ず2人1組で行うこと。そして、冷凍庫ドアの開閉装置自体に照明をつける、ドア開閉時には、時間関係なく自動で一定時間全体の照明が点灯する装置が取り付けられることになった。
また、これまでは警備員による冷凍庫内の見回り作業時、専用の防寒着を着てから行うことが手順書で定められていたが、実際には警備服のまま入り口付近を見回るだけで、それらの防寒着はほとんど使われていなかった。
霊夢:
それで警備服だったんだ……。
魔理沙:
しかしこの事故を受け、必ず防護服の着用を義務付け、冷凍庫内では警備員同士、お互いに連絡を取り合いながら巡視することが定められ、定期的に安全衛生教育が行われるようになった。
霊夢:
きっと、ものすごい寒さだから、形だけでいいか、って感じになってたんでしょうね……。
魔理沙:
毎日のことだし、警備員たちの業務を監視する者もいなかったので、いつしか省略されていってしまったのかもしれない。これまでこの冷凍庫内で異常が認められたことは1度もなかったみたいだったしな。
これは職場の構造的欠陥や、体制の欠陥、そして労働者への安全衛生教育不足など、いくつかの要因が重なり合って起きてしまった、悲劇的な事故だった。
霊夢:
なんか、どこかひとつでもちゃんとしてたら、起きなかったかもって思っちゃう事故ね……。
魔理沙:
そうだな……Bさんは本当に悲しい亡くなり方をしてしまったが、この事故がきっかけで、同じ事故を二度と起こさないよう、様々な対策が講じられ、未然に防げた事故もあったかもしれない。
霊夢:
そうよね……「マニュアルは血で書かれている」とか言ったりするもんね。
魔理沙:
ああ。こういった過去の労災事故の積み重ねによって、昔よりも少しずつではあるが、労働者の安全が守られて行くということを忘れないためにも、伝えていくことが重要だろう。さて、今回の紹介はこの辺で終わりにしておくぜ。
構造の欠陥、安全対策の教育不足等、様々な要因が重なったために発生した悲しい事故でした。解説をノーカットでご覧になりたい方はぜひ動画をご視聴ください。
『【2004年東京】摂氏-30℃の冷凍庫で凍っていた男性…カギを持っていたのになぜ閉じ込められていた?『冷凍食品工場警備員凍〇事件』【ゆっくり解説】』
・史上最大のプロパンガス爆発「つま恋ガス爆発事故」。静岡のレクリエーション施設で起きた“開きっぱなしのガス栓”による悲劇を解説
・1400人が炭鉱に取り残された爆発事故の恐怖とは? 1960年代の福岡県で発生した「三井三池三川炭鉱炭塵爆発事故」を解説