「日本の大麻解禁には100年かかる」武田邦彦ら研究者が明かす、日本の大麻研究が進まない理由とは
2017年7月にネバダ州、2019年にはカリフォルニア州でも購入が許可される予定と、アメリカで合法化が進むマリファナ(大麻)。他州に先駆けて2014年にマリファナを解禁したコロラド州は、マリファナビジネス先進州として、マリファナ用電子パイプ、マリファナコーラ、マリファナはちみつなど、多彩なマリファナ関連商品を展開、さらには「マリファナ観光ツアー」なども実施しています。
大麻の健康被害とはどんなものなのか、現在の規制方法は適切なのか、その判断の根拠となるような研究行為まで日本では進めにくい状況があります。この状況についてミュージシャンでジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏、中部大学総合工学研究所特任教授の武田邦彦氏、『ドラッグの品格』『大麻入門』などの著書を持つ作家の長吉秀夫氏が解説しました。
※本記事は、2015年9月に配信した「これでキマリ!世界のマリファナ事情~解禁の流れはどこへ向かう?~」の内容の一部を再構成したものです。
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所持で無罪になる確率は宝くじの当選確率より低い⁉
モーリー:
番組にメールが届いています。
日本の法律では、所持は違法でも使用はそうではない。だから外でラリっていて職質を受けても、持っていなければ逮捕されないというのは本当ですか?
武田:
字面から言えば、そうです。裁判だったらどうだか分かりませんが。禁酒法がそうだったんですよ。お酒を禁止しようと思った。そうしたら、あるときにある人が反論した。「私はウイスキーを寝床の横で飲んで、気持ちよく寝るだけだ。それがなんで社会的に悪なんですか」というこの議論が破れなかったので、禁酒法は飲むことを禁止していないんですよ。
移動させたり、販売したりするのを禁止したんです。そこでギャングが出てきたのです。人間の行動を規制するっていうのには限度があるわけです。麻薬はあまり規制はないわけです。つまり人間が何かやったって別にいいわけですから。だからそこのところがちょっと難しい法律になっています。
モーリー:
なるほど。例えば渋谷の円山町のクラブから出てきた人を待ち構えていた私服警官が持ち物検査をした。そしたら何もない、でも明らかに挙動がおかしい。ちょっと来てもらって、尿検査をしたら……。
「吸っていない」と言うけれど、尿検査には大麻の反応が出てきている。
長吉:
だって、使用は関係ないんだもん。副流煙かもしれない。
モーリー:
その場合、不起訴?
武田:
日本の裁判官は大麻が悪いと思っているから大概有罪になりますよ。非常に不当ですが。
モーリー:
それは魔女裁判じゃないですか。視聴者の中で裁判官が1人ぐらい見ている人もいると思うんですけど、どうなんですか(笑)?
武田:
僕は裁判の鑑定をやっているけど、日本の裁判で正義はほとんど通りません。日本って刑事犯罪で起訴されると、99.6%が有罪になる。中国よりひどい。普通の国は60%から80%。だから日本は裁判所がないと言っていいんです。
長吉:
ただ、最近検事で例えば0.2g以下だったらなんとなく不起訴になったりとかっていう場合もあったりしますよ。
武田:
その会話がおかしいんですよ。日本には裁判官はいないんだから、検事が裁判官なんです。
モーリー:
そうすると、例えば活動家の麻枝(まえだ)光一さんという大麻堂の主催者が、度重なる裁判、訴えを起こしていて全部負けているわけですよね。控訴して負ける。それは結局そういう裁判の体質にもある?
武田:
99.6%ということを知らないんじゃないですか。宝くじに当たるよりか確率が少ないから、みんな諦めますよ。
モーリー:
宝くじで高飛びして、コロラドで吸った方が早い(笑)?
武田:
ずっと早い。僕は鑑定を30件ぐらいやっているんだけど、みんな裁判で自分の正義が通ると思っている。「通りませんよ」って言っているんだけどね。
モーリー:
僕の友達も捕まった人は捕まる直前まで必ず「おれだけは捕まらない」ってみんな言っていたんですよ。「おれは捕まらない」、そして、必ず捕まるという法則。
一同:
(笑)
武田:
やっぱり法律を変えてから吸うべきだと思う。
長吉:
それが一番いいのかな。
武田:
僕はそう思う。
モーリー:
そうですよね。法律を変えないでかいくぐれると思ったら、ちょっと日本では甘っちょろいですよね。
大麻規制の閉塞状況を打ち破るには何から始めれば
モーリー:
アメリカの場合だと40年間にわたって、主に若い人たちが20歳で始めて、55歳になるまで35年間頑張って、そろそろ山が動き出したっていう感じなんですよ。でももともとは若者の力が原動力になって、大量な動員があって、運動が起きて、継続されたんですね。日本では、この先どうですか。
長吉:
文化としては、マリファナ文化っていうのは日本でも確かにあるんです。根づいたと言うか、吸っている若者たちもいるんです。なので本当にまず法律を変えるためには、そういう人たちがちゃんと声を出す必要があるし、「国はしっかりと禁固刑まで科しているんだから、科学的な根拠を示せ」ということをしっかり言わなきゃいけないと思います。
大きい波になっていくように頑張るしかないんじゃないかと思いますけどね。
モーリー:
このマスコミによるブラックアウト。裁判官が知りたくないから勉強しない。そして、99.6%を有罪にしてしまう、この身動きがとれない閉塞状態をどこから打破すればよろしいですか。
武田:
日本の歴史をよく勉強してください。
モーリー:
高樹沙耶さんだけじゃなくて?
一同:
(笑)
武田:
ニコ生をヨイショするとニコ生みたいな放送局がどんどんできて、ここが「表現の自由」というものを尊重して、それで日本国をよくしようと思ってやったら、それは効果がありますよ。
長吉:
モーリーさんも含めてここでやったらどうですか(笑)?
モーリー:
とにかく大麻取締法が、かなり理不尽な状態になり、先進国の倫理的、人道的な見地から見ても、観点から見ても、相当かい離している。そして、役人の中にもこれはそろそろまずいだろう、後進国だろうと思っている人もいらっしゃる。
長吉:
それはいますね。
求められるのは植物規制ではなく成分規制
モーリー:
その正義を本来なら、例えばマスコミのような場所で、テレビとか新聞でやるべきです。
長吉:
ちゃんとどういう物質なのか教えなきゃ。僕は手前みそなんですけど、『ドラッグの品格』って本を書いたんですよ。こういうやつなんですけど。
モーリー:
ちょっとなまめかしい女性の絵が。
長吉:
そうなんですけど、これは子どもたち、青少年に読んでもらおうと思って、「ドラッグはどういうものか」ということを全部解説しています。
モーリー:
「日本中の図書館に置きましょう」みたいな。
長吉:
ええ。そうしたら、まんまとこれは有害図書に指定されました(笑)。
一同:
(笑)
モーリー:
指定した団体は?
長吉:
県です。茨城県だとか、北海道だとか、京都とか……。
モーリー:
北海道は自生しているからね。
長吉:
唯一、「麻はいいですよ」っていうことが書いてあって、あとLSD【※】のこととか、ヘロインのこととか全部書いてあるんです。
※LSD
リゼルグ酸ジエチルアミド。非常に強烈な作用を有する半合成の幻覚剤。
モーリー:
なるほど。
長吉:
単に「どういうものなのか」と分かりやすく書いてあるだけですが、こういうのでもだめなんですよ。
武田:
そしてだめな理由を自治体は言わないんですよ。だから「有害図書に指定しろ」って言う方がやましいんです。やましいから隠れて言うの。圧力をかけるわけ。
長吉:
理由をちゃんと教えてくれって言ったのですが、そうしたら、こうですよ。真っ黒、内容(笑)。
モーリー:
つまり、これは公開できないということで。送ってきたけど、黒塗り。昔のアメリカのCIA文書みたいですね。
長吉:
こういうことが平気であるんですよ。
武田:
だから表現の自由の違反。もちろん書いたものが有害物質と認定されてもいいですよ。だけども有害物質と認定した根拠を示してくれないと。根拠を示さないとナチスと一緒ですよ。ただ単に「だめ」って言われて、理由を聞いたら「理由は言いません」って。それが自治体ですよ。これでは民主主義と言ないですね。
モーリー:
アメリカだとそういうときに真っ先に訴えが起こされたり、集団訴訟という流れがあったりするんですけど、こういうときはどうするんですか。
武田:
日本の場合は、「みんな」が言ってりゃだめだから。その「みんな」っていうのはNHKがつくるから。
モーリー:
NHKの人がコロラドで思いっきり気持ちよく大麻を吸って、「ああ、いい思いをした。さあ、これはどう報道しよう」みたいな、そこまで持っていけばいいのかな?
武田:
黄色人種だから、いい気持ちがするかどうか、分かりませんよ。
長吉:
いや、いい気持ちはします。
一同:
(笑)
モーリー:
すごいですね。そうすると、ここだけの会話から論理的に導くと、直ちに合法化しても日本では「何も問題はない」という結論が導かれるんでしょうか。
武田:
サンフランシスコ平和条約のときに日本の法律になったものを壊すためには、合理的なデータでもって壊したらいい。まず第一に大麻っていう植物を規制するんじゃなくて、成分で規制する。それでテトラヒドロカンナビノール【※】がどのくらいあったらいけないとか、そういう規制をする。
それと並行して、ちゃんと日本人に対する薬効を調べて、お酒とか、たばことか、コーヒーに対してどうだと。そのデータを出したら、おそらくお酒、たばこよりずっと大麻は薬効がないからやめようってことになると僕は思うんですけどね(笑)。
※テトラヒドロカンナビノール
多幸感を覚えるなどの作用がある向精神薬。
モーリー:
ほかの国ではそういう結果が出ていますよね。要するに、合理的、つまり、サイエンスを持ってきて、風評や情緒や先例主義、慣例主義ではなく、まずはちゃんと客観的に調べましょうと。