『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は“ブラタモリ”的な楽しみ方ができるぞ! フィールドに遺る痕跡に注目したら「100年前のドラマ」が見えてきた話
歩いてみて初めてわかる語られていないストーリー
岡田:
「両側を崖に挟まれた狭い街道ならば敵に囲まれなくて済む」ということで双子山の山道を通っていたリンクたち。ところが、そこを抜けると、クロチェリー平原が広がっていて。そして、ここでの戦いで、100年前のリンクは力尽きて息絶えてしまうんです。
なぜ、超絶的な剣士であったはずのリンクが倒れたのか? 双子山の狭い街道を抜けた平原で、ロボット達から一斉に襲われたからです。それまでは、民間人たちを守りながらの撤退戦のしんがりを務めて、背後から迫る敵だけと戦っていたリンクだったんですけど、双子山を抜けた辺りで四方から敵に襲われ、倒れてしまいます。
この時点ではまだ能力も発現していないゼルダ姫を連れたリンクは、一緒に戦ってくれる軍隊もいない中、ほとんど1人だけで撤退戦をしていたわけです。そのおかげで、民間人たちは奇跡的にハテノ砦に逃げ込むことに成功しました。
この、100年前に起きたリンクたちのハテノ砦までの逃避行というのは、クロチェリー平原に残っているガーディアンたちの亡骸や、町や村の廃墟を見ればわかるようになっているんですよ。
僕も最初は、こんなことはまったくわからなくて、街道を移動している途中も「馬で通るには便利だな」とか、町の廃墟を見つけた時も「あ、なんか宝物が拾えるかな?」という浅ましい心でしか見ていなかったんですが、これは、ゲーム攻略をしている最中ならしょうがないんですよ。
でも、一度、エンディングを迎えた後で、しみじみと歩いてみて「ここは、こんなにすごい場所だったんだ」や「ここは、すごい激戦地だったんだ」とか「ここでは、民間人も一緒に戦ったんだ」ということがわかるんです。
例えば、倒れたガーディアンの残骸の周りに、“木の棒”とか、“棍棒”みたいな武器が落ちているんですが、僕がクリア前にこれを見つけた時には、「お宝かと思ったけど、どうしようもないゴミ武器だな」と思っていたんです。
だけど、「そんな武器が周りに落ちているということは、ここを通る段階では、民間人達も、粗末な武器を手にリンクと一緒に殺人ロボットに立ち向かっていたんだな」と、そう思った瞬間に、背筋がゾクゾクとしてくるんですね。
ゲーム世界の歴史すら感じさせるオブジェクト配置
剣士リンクとゼルダ姫は、逃げる民間人を守りながらクロチェリー平原で戦った末、すべての持てる力を出しきったリンクは、力果てて倒れてしまった。そして、絶望したゼルダ姫は、ついに封印されていた能力を使ったんです。
そんな出来事から100年後のクロチェリー平原には、ハテノ砦の前方に地平線まで広がっている大地が残っているんですけど、見渡すかぎり、ガーディアンの残骸で埋め尽くされているんですよ。ゼルダ姫の能力によって倒された、何千という数の死骸が、地平線までウワーッと広がっているんですね。
これも、ゲーム攻略の最中は「ここら辺、ガーディアンの死骸が多いな。生き残っているヤツがいるんじゃないか? 怖いなあ。でも、なんかいいものが拾えるかもな」と思う程度なんです。
だけど、ゲームが終わって、すべてのお話が頭の中に入ってくると、ここがいかにすごい激戦地だったかということがわかる。「ここで人間が助かったからこそ、ハテノ砦の近くにハテノ村というのが生まれて、100年かけてようやく復興しつつあるんだ」ということが身にしみてくるんですね。
こういうことは、ゲームの中では一切説明してくれず、そこら辺をウロウロしているオッサンとか、お爺さんとか、お姉さんたちが、「昔、こんなことがあったらしいよ」ということを断片的に話をしてくれるんですけど、今、話したような100年前の出来事を直接的に教えてくれるわけじゃないんです。
でも、ゲームをクリアして、「100年前に、どんなことが起きたのか?」ということを頭に入れた上で、ブラタモリ的な想像力で補完しながら歩いて回ると、いろいろと読めるようになる。
例えば、「双子山の特殊な地形のおかげで、リンクは民衆を守りながらもなんとか戦い続けられたんだな」ということから、「騎士とか兵隊たちは全員、王国を守るためにアッカレ砦に行ってしまっていた中で、どんなに苦しい戦いだったのか」ということまで想像できるんですよ。
―関連記事―
本物ですか!? 木で作った『ゼルダの伝説 BotW』回生のマスターソードの錆と汚れの表現が素晴らしい。本当に時間がたって古くなった様に見えます
『ゼルダの伝説 BotW』を59歳評論家が大絶賛。「普通のゲームならツマらなかったり辛かったりする部分が抜群に面白い!」
―関連動画―