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「お坊さんは人と釈迦の教えという情報を繋ぐメディアである」元DJ住職に何故テクノ法要をするのか?聞いてみた

いきなりマニアックな曲をかけて、お客さんに分かるのか? 理解してもらえる形で出さないと無理だと言われた

──DJをされていた頃も、嫌だと思いながらも仏教の勉強はされてたんですか?

朝倉:
 していました。そこは親に感謝しています。僕が小さい頃から「あんたは住職になるのよ」と言われて育ったので、「最低限、住職の資格だけは取りなさい」とそこだけはキチッとさせていただいたのがやっぱり良かったんです。それで気が付けるベースを作ってくれたんです。

 そこで思ったのが、宗教って、知識じゃないんですよ。

 知識はどれだけ入れても知識でしかないんです。それが腑に落ちる、体に染みていく、心に染みていくという経験を積んでいかないと本当の自分の内から湧き出る「ありがたさ」とか、そういう気持ちにはなれないのです。

──DJを始められる前から嫌々ながらも知識はあったということでしょうか?

朝倉:
 そうです。知識はあったから、徐々にDJや照明のオペレーターをやって、そうした色々な経験を基にそれが腑に落ちていったんです。

 先輩とか上司から、「こうした方が良いよ」「あれはアカンやろ」とか、いろんなアドバイスを受けていくと、最初は自分よがりのDJプレイだったりしたんですよ。

 やっぱり「お客さんのことを考えなさい」とか言われました。たまに僕の好きなマニアックな曲をかけて怒られたりとか、「(いきなりマニアックな曲をかけて)これがお客さんに分かるか?」と。「ちゃんと自分のセンスは大事だけども、それを直に出すんじゃなくて、理解してもらえる形で出さないと、それは無理だよ」というふうに。

「駅前ディスコ法要」で機材を操作するDJ

DJも、お坊さんも裏方である

──そこで、コツをつかんで、もっと自分の色を出していこうとか、アーティストとしての方向もあると思いますが、朝倉さんはどうだったのでしょうか?

朝倉:
 僕は最初からそうした才能はない人間で、DJとしてもそんなに凄いDJでも何でもないと自分では思っていました。友達にはすごくセンスも良いし、テクニックもあって、お客さんの惹きつけ方のすごく上手いやつがいて、今では大阪の重鎮DJとして未だに活躍しています。

 彼が身近に居たことで、自分は彼の凄さがわかっているから、「俺なんか凄くないんだ……」という思いの方が強かったんです。だから僕が音楽で食べていこうというなら裏方の楽しさも分かっていたし、裏方しかないなと思っていました。今のお坊さんの仕事も裏方だと思っているんです。メインは仏さんですから、僕は宣伝担当者でしかないんです。本当は、僕が目立つ必要は一切ないんです。

──クラブやディスコに当てはめると、オーディエンスはお寺に来る人や檀家さんであって、音楽や照明などで生まれるその場の雰囲気が仏様というような感じでしょうか?

朝倉:
 そうですね。裏方として、その提供を手伝うのがお坊さんの仕事であって、お坊さんが「僕のことを信じなさい」とは一切言わないでしょ? 言うのは、「阿弥陀さんを信じましょう」とかなんです。

「駅前ディスコ法要」では、朝倉住職は裏方として映像も担当した。

仏教は、生きている人にとって必要なものなのだと伝えたい

 ここで、「駅前ディスコ法要」のニコ生を終えたドワンゴの高橋薫が合流。テクノ法要の最初のニコ生からその進化と発展をより身近に見守ってきた高橋を加えて、現代における仏教の役割など、より深く掘り下げたお話を聞かせていただいた。

──自分にとっての、これまでの仏教のイメージはお葬式とその後に続く法事でしか関わらないというものだったのですが、やはりテクノ法要は目指すところが違うように感じています。

朝倉:
 亡くなられた時、人の死をご縁とするものも当然仏教としてはあるのですが、仏教はそれだけじゃないんです。それはそのごく一部でしかないんです。

──かつての時代、浄土宗や浄土真宗が成立した鎌倉時代には、人の死と、死んだ後に極楽浄土に行けるのかどうか? が多くの人の心配事であり、そうした宗教・仏教が応えていたのに対して、現在の我々はそうした直接的な死とは別のところで、何か見失ったり迷ったりしている状況があるから、テクノ法要をされているのでは? と思うんです。

朝倉:
 僕がテクノ法要をやっている一番の要因は窓口、仏教に興味を持ってもらうための入口になりたいという想いがあるんです。
 そうじゃないと「人が亡くなった時しか必要ないじゃん」と、そういう関係ではなくて、生きている自分にとって必要なものなんだよということを僕はどんどん広めていきたい、伝えていきたいことなんです。

駅前ディスコ法要で読経する朝倉住職

高橋薫(以下、高橋):
 僕は、前々から仏教や宗教は好きではあったんですが、正にテクノ法要が入口になった結果、いろんな仏教の本とか読んだり、昔に読んだ本を読み直したりしたんです。
 朝倉さんには、テクノ法要を入口にした人たち各々が、仏教の素敵さを発見していってくれるだろうという仏教に対する信頼もあるんだろうと思うんです。

朝倉:
 僕が気を付けているのは、テクノ法要の後でお話をさせていただくとき、浄土真宗に偏らないように話をしたいんです。仏教全般に言えるようなお話として、お釈迦さんがメインのお話で、それをきっかけに色んなお寺に波及するようなものにしたいと思っているんです。

高橋:
 もちろん朝倉さんは浄土真宗の方ではあるんですけど、それだけではない宣伝マンという感じがすごくあります。これまでにニコニコがお寺とか神社に生放送とかのお話を持っていった時には、だいたい最初に怪訝そうな顔をして断られて、そこからどうお願いしていくか? という感じなんですが、朝倉さんは最初から「ありがとうございます!」って言われて、逆にびっくりしたんです。

朝倉:
 だって、凄い宣伝になるじゃないですか?

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