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なぜ国連から日本のマンガ・アニメは敵視されるのか? 外圧から見える日本の児童虐待問題の裏側 【山田太郎と考える「表現規制問題」第2回】 

子どもを守るための法律という立法趣旨から離れてしまっている

山田:
 「性的虐待や性的搾取から児童(18歳未満)を保護することを目的とする」……あれ? この法律って子どもを守るためにあるんですよね? ところがこの条文で考えるなら、前述したように子どもが虐待されていても「ポルノじゃないと取り締まれない」ということになっている。児童ポルノが問題なんじゃなくて、児童の性虐待を取り締まる、または児童性虐待をした記録物などをこの世からなくそうということを目指さなければいけないはずでしょ!? 児童ポルノかどうか……つまり裸じゃなければ虐待されていてもこの法律は適用にならない。だから、虐待されているビデオを撮ったとしても、この3項に当たる“性的な部位”にモザイクなどが施されていたらOKということになってしまう。それじゃ子どもは守れないじゃんって。

荻野:
 ですね。

山田:
 なんでこんなことが起こってしまうのか!? 個人法益と社会法益というのがあるのですが、個人法益は子どもの権利や子どもの虐待をなくそうっていう“個人を守る”もの。社会の秩序を維持するためにポルノをなくそうという法律にしたことで、入口は個人法益なのに、できあがった法律の出口を見たら社会秩序系の法律、社会法益になってしまっている。だから、矛盾を起こす。

智恵莉:
 なるほど。

山田:
 CGポルノもそういう意味で実在性は認められたけど、「子どもが被害者であるかどうか」ということに対しては、もう一段階問われなきゃいけないと思う。あくまでも法律は、子どもの虐待や関連した被害をなくしていくことに言質を取っていくべき。それに対して付帯をつけた張本人が私ですから。それにも関わらず立法趣旨から離れて、次々と社会風潮を正すような判決文が出ている。

山田:
 付帯でそういうことはしてはいけないと書いてあるんです。法律の解釈としても、立法府の我々が参議院の中で確認しているんですから。それにも関わらず、はみ出して判決を出すというのははっきり言っておかしい。こういうことが当たり前になると、警察が好き勝手に法律を解釈して、適当に裁判所で「あーでもないこーでもない」と進めて、我々国民の代表が国会で決めた法律をどんどんどんどん歪めて適応できることになる。それでいいんですか? って話になる。

荻野:
 難しいのは、一般の人からすると刑法の細かい部分を把握すること以上に、「その人が何か悪いことをしたか否か」を捉える。例えば、今回のCG児童ポルノ事件の話。他人の顔をそっくりに書いて勝手に裸の絵を描くって、普通はやっちゃいけないことじゃないですか? 勝手にそんなことするの!? って(笑)。だけど、児童ポルノの法律の法益や立法目的、あるいは条文の決められている構成要件に照らして、「その部分のみで罰する」って話になると、それはそれで別の問題。とは言え、なんとなく全体的に悪いことをしている雰囲気があるから、もうそこで考えを止めてしまって、本来の趣旨から外れてしまうとまったく関係ないところに変な影響が出てしまう恐れもある。

智恵莉:
 (頷く)

荻野:
 児童ポルノの法律の中で一緒くたに考えないで、別の法律の構成を考えてくださいねってことですよね。あるいは被害にあった人を助けるための別の手続きというのを踏んでくださいねってことだと思うんですよ。

山田:
 そう。あと、名誉毀損を含め、あくまでもこの法律の適用が、児童の虐待を個人法益として守っていく……それを出口としていくことです。ところが、なんとなく「ヌード」「裸」、こういったことがダメだという風に解釈が広がって適用されてしまうと、子どもをないがしろにした法律になることにつながる。もっと虐待の事実というものに対して考えていかないと! 本当に日本から児童虐待や児童性虐待をなくしていくための法律や立法……そこに尽力しなきゃいけない。

伝わってこない児童相談所の実態

山田:
 智恵莉さんも子どもを持つ親として、児童虐待については気になるところがあるんじゃないですか?

智恵莉:
 そうですね。さっき仰っていた加害者の約7割が親というのはビックリです。しかも、その問題に対して国の担当があやふやだということも驚きました。

山田:
 人としての感情が一番備わると言われている0歳~2歳までの期間に、施設へ入ってしまうとその後が厳しいと言われています。そのためにも特別養子縁組などの仕組みが日本には必要なんだけど、無整備だったり、施設に入れちゃえば安心みたいな風潮が強い。

智恵莉:
 そうですね。

山田:
 乳児院の実態も極めてひどい。人手不足もあるけども、15人ほどの子どもを一人の看護師が見ているというのが現状で、ミルクもろくにあげられない。

智恵莉:
 ミルクを自動で飲むような光景を見たことがあります。

山田:
 機械でね。言い方は悪いけど、家畜のような扱われ方ですよ。そういう事実を行政は見せようとしない。あとは心ないジャーナリストがいろいろと書いちゃうんだってね。

智恵莉:
 ははぁ~。

山田:
 行政視察でいろいろと見させていただいたんですけど、例えば心身上問題のある子どもや大暴れする子どもを別室に移して学習させたり、冷静にさせたりするケースもあるんですよ。だけど、それを「折檻部屋」と書いたりするジャーナリストがいる。対処としてやらざるを得ない状況があるにも関わらず、「折檻部屋がある」とか、「児童相談所の中に牢屋がある」とか、わざとらしく誇張して書くんだよね。

智恵莉:
 事実を書いてほしいなぁ。

山田:
 児童相談所には、社会福祉を勉強してきた子がたくさん来るけど、言い方は悪いけど(子どもを)制圧する、と。そういうことが起こると児童相談所は崩壊してしまう。働いている人も人間ですし、一般の役人でもあるわけです。その人たちの立場も考えつつ、何が問題かってことばかりではなく、事実を丁寧に伝えて、どうしたら解決するのかということを問わなきゃいけない。でも、全部が課題みたいなものだから一気にやらなきゃいけない……だから見せないんです。私は入れたけど、秘書は入れてくれなかったくらいです。こういうことこそ、正しく伝えていく必要があるんじゃないかなぁと思います。

荻野:
 うん。

山田:
  里親になることも日本では非常に厳しくて、「片親じゃダメ」とか、職業も問われる始末です。

智恵莉:
 そうですね、あと年齢とかもありますよね。

山田:
 子どもを育てたことがなきゃダメだとかね(苦笑)。子どもがいないから、里親でも預かりたい人がいるのに、「それじゃダメ」って、それこそ本当にダメだよ。

智恵莉:
 うんうん。

次回は「通信の秘密」と表現の自由のつながりについて

山田:
 あともう一つ。親権停止に関しても、日本は昨年10数件という具合に数が異常に少ない。僕はその数を調査するために、イギリスやドイツ、オランダなどに行きました。ドイツは3万件、イギリスでは年間5万件と逆に多すぎる。バランスを取るために、親権停止に反対する弁護士団体のところへも行ったんですよ。彼らから日本の件数を聞かれて、先ほどの数字を答えたら、「それは少なすぎる」ってひっくり返っちゃって。

荻野:
 必要なことをしてないってことですよね。

山田:
 うん。日本の民法では、子どもは親の所有物というような発想で作られちゃっている。子どもの権利を尊重するという形になってないんですね。だから7割の子どもが、実の親の下で虐待にあっているという事実を捉えた上で、民法まで踏み込んで改正するなり、子どもの人権を守っていかなきゃいけない。でも、民法をいじるとまたいろいろと言う人たちがいて非常に難しい。最近は“連れ去り”の問題などもあるので。

智恵莉:
 はい。

山田:
 虐待されている子どもの逃げ場がない。親も疲弊している現状の中で、総合的に考えなきゃいけないってことで、「子ども庁」を作るべきだと提案しているんですね。子どもを産めとか、合計特殊出生率を増やせとか言っているけど、子どもを育てられる環境じゃないんですよ。子どもの貧困や経済的な事情だけではなく、いろいろな問題が根底にある。そこをキチンと考えていかないと! 一方で「マンガ・アニメ・ゲームが虐待の根源である!」っていうのは、言いがかりだし、本質からズレているし、言いすぎなんだよね。

智恵莉:
 そうですね。子どもにまつわる問題ってたくさんある。この番組の中で、山田さんはいろいろとご紹介してくれていますので、ユーザーの皆さんも興味を持ってくださったらうれしいですね。

山田:
 今回は外圧&ブキッキオ騒動から児童ポルノ規制法までお話ししてきましたが、次回は通信の秘密に迫ろうと思います。

智恵莉:
 はい。

山田:
 表現の自由というのは、インターネットはもちろんのこと通信の自由があることで成立している部分もありますが、それがいま侵されつつある。

荻野:
 大変なことですね。

山田:
 通信の問題に関しても、表のメディアはやらない。自分たちはマスに対して放送をやります、と。インターネットって何が一番問題かというと、いわゆる中間業者、流通支配というものがあって、発信する側と受ける側がいますよね。間にいるグーグルやヤフーなどサーバーを司っているところが、自主規制という名の下に通信の秘密を守らない、または遮断してしまうという……。通信の自由がなければ表現の自由も脅かされる。そういった問題を取り上げていきたいと思いますので、次回も楽しみにしていてください。

智恵莉:
 今日は皆さん、ありがとうございました(お辞儀)。

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