“タトゥー差別”について日本の刺青事情を評論家が解説――彫師は医師免許がないとダメ?技術革新で皮膚がデジタルサイネージ化する
💡ここがポイント
●りゅうちぇるさんに端を発した「タトゥー差別」問題
●小飼弾氏は「タトゥーがだめなら化粧がだめになりかねない」とコメント
●技術革新によるデジタルタトゥーの可能性について語った
タレントのりゅうちぇるさんが、SNSで両肩に妻のぺこさんと生まれたばかりの長男の名前のタトゥーを刻んだと明かしたところ、賛否両論の意見が相次ぎ、話題となっています。
これを受けて、9月3日の「小飼弾のニコ論壇時評」で、書評家の小飼弾氏とフリー編集者の山路達也氏がこの話題に言及し、日本の法律ではタトゥーは規制されていないことを挙げ、「学校の校則と同じ」と一刀両断。今後、デジタルサイネージ【※】化したタトゥーが登場する可能性などについて語りました。
※デジタルサイネージ
電子看板のこと。
日本でのタトゥー差別は「校則で拘束しようというのと同じです」
山路:
タトゥー差別があるということで、りゅうちぇるという芸能人が自分の子供の名前とかをタトゥーを入れているみたいな話をして、それに関して「それは別にいいことじゃん」というそういう議論があったと。日本では銭湯とかで、タトゥーを入れている人は入れなかったりとか、そういう差別が。
小飼:
学校の校則と同じでしょう。タトゥーを入れている人が公共の場所に入っちゃいけないなんていう法律は日本にはないはずですよ。たぶんそれでガチに法に訴えると、銭湯は負けるはずです。実際にそういう判例は出ていなかった?
山路:
そうですね。タトゥーを入れてる人の入店を拒否した店が訴えられて、損害賠償を命じられた例もありますね。
小飼:
だって、「タトゥーはだめ」って言ったら化粧もだめということになりかねないじゃん。
山路:
取れるか取れないかの違いにすぎないから。
小飼:
タトゥーだって「レーザーを当てれば取れるじゃん」って言い張れるよね。
山路:
日本ではある意味、ヤクザとかをあまり事を荒立てずに入れずに済むような方法として、タトゥーを……。
小飼:
だからちゃんと法でやれと。校則で拘束しようというのと同じです。日本は法治国家でしょう。校則を作り続けて積み上げて、法に訴えられれば吹き飛んじゃうような生徒手帳をつなげるような社会。中国とは似ているようで似ていないような拘束国家になる。
山路:
暗黙の空気みたいな感じで、明文化されていないけれど知っていないと弾かれるみたいな。
今後はタトゥーを彫るには医師免許が必要に?
小飼:
それよりも問題というのは、タトゥーに関しては医師免許が必要だという地裁判決が。これも大阪地裁か。また大阪か、みたいな(笑)。
山路:
タトゥーの彫師で医師免許を持っている人はそういなさそうですね。
小飼:
いるの? そんな人。
山路:
その医師免許が必要なのかと。
小飼:
確かに肉体を侵襲するので、理論でいけば皮膚に何かを入れるというのは、全部医師免許が必要だっていうふうに言い張れるかもしれないですね。
山路:
鍼灸師の資格がないと鍼も打てないですもんね。
小飼:
「チップを埋め込むのも医師免許が必要だ」と。たとえば注射を打てる人というのは限られているじゃないですか? 日本はかなり遅くなって、例えばインスリンみたいな持病を持っている人が自分の薬を注射するという権利は得たんですけれど、それ以外のものというのは、医師でないと打っちゃいけないことになっています。
そう考えると、確かにタトゥーを彫るには医師免許が必要だという理屈も成り立つは成り立ちますよ。でもタトゥーを入れるというのは、医療行為なのか……。
山路:
普通の感覚では医療ではない?
小飼:
高須クリニックのような美容整形外科であれば、タトゥーを入れていいのか?
山路:
話題になったら、高須院長はその辺に乗り出して来そうな気はしますね。ただタトゥーって肝炎ウイルスに感染する確率は相当高くなるみたいですね。
小飼:
そうなんですよね。だから実は医療リスクというのもあるんですよね。タトゥーの針で肝炎を移されるとか、だからそうやって考えると医師免許を要求するというのも成り立ちそうです。けれども、これって免許制になっちゃうような気がしないでもないですよね。
山路:
彫師の免許、みたいな感じで?
小飼:
そうそう。
山路:
確かにタトゥーに関しては、衛生とかがきちんとしていないところで肝炎に限らず感染症みたいな事があったりするから。
小飼:
やっぱり体の中に異物を入れるので、肝臓は痛めるそうです。僕の友人で立派な彫り物を入れている人がいるんですけれども、彫り物を入れたら酒にガックシ弱くなっちゃったそうです。
山路:
わかるくらいに弱くなるんだ。