ジブリ新人アニメーター募集の目的は“伝統芸の継承”? 「宮崎駿監督の最終作を一緒にやったとなったらアニメーターにも泊が付くよね」マンガ家が考察
スタジオジブリは5月、新作長編アニメーション映画制作のための新人スタッフ募集を開始した。
上記の話題をうけて、マンガ家の山田玲司氏がコメント。「新人アニメーターを募集して、そこでいろんな人たちへの、伝統芸の継承があるわけだよ。」と持論を展開した。
宮崎駿は『風立ちぬ』で綺麗に引退したかった。
乙君:
スタジオジブリ復活宮崎駿監督「引退撤回」で新人募集というニュースがありますが。
山田:
俺ね、結構『風立ちぬ』好きだったのよ。良い映画だよ。
乙君:
絶賛していましたね!
山田:
何がいいっていうとね。オタクはオタクでいいんじゃい! 人は好きなものだけやっていいんじゃい! 時代? 関係ねえ! 国連、脱退? 忘れる、忘れる! 自分が作ったもので、何万人が死のうが関係ねえ! というエンジニアの叫びをアニメーターが作った。
つまり、「アニメを作ることによって、喜ぶ人もいれば、悲しむ人もいたはずだ、でも関係ねえ! 俺はこれをやりたかったんだ」という、ひとりの個人の遺言だったんだよ。こういう傑作を描いて、気持良く引退したかったと思うんだよ。
ただ、そのクリエイター魂、自分は生きている、何かしたい、そして何か描き始めたら、やっぱり、やりたいとなっちゃうところも俺は好きなんだよ。だから「宮崎駿は謝罪会見をしろ」と、岡田斗司夫さん言っていたけど、別にしてもしなくてもどうでもいいよ。
乙君:
(笑)
山田:
ただし、みんなが待っているものと、これから宮崎さんが作るものが、どれだけ悲しい距離があるかっていうのは、もう作る前からわかっちゃっているんだよ。
みんなが、本当に観たいジブリ映画と言ったら、やっぱり『風の谷のナウシカ』であり『天空の城ラピュタ』であり、せいぜい『もののけ姫』くらいのものを待っているわけだよ。
もう、どれだけ頑張ったって、みんなが、がっかりするんだよ。黒沢明が最後に撮った『夢』とか、あのあたりの映画もそうだけど、大監督が最後に作る、おじいちゃん映画というジャンルがあるんだよ。そういうのを駿につくらせるなという話。
乙君:
おじいちゃん映画(笑)。
山田:
そりゃ、いくらかは儲かるよ、おじいちゃんだから。だけど、それは遺言になっちゃうんだよ。もうノスタルジーと遺言なんて、それは、『風立ちぬ』でやったじゃんという話なの。
乙君:
やった。
山田:
もうそんなのみんな待ってないよな。だったらナウシカ撮ってくれよと、本音で思っているんだったら。
新人アニメーターを募集して、そこでいろんな人たちへの、伝統芸の継承があるわけだよ。箔付きになるよね。俺は宮崎さんと最後をやった。だけど、最終的には興行的なジャッジに晒されて、最終的に宮崎さん痛い、悲しい思いをする。
だったら一番いいのは何かというと、宮崎さんを助けられる人が数人いるんですよ。