「アニオタで圧力団体を作ればいい」 政治はアニメ業界の危機を解決できるのか
好きを仕事にすると「やりがい搾取」で買い叩かれてしまう?
吉田:
でも逆に言うと、そんなスーパーアニメーターがいる世界で、20代の人たちって、そうとう頑張らないと仕事にならないハズで、20代、30代の一番初めの入口のところで、メチャクチャ厳しい門くぐり抜けないといけなくなっちゃっているわけですね。
今日の話としてちょっと思っていたのは、政治家の人にやってもらえることって何なんだろうって思ったんですけど、こういうところって政治家の手助けってできるものなんですか?
大坪:
そうですね。雇用形態の問題があるので、なかなか政治的な、制度的なというところは、直接的に何かを改善できるっていうのは、難しいかな?って正直思うんですね。
ただ、やっぱりアニメーションの業界で働く方が、どうしてもアニメが好きなんでしょ? 好きなことやっていれば安い仕事でもいいんでしょ? みたいな話はありますので、そうではなくて、業界で働く方々がみんなスーパーな方々で尊敬できる方々が作品を作られている。そういう基本的な啓蒙というのはあってもいいのかなと思います。
吉田:
ちゃんと、技能を持っている人に対してのリスペクトをすり替えられちゃっている部分が、やりがい搾取なんて言葉がありますけど、そういう事に近い事が起きているのかもしれない。
大坪:
そうですね。搾取というよりは、昔から変わってないっていうのが、実態なのかなと思いますよね。
正社員の少ないアニメーター、この国はフリーランスがすごく生き辛い
宇野:
このあと出てくるかもしれないですけど、これが正社員で年金も保険もちゃんとしていてこの数字だったら意外と悪く無いじゃんって思うかもしれないけど、全然そんなことないと思うんですよ。業種的に正規雇用っていないですよね。
僕も10年ぐらい前からフリーランスでやっていますけど、この国ってフリーランスがすごく生き辛い世界なんですよね。仮に、年収自体あったとしても不動産もまともに借りられない、非常に国民保険は住む場所によっては、馬鹿高い。そして年金等も自分で払う。その状態でこの待遇だったらちょっとね。僕はしんどいと思いますよ。
平均とあまり変わらないから良いじゃんってことだと、自分の技能で食べている人、自分でリスクを背負っている人たちなので、国策として伸ばしていこうという産業にしては、もう少しお金がないと。僕は行政の保護が必要だと思いますよ。保護って言ってもいろいろな形があると思います。
具体的には税金と保険。ハッキリ言ってしまうと、僕は直接補助金出すのはリスクがあるから良くないと思う。地域アートみたいになっちゃいます。それだと競争力も下がっていくし、碌なヤツも集まってこないので、そのためには行政が動いて、とにかくある種の優遇税制です。あとは保険ですよね。このふたつに対して手を伸ばしていって、もうちょっとセーフティーにアニメーターの人たちが頑張れる環境が僕はもっとあってもいいと思いますけどね。
古屋:
それはね。アニメーターに限らずに、正規と非正規雇用の格差って凄いんですよね。保険もない、保証もない。今それをピシッとイコールフィッティングさせていきましょうということで、取り組み始めていますよ。これは仕事の実態とかあって、必ずしもすべて我々の思うどおりには行かないところがあるけど、今そういう作業を始めています。
JAniCAが作った作業実態報告書。このデータ見ていたら、この仕事が楽しいからっていうのが圧倒的に多いんですよね。65.1%でしょ? だから、楽しい仕事をしてしまっているから、逆に言うとできればいいなという意識をもしかして持っちゃっているのかな? って、もし違っていたらごめんなさい、そうじゃなくてJAniCAにしてもそういう組織があるんだから、やっぱり働く環境の改善をしていく、これは当然厚生労働省がしっかり管轄していかなきゃいけない話なんで、そういう要望をしていくとかね。そういうのも真剣に取り組んでいく必要があるのかなと、私思いますね。そうしないと、日本のアニメーター、クリエイターのみなさんがね。好きなんだから安い給料で補償なしでやれっていうのは、今の時代では通用しないですよこれ。と、思う。どうだろう?
赤池:
先程言った税制の問題っていうのは、かなり大きな問題だと思っていますので、ある一定以上の報酬とか、環境とか、しっかり提供してくれるところには、国として減税する。租税特別措置するというのは、そうするといろいろな形で波及効果が、好循環で働くと思いますから、そのへんは経産省を経て文化庁ですかね。
今年はもう終わるんで、来年度に向けて議連でもしっかり取り組んで、各省庁を巻き込んで、税制ですから、国税だと財務省に対して要求を出していく。それは与党の一番の仕事だと思っていますので、しっかりと検討したいと思いますね。
吉田:
でも、こういう話が出たことが貴重で、おそらくアニメーターの人って自分の仕事が厚生労働省と繋がっているって思っている人絶対居ないと思うんですよ。
それが自分たちの労働環境のことを考えたら、宇野さんが言うように、確かに補助金じゃなくて、税制優遇や保険の方に行こうというのは、要は対処療法じゃなくて、体質改善に使おうって話じゃないですか? で、体質改善に使おうよって発想自体を現場の人はしてこなかった。
今日MANGA議連の方に来ていただいていますけど、そういう人たちとの間を繋ぐって作業が今まで全く行われていないので、そもそもやりましょうよって話、ちょっと考えただけでも今ぐらいのことは言えるわけですよね。
アニメファンも含めた関連団体を作って国会議員にロビー活動するべき
宇野:
僕らアニメファンが声を上げるべきだと思うの。やはり作り手の人たちは自分の作品に集中したいというのは当たり前のこと。できれば税金の話とか家計管理の話なんて、1秒も考えたくないって人がほとんどだと思う。それがクリエイターってもんだと思うの、だから僕らアニメオタクとか、アニメ周辺のメディアで飯を食っている人たちが、声を上げていくことでしか、俺は変わらないと思うんだよね。
吉田:
例えば野球ファンだとしたら、野球選手が野球やっているのに、ものすごい貧しい暮らしをしていたら、ちょっとなんとかしてあげようよって、少なくとも野球ファンとしては、思いますよね。
赤池:
ちょっと全くスポーツの話ですが、ゴルフ団体がゴルフ場利用税廃止したいっていうことで、17団体、ジャーナリストも含めて関連団体作って、我々に要望してきてるんで、是非この機会に関連団体、アニメファン全部入れてそういう関連団体をね、集合体作るのはいいなってちょっと聞いてて思ったんですけど。
宇野:
僕ねもっと日本人は国会議員にロビイングするべきだと思うんですよ。選挙とデモだけが政治参加だと日本人は思いすぎているんですよね。で、正規のルートを通ってアポを取れば会ってくれる国会議員も県議会議員も山のようにいるし、それで動いた議員立法とかもたくさんあるわけですよ。まずそういった実例を調べて自分たちに何ができるかを考えることが俺は大事だと思うんですよね。
吉田:
これロビイングって言った時に何となく難しそうとかもしくは暗躍みたいな気持ちになる人がいるかもしれませんけど、そうじゃなくて本当に責任者の人にちゃんと正しく情報を伝えようよって話ですよね。
赤池:
おっしゃる通りで、きちっと名前を名乗ってこういう主旨でこうしたいって言ったらきちっと我々対応しますんで。ところが本当に外でわーわー騒がれて、仕事の邪魔みたいな話ってのは多いんで、これはきちっと団体で言ったら結構我々はしっかりそれは受け止めて、こういう形で議連も作りますし、動くときは動くという。
宇野:
国会議員がせっかく超党派でこういった団体があるんだから、議員の人を目の前に言うのもあれだけど、いかにそれを僕らアニメファンが利用するか。
赤池:
その通り。
宇野:
極端なことを言うと、遺族会とか医師会とか農協みたいな感じでアニオタ団体とか作って、アニオタ会とか作って、もう圧力団体になればいいの。
吉田:
圧力団体って言うと気持ちが萎えちゃう人がいるかもしれないけど、単に自分たちの環境を良くする、もっと言うなら面白いアニメもっと見たいよっていう、この現状を続けていきたいんだったら、声をあげたほうがいいよってことですよね。
宇野:
だからTwitterにちまちま書くのもいいんだけど、俺はもっと具体的な行動に出たほうがいいと思うんだよね。
吉田:
とりあえず今、コメントで残してくれてたりとか、ここに興味を持ってくれてるだけでもまず一歩ではありますよね。
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