評論家が選ぶ秋のオススメのホラー映画 『IT』も良いけど『アナベル 死霊人形の誕生』もね!
10月29日に放送された『岡田斗司夫ゼミ』にて、「秋の映画特集」と題してこの秋に公開した様々な映画の紹介が行われました。
『アナベル 死霊人形の誕生』というホラー映画の紹介から、昨今アメリカでホラー映画が流行している理由を、アメリカ建国神話と結びつけて岡田斗司夫氏が解説しました。
本記事には『死霊館』『IT』『アナベル 死霊人形の誕生』のネタバレが一部含まれます。ご了承のうえで御覧ください。
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岡田斗司夫のオススメ映画『アナベル 死霊人形の誕生』
岡田:
この秋の映画で、意外にも面白かったのが、ホラー映画の『アナベル 死霊人形の誕生』っていう作品なんだよ。これは、5点満点中、3.9点というふうに僕はつけた。
僕のつける得点は4.3点以上だったら「間違いなく名作! 今すぐ見に行け!」だし、3.0点だったら「もう見に行かなくていいよ、こんなくだらない映画」なんだけども、この3.9点というのは「絶対見に行け!」というレベルには届かないんだけども、なかなか良い出来なんだよね。
岡田:
この『アナベル 死霊人形の誕生』は、2013年に公開された『死霊館』という映画のスピンオフ作品なんだけど、『死霊館』っていうのは実在するウォーレン夫妻という、アメリカですごい有名な心霊研究家をモチーフにした映画なんだ。
日本で言えばかつての宜保愛子みたいなもんだろうかね。テレビにもよく出ている人たちで、現在、旦那さんの方は死んじゃったんだけど、奥さんの方はまだ生きてる。
このウォーレン夫妻が自宅に作った“オカルト研究博物館”というのがあるんだけど、その中に保管されている最も恐ろしいアイテムというのが、このアナベル人形なんだよ。
公開している『アナベル 死霊人形の誕生』というのは、「なんでその人形が生まれたのか? 呪いの元はなんだったのか?」という映画なんだけどさ。これがけっこう面白かったんだよね。
『ブレードランナー 2049』を打ち負かしたのはまさかのホラー映画!
岡田:
大ヒットシリーズの続編として大いに期待されていた『ブレードランナー 2049』が興行成績のトップを取ったのは結局、初週の1週目だけだったんだよ。2週目で2位に落ちて、3週目で4位に落ちて。今では「おそらく興行収入は1億ドルに届かないだろう」というふうに言われてるんだ。
だから実のところ『ブレードランナー2049』はもうアメリカでは「惨敗、期待外れ!」という烙印を押されてる作品なんだけども、その分日本の映画宣伝会社というのは、アメリカでどうだったかは置いといて「すごい映画だ!」とか「すごい映像体験だ!」というふうに持ち上げようとしているんだ。それがこの映画に関して、現在の賛否両論な状況を更に加速させてるんだけども(笑)。
岡田:
『ブレードランナー 2049』を破ったのは、スティーブン・キングの『IT』というピエロが出てくるホラー映画なんだ。そしてこの『アナベル 死霊人形の誕生』も、アメリカでの公開時にはそれなりにヒットしている。
じゃあ、なんでブレードランナーは負けたのか。なんでアメリカではホラー映画がこんなにヒットしているのか。これについて僕はホラー映画というのは”アメリカの建国神話のひとつ”だからだと思ってるんだよね。
大衆文化に建国神話を求める国アメリカ
岡田:
建国神話というのは、それぞれの国が持っている「なんで我々の国は出来たのか?」という、言ってしまえばホラ話だよね。イギリスであれば、アーサー王伝説というのがあって魔法使いマーリンというヤツがいて、という建国神話があるし、日本であればイザナギ、イザナミから始まったという建国神話があるじゃん。
だいたいどこの国にも、うちの国はなにかしら特別で、こんなふうに神に選ばれたみたいな建国神話というのがあるんだ。
だけどアメリカ合衆国というのは、世界が文明化された後にむりやり作り上げた国だからそういった建国神話がないんだ。だからアメリカという国は、建国神話的なものを大衆芸能で作りたがるという特徴を持っていると僕は思ってるんだよね。
岡田:
アメリカ以外にも建国後にそういう話をでっち上げた国というのはあるんだよ。例えば、ナチスドイツが掲げたドイツ第3帝国なんてまさにそうだよね。ドイツなんていう国は元々なくて、各部族が別れて暮らしていただけなんだけど、そこにヒットラーが現れて「ゲルマン民族はこんなに優秀だ!」とか、「我々はローマ帝国の跡を継いでいるのだ!」みたいなことを言っていた。
でも、そのナチス・ドイツですら建国神話を大衆文化から持ってくることはしなかったんだよね。この大衆文化から持ってくるという部分がなぜなのかは、俺にもよくわからないんだけども。