「伝えたかったことはあの本に込めた」手術で歌えなくなった歌い手が、実体験をもとに執筆した小説『家庭教室』への思いを語る
昨年、自身のブログで「声帯結節」の療養の為、歌唱活動を休止を発表した伊東歌詞太郎さん。歌い手としての活動ができない期間に、執筆した小説『家庭教室』の発売を記念して、「第1回伊東歌詞太郎出版記念「家庭教室」朗読会&小説家WS」が放送されました。
タレントの百花繚乱さんの司会進行で、伊東さんと『BanG Dream! バンドリ』の執筆者である、小説家・中村航さんが、伊東さんのデビュー作となる『家庭教室』出版への経緯や、小説の題材選びなどについて語りました。
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小説の執筆。出版の経緯は「たまたま」
中村:
小説家や作家というのは、“最終職業”と言われていて。
百花繚乱:
最終職業?
中村:
要するに、例えばどこかに拘置されてても留置されていても書けるし。
百花繚乱:
極論ですね(笑)。
中村:
獄中作家っていらっしゃるんですよ。あと南極でも書けるし、月でも書けるかもしれない。中学生でも書けるし、大人でもおじいさんでも書けると。だからみんな声が出なくなったら、書いてみるといいんじゃないかな。
百花繚乱:
声が出なくなったら作品を書くっていう、当たり前の基準を歌詞太郎さんが作りましたけれど。いや普通じゃねえからな、これ(笑)!
中村:
本当、言葉だけでいいわけだから、何かできなくなったりとか、何かのきっかけがあったら、小説なら紙と鉛筆があれば書ける。
百花繚乱:
どんなタイミングでも書けると。その中でも自分の逆境をタイミングに活かして。
伊東:
活かしたと言うか、本当にこの時期に出版の仕事っていうのは、僕にとってありがたかったんですよね。
中村:
たまたまなんですか。
伊東:
たまたまなんですよ。
百花繚乱:
出版社の方は狙っていたんじゃないですか(笑)。なかなか不謹慎なタイミングですけれど(笑)。
伊東:
「なんでお葬式にピン札なんだ?」ってやつですね(笑)。ちょっとわからないんですけど、本当に不思議だなと思いましたね。
小説には自分の知りたいことを書く
百花繚乱:
そんな中でいろいろな作品を書けるチャンスだったわけじゃないですか。今回、なぜこのテーマになったのですか。
伊東:
僕自身、音楽だけで食えなかった時期に、家庭教師をやっていたんですね。家庭教師をやっていると、普通、他人の家庭を覗くことってできないじゃないですか。それが結構覗くことができて、やっぱり家庭には問題はあるなと。問題のない家庭なんて少ないんですよ。
僕も抱えてますし、他の子の家庭もこういう問題があるなとか、こういうふうに子供は思っているのに、両親はこう思ってるんだなっていうのを結構感じることができたんですよ。
それを解決できたら、なんか世の中のためになるんじゃないかなっていう思いで、僕は家庭教師というアルバイトに向き合ってたんですけど、それをまた本の中で解決できるぞっていうことを提示できたら、これこそまた世の中の役に立てるようになるんじゃないかな、というふうに思っていて。伝えたかったことっていうのは、あの本の中に込めたつもりではあります。
百花繚乱:
みなさんも思ったと思うんですけれど、どこまでが実話なんだろうって。このあたりは自身の経験もしっかり活きた内容になっているけれど、創作部分もあり、経験の部分もありということで。
伊東:
これ言っちゃうと恥ずかしいんで。
百花繚乱:
恥ずかしいことを書いたんですか(笑)。
伊東:
先生も自分の作品を恥ずかしいとかありますか。
中村:
僕はたまに恋愛小説を書くんですけれど、「中村さんは素敵な恋愛をされていますね」って言われても、それは違う。そのまま書いてるわけではないじゃないですか。
百花繚乱:
そうなんですか?
中村:
小説の中で主人公がいろいろ動いてるんだけども、それが実話なのかそうでないのかっていう話ですよね。実話だと困っちゃうような話なんですけれども(笑)。だからちょっと話を戻すと、自分の知りたいことを書くんですよ。
自分がもしこういうことが起こったら、どういう感情になるだろうとか、こういうことが起こったらこういう人はどういうことを思うだろうか、どう行動するだろうかって、そういう好奇心で書くんじゃないかなと思っています。
経験したことをそのまま書くっていうものではないですけれど、ただ読んでいて、これはどこまで本当の話なんだろうとかって読むのは、すごく楽しいですよね。
百花繚乱:
みなさんの手に届く前に、新しい楽しみ方をご提示していただいてありがとうございます。中村先生も執筆されている『BanG Dream! バンドリ』も、ご自身のバンド活動が活きているんですかね。
中村:
僕、昔女子高生だったんです(笑)。
伊東:
え!?
中村:
女子高生がバンドを組む話を書いたんですけれど。ところどころのエピソードで、最初主人公がギターに出会うのは質屋のディスプレイでギターと出会うんですけれど、それは高校生の時に僕のバンドをやっていたメンバーが、質屋でギターを買ったんです。 そういうところから、いろいろエピソードとかはそのまま書いていたりとか。でも決して女子高生じゃないからね。
百花繚乱:
どっちですか(笑)。